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  • 2017/09/04 掲載

女性を軽視するCMは「男性中心社会」へのノスタルジーだ

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トランプ大統領は、12日にシャーロッツビルでの白人至上主義者らと市民団体の間で起きた衝突に関し、マイノリティ差別に反対する発言を避けた。これが発端となり、メルク、アンダーアーマー、インテルなど有力なCEOが助言機関である製造業評議会から去り、戦略政策フォーラムとともに解散された。一方日本では、ムーニーや宮城県、牛乳石鹸など、企業CMにおける女性の描写をめぐり、議論が続いている。これらは2つの国のまったく別物のできごととも考えられているが、「企業や経営者がマイノリティに関して発するメッセージ」が持つリスクを考えるうえで非常に有用な示唆に富んでいる。
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企業はどのようにマイノリティに向き合えばよいのか、日米の事例から考える
(© auremar – Fotolia)


マイノリティとは誰か?

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 マイノリティとは、狭義には文字どおり「数が少ない、少数者」という意味だが、広義には「社会的に弱い立場に置かれており、アンフェア(不公正)な扱いを受けている人々」というで意味もあり、後者の意味で使われることも多い。

 日本では、ジェンダーギャップ指数が144ヶ国中111位という、先進国としてはとても低いランクづけをされている。そのため、いくら女性の人口が半数を上回っているといっても、「社会的に弱い立場に置かれており、アンフェア(不公正)な扱いを受けている人々」という意味で女性は「マイノリティ」だといえる。

 今日では、SNSでマイノリティ同士が簡単につながることができ、エンパワーされ、これまで埋もれていた声や意見を社会に届けやすくなった。 そのため、企業は顧客の多様性にもこれまで以上に目を向ける必要に迫られている。

マイノリティを無視してCEOたちに見放されたトランプ大統領

 こうした中、元祖「多様性の国」米国では今、マイノリティへの対応をめぐり、トランプ大統領が窮地に立たされている。

 米国では、8月12日、米国南部のバージニア州シャーロッツビルで、南北戦争時代に奴隷制度の存続を主張した南軍指導者の銅像撤去の動きがあった。これに対し、白人至上主義者やネオナチらが反対の集会を開催し、これに抗議する市民グループと衝突。市民グループに車が突っ込み、1人が死亡、30人余りの負傷者が出た。

 トランプ大統領は白人至上主義とその支持者をすぐ明確に非難しなかった。白人至上主義者とその反対者双方に責任があると発言し、お茶を濁したのだ。これをめぐって、企業も対応を迫られた。トランプ氏の助言機関である製造業評議会からは製薬大手メルク、スポーツウェア小売りのアンダーアーマー、インテルのCEOが脱退したのだ。

アンダーアーマーが製造業評議会から脱退した際のツイート。「私は我々の国と企業を愛している。私はスポーツの力を通してインスパイアし、結びつける活動にフォーカスするため、製造業評議会から降ります。-CEO ケビン・プランク」

 その結果、トランプ氏の「戦略政策フォーラム」と「製造業評議会」という2つの助言機関は解散に追い込まれた。

 これまでであれば、大企業は自社の事業領域に直接的には関係が薄い事項については、沈黙を守る態度の方が良かったのかもしれない。しかし、人種差別の問題をめぐり死者まで出した衝突事件とその対応を受けて、「トランプ大統領と近い立場に居続けること」は、企業にとっては「政治的中立を守ること」よりもリスクの方が大きくなり、見過ごせないレベルにまで達しているということがわかる。

 これは白人至上主義についてだけでなく、移民排斥やLGBTの権利後退など、トランプ大統領が就任してからの政権運営の中で、徐々に強まってきた流れだ。

 マイノリティの権利保護とダイバーシティ&インクルージョンは米国の大手企業ではすでにスタンダードになっている。平等な権利を侵す者は大統領であれ、大企業のCEOであれ、許されないのが今の米国なのだ。

 顧客の中にマイノリティがいること、また、マイノリティの権利を守ろうとする人がいることを考慮すれば、CEOたちは人種差別を象徴する南軍指導者の銅像や、白人至上主義者の暴力行為を「認めている」と見なされてしまうようなポジションに身を置いておくわけにはいかなかったのだ。

マイノリティ差別は世界で不買運動につながった

 人種差別へのアンテナが敏感な米国では、企業が多様な顧客にメッセージを届ける際に、差別表現がないか、マイノリティへの配慮が欠けていないか、という観点について、マイノリティ当事者やその周囲の支援者から、厳しい視線が向けられるようになった。

 現代の公民権運動ともいえるLGBTの社会課題への対応についても、近年、経営者による差別発言が不買運動やブランド離れを引き起こしている事例が後をたたない。

 キリスト教色が強い、米国のチキンサンドイッチ専門店チックフィレイ(Chick-fil-A)では、2012年に社長が同性婚に反対を表明したことから、ボイコット運動を展開する権利団体や当事者らと、店を支援する宗教保守派の間で対立が起こり、大きな騒動になった。

 2013年には、イタリアの大手パスタメーカー・バリラ(Barilla)の会長が、「伝統的な家族を好むわが社の広告に、同性愛者は出さない。ゲイがもし気に食わないら、他のブランドのパスタを食べればいい」という強気の発言をしたところ、Twitterではハッシュタグ「#BoicottaBarilla」(バリラをボイコットせよ)が拡散。会長は謝罪に追い込まれた。

 個人的にも悲しい経験がある。2015年に、ある日本のオンライン英会話サービス会社の会長が「LGBT差別を許容したい」というブログ記事を投稿したことがSNSで拡散されたことがあり、同性愛者である私は、記事を読んだ直後に利用していたその英会話サービスを解約した。おそらく二度とこのサービスは利用しないだろう。

【次ページ】「男性中心社会」への潜在的なノスタルジー

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