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- 2021/07/06 掲載
フェイスブックは社員の約2割をVRやARに、「すでに起きている」仮想空間の覇権競争
全社員の17%、1万人がVR・ARビジネスに携わる
世界最多の利用者を有するSNS運営のフェイスブックはこのところ、VR・AR事業への投資を加速させている。2021年4月30日、人気のVR1人称ゲーム「Onward」の開発企業Downpour Interactiveを買収。Downpourの開発チームはOculus Studiosに加わることになる。
続く2021年6月11日には、米シアトルのVRゲーム開発企業BigBox VRの買収を発表。BigBox VRは、Oculus Quest 2のローンチ後にリリースされ、人気タイトルとなったVRゲーム「Population:One」の開発企業だ。
フェイスブックはこうしたVRゲーム開発企業の買収によって、VRコンテンツ制作のノウハウを蓄積するだけでなく、自社の人材リソースをVR事業に振り、VRビジネスの加速をもくろんでいる。
なお昨年までにも、2019年11月にはBeat Gemes、2020年2月にはSanzaruStudio、同じく2020年6月にはReady At Dawmを買収していた。
また、直近2021年6月23日には、AR分野への投資拡大も発表。Instagramのショップ上で、ユーザーに “試着体験” を可能にするAPIを試験的に導入し、すでにLancomeやArmaniなど330のビューティーブランドが、そのAR体験を提供しているという。
また、フェイスブックの広告プロダクトにおいても、近い将来、ARを統合し、広告主企業がAR商品カタログを表示できるようにすることも検討中。こちらもすでに、MaybellineやMAC Cosmeticsなどとテスト運用を行っており、年内のそのテスト対象を拡大する予定だ。
こうした取り組みを実現、加速させる動きは前から起きており、The Informationが2021年3月11日に報じたところでは、フェイスブック全体で現在約1万人もの人材がVR・AR部門に配属されているという。
Statistaのまとめによると、フェイスブックの2020年末時点の社員数は5万8604人。実に、全社の17%の人材がVR・ARに携わっていることになる。
すでに起きている仮想世界の覇権競争、2045年の世界も目前?
特にVRビジネスは前途多難だという指摘も少なくない中で、フェイスブックはなぜ、VR事業への投資をこれほど強気に加速させているのか。マーク・ザッカーバーグ氏の頭の中を覗くことは不可能だが、VRの周辺環境の変化・進化を鑑みれば、フェイスブックが目指しているであろう未来像を推測することは不可能ではない。
フェイスブックが狙うもの、それは「仮想空間の覇権」であろう。現在ゲームを中心に利用者が増えるVRだが、近い将来、ゲームだけでなく経済社会のさまざまな側面が仮想化する世界が登場することが見込まれる。
たとえば、スティーブン・スピルバーグ監督が2018年公開の映画『レディ・プレイヤー1』で描いた、ゴーグル一つで人びとの夢が実現する仮想世界「オアシス」のような空間。同作品はそのオアシスを舞台に、謎解きと莫大な財産をめぐる争奪戦を描いたサイエンス・フィクション映画だが、現在のVR関連のソフトウェアやハードウェアの進化を鑑みると、10年ほどのスパンでフィクションからリアリティになる可能性は十分にある。
そして、その未来像はフェイスブックだけでなく、ソニーなど他のテック企業も狙うものであると思われる。
以下ではさらにVR関連テクノロジーの現状に触れつつ、今なにが可能で、今後どのような発展が想定できるのか、その詳細を説明してみたい。
【次ページ】VRテクノロジーの進歩で仮想世界の「リアリティー」が飛躍的に向上文
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