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- 2020/07/16 掲載
なぜ自治体で「テレワーク」は進まないのか、97%が未導入だった市区町村は今…
個人情報流出を警戒し、全庁への広がり見えず
「テレワークは新型コロナ対策で始めたが、個人情報を大量に取り扱うだけに、できる部署とできない部署がある。庁内全体に広げるのは難しい」。大阪府泉大津市政策推進課の担当者は渋い口調で振り返る。泉大津市は新型コロナの感染拡大を受け、三密解消の緊急対応としてテレワークを始めた。しかし、テレワークで仕事をしたのは、企画部門などの10人ほどで、資料作成など庁内データにアクセスする必要がない仕事に限られた。
徳島県鳴門市は4月にテレワークを全部局に拡大し、非正規や再任用職員を含めた全856人を対象に集中実施した。土木課では工事発注の準備やマニュアルの作成を進め、水道企画課と水道事業課は出勤者を半分に抑えるなどした。
現在は集中実施を終え、もとの態勢に戻ったが、庁内にワーキンググループを設置し、今後テレワークをどう進めるか検討している。鳴門市人事課は「新型コロナの状況は刻々と変化している。庁内で今後の方向をよく議論したい」と述べた。
東京都新宿区は部署ごとに一部の職員をテレワークに切り替えたが、個人情報の流出を防止するため、職員の業務用パソコンを持ち出しや自宅からの庁内ネットワークアクセスを認めていない。このため、企画立案など一部の業務しかテレワークで進められなかった。
区民へ外出自粛を要請していた時期は、図書館や保育所でそれなりの人数がテレワークをしていたが、今はコロナ前の状態に戻っている。新宿区人事課は「区役所でのテレワークには限界がある」と話した。
仙台市は時差出勤を始めているものの、緊急事態宣言中からテレワークを導入していない。市内は一時、感染が広がり、保健所を中心に業務が激増した。定額給付金の作業も大変で、こうした繁忙部署へ人員を優先して割いたことも影響している。
ただ、新型コロナの第2波、第3波感染が心配されているだけに、別庁舎にサテライトオフィスを置き、テレワークを実施することを検討している。仙台市人事課は「民間企業のようにテレワークを進めるのは難しいが、できることを考えてみたい」という。
3月時点の実施市区町村はわずか3%
総務省が3月26日時点のテレワーク導入状況を全自治体対象に調べたところ、47都道府県は93.6%に当たる42団体、20政令指定都市は70.0%の14団体が実施していたが、1721ある市区町村は3.0%の51団体にとどまった。2019年10月時点の調査に比べ、20団体増えたものの、大半の市区町村は手を着けていなかった。地方自治体のテレワーク導入状況(3月26日現在) | ||
導入 | 未導入 | |
都道府県 | 44(93.6%) | 3(6.4%) |
政令指定都市 | 14(70.0%) | 6(30.0%) |
市区町村 | 51(3.0%) | 1670(97.0%) |
(出典:総務省資料から筆者作成) |
その後、緊急事態宣言でいや応なくテレワークに踏み切る自治体が増えた。だが、庁舎内での感染を防ぐため、一時的に実施したところが多く、子育てや介護などを抱える職員の多様な働き方実現などテレワーク本来の目的を達成しようとする事例はごく少数にとどまった。緊急事態宣言の解除でテレワークを打ち切った自治体も少なくない。
【次ページ】テレワークを導入していない理由
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