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  • 2019/09/12

従業員37名、小さな町工場の“工夫のすべて” 新規事業開発秘話も

今野製作所 今野社長インタビュー(後編)

高い技術力を用いて積極的に事業の多角化に挑む今野製作所。前編では同社が取り組む油圧機器事業(イーグル爪付ジャッキ)、板金加工事業、エンジニアリング&サービス事業の3つの事業について紹介しました。後編では、このようなものづくりの強みを生かした今野製作所の新たな挑戦だった福祉機器事業の開発秘話や、同社がものづくりの変革を実現できている理由を、今野 浩好社長にお聞きします。

東芝デジタルソリューションズ 福本 勲

東芝デジタルソリューションズ 福本 勲

東芝デジタルソリューションズ ICTソリューション事業部 担当部長
東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター 参事
中小企業診断士、PMP(Project Management Professional)
1990年3月 早稲田大学大学院修士課程(機械工学)修了。1990年に東芝に入社後、製造業向けSCM、ERP、CRMなどのソリューション事業立ち上げやマーケティングに携わり、現在はインダストリアルIoT、デジタル事業の企画・マーケティング・エバンジェリスト活動などを担うとともに、オウンドメディア「DiGiTAL CONVENTiON」の編集長をつとめる。2015年よりインダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)正会員となり、教育普及委員会副委員長、エバンジェリストなどをつとめる。その他、複数の団体で委員などをつとめている。主な著書に『デジタル・プラットフォーム解体新書』『デジタルファースト・ソサエティ』(いずれも共著)がある。その他Webコラムなどの執筆や講演など多数。

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今野製作所外観
(筆者撮影)

新規事業への挑戦、足が不自由でも車を運転可能に

連載一覧
 福祉機器事業はマスカスタマイゼーション(特注品の製造)のニーズが高くて事業の採算が取りづらく、大手メーカーがあまり参入していない分野です。顧客が望んでいる製品やサービスが、世の中に存在しないケースが多いと言われています。

 今野製作所が開発した、下肢障害者用手動運転補助装置「SWORD」もそうした製品の1つです。福祉機器にはまったく縁の無かった同社がSWORDを開発したのは、下肢に障害を持つ、あい・あーる・けあの社長である落合克良氏(故人)と出会ったことがきっかけです。2000年に中小企業向けの展示会で「福祉機器事業の開発を手伝ってほしい」との依頼を受けたことが、事業の始まりとなっています。

 着脱型の運転補助装置として開発されたSWORDは、車を改造することなく市販車に取り付けるだけで手動でのアクセル、ブレーキの操作を行うことができる製品です。

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福祉機器事業への取り組み
(今野製作所提供)
 従来、下半身が不自由な方が車を運転するには、専用車両を購入するか車両を改造する必要があり、自家用車や営業車として導入するには、追加の費用がかかっていました。

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SWORDの使い方
(今野製作所提供)
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SWORDの組み立て現場
(筆者撮影)
 SWORDの導入メリットとしては、車両の購入・改造費用がかからなくなる点が挙げられます。また、下半身が不自由な方が地方や海外に行った時でも、従来は利用できなかったレンタカーやカーシェアを利用できるようになります。さまざまな場面での車での移動の可能性を広げています。また、下半身が不自由な方が免許を取る際にも一般車で教習が受けられるようになります。

海外で先行評価され「SDGsビジネス支援事業」にも採択

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今野製作所 今野浩好社長
(筆者撮影)
 SWORD開発プロジェクトは2005年に開始され、製品化まで足かけ8年かかりました。ブレーキロック機構の実現など求める高機能とコストのバランス、軽量化と耐久性・信頼性の両立などさまざまな苦労もあったものの、外部企業や公的支援機関の協力なども仰ぎながら開発を進め完成にこぎ着けたと言います。

 SWORDは車のアクセルペダル、ブレーキペダルに取り付けますが、ペダルの形は車種によって形が異なります。同じ車種でも年式によって形が異なる場合もあり、1つひとつ確認しながら改善を続け、適応車種を増やしてきました。

 SWORDは先に海外で認められました。2014年にミャンマーの障害者自立支援NGO団体とつながり、障害者ビジネスの経験共有ワークショップに参加しました。そこで、NGOのリーダーに認められてメディアで紹介されます。そのNGOリーダーは、ミャンマーにおける下肢障害者ドライバー(免許取得)第1号となり、多くの反響がありました。

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SWORDのシミュレーション設備
(筆者撮影)
 その後、SWORDは、国際協力事業団(JICA)の政府開発援助(ODA)案件化調査事業に採択されました。2016年11月から2017年10月の1年間をかけたタイでの調査の成果は高く評価され、さらに2018年には「SDGsビジネス支援事業」に採択されています。2019年からの3カ年にわたり、その普及・実証事業が進められる予定です

 この実証事業では、タイ政府の関係機関とともに障害者が自動車を運転できるようになるまでのリハビリテーションプロセスを整備します。また、運転適性評価制度の策定や、シミュレーターを活用した自動車運転訓練前基礎トレーニングのプログラムづくりなどを実施。教習車を改良する必要がないSWORDの優位性を生かして、教習所に通うことを希望する下肢障害者の方々にSWORDを無償貸し出しする制度を導入する計画です。

【次ページ】事業の多角化を支える自社開発の生産管理システム

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