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  • 2022/03/18

建設業は「残業」常態化から抜け出せるか? DX進む一方で顕在化する構造的問題

前編では、「2024年問題」を中心に建設現場が直面している課題に焦点を当てた。今も現場で起きている多くの問題を解決するヒントは、DX(デジタルトランスフォーメーション)による省人化にあるといわれている。そのため近年では、多様なデジタル技術が建設現場に導入され、iPadを持ちながら作業をする職人の姿をよく見かけるようになった。令和の建設現場は、働く人々が最適な働き方を模索する「場」でもあるのだ。今回は建設DXの現在地と、民間企業が直面している課題をレポートする。

執筆:タカミヤ 営業本部 技術部長/キャディアン 代表取締役社長 竹村 邦彦

執筆:タカミヤ 営業本部 技術部長/キャディアン 代表取締役社長 竹村 邦彦

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建設DXのリアルな現在地とこれからの課題とは
(Photo/Getty Images)


ロボット活用やVR研修、人手不足解決に期待

 現在、建設業界全体のテーマとなっているのが、デジタル技術の導入による建設DXの実現だ。中でもIT技術や自動化、ロボットを用いて労働力を補う省人化は、深刻な人手不足に悩む建設業者の新たな解決策として注目を集めている。たとえば、ルーティーンで行える作業や、力仕事などの単純作業を自動化できれば、現場の人手不足が解消される可能性が高い。

 また、人が働く場合は作業者の体調や、真夏や真冬などの気候が作業量に影響を及ぼすが、仕事の一部をロボットが担えば環境や人的要因に対する懸念がなくなるはずだ。そうすると、現場の職人たちは最終的な確認作業や、品質の向上など「人にしかできない作業」に専念できる。


 DX化は、建設業の2024年問題でクリアしなければならない労働時間の短縮にもつながる。現場監督や担当職員は、施工期間中になると点検やトラブル対応のために、建物と事務所を何度も往復しなければならない。現場の規模が大きくなると、現場内の移動は1回につき10~15分ほどの時間がかかるので、トータルで大きな時間ロスが生まれている。

 それならば、建物内に定点カメラを多数設置し、職人にウェアラブルカメラを装着してもらい、遠隔で状況を確認できれば時間のロスをカットできるだろう。今後、こうした技術を取り入れる現場が増えれば、労働環境の改善や省人化につながるはずだ。

 実際に、デジタル技術を導入して労働環境を改善した例もある。その1つが、ゲーム利用のイメージが強いバーチャルリアリティ(VR)を活用した人材育成だ。仮想現実の中に建設現場を再現し、社員の教育ツールなどに使っているという。VRの研修では、建設現場で起こりうる事故や災害、命に関わる危険な作業をアニメーションで職人に見学・体験してもらう。目で見て感じた情報は記憶に定着しやすいので、現場に慣れていない若手もリアルな現場で事故防止に努めることができるのだ。

国交省が本腰入れる「BIM/CIM」、改めて認識したいメリット

 建設DXによる課題解決に乗り出しているのは、民間企業だけではない。国土交通省は、ICTや自動化を活用して、2025年度までに建設現場の生産性を2割向上させることを目指す「i-Construction」というプロジェクトを進めている。

 中でも本腰を入れているのが、2次元の図面を「BIM」と「CIM」と呼ばれる3次元のデータに切り替える施策だ。まずはBIMとCIMについて説明しよう。

 BIM(Building Information Modeling)とは、ビルやマンションを設計する際に専用のソフトで作成した3次元モデルを指す。BIMには建物に使われる部材の数量やコスト、仕上げ、管理情報などのさまざまな“情報”が付加されているのが特徴だ。

 BIMモデルを使って建物を建設すると、意匠設計者や測量技術者、構造設計者などの設計関係者だけでなく、ゼネコンや施工業者、建物の所有者にも情報の共有が可能となる。また、関係事業者は1つのモデルに情報を随時追加・変更を加えていくため、データの一元管理が容易になるのもBIMの特徴だ。

 もう一方のCIM(Construction Information Modeling)は、橋梁やダムなどの土木分野の建造物を3次元化したモデルのことを指す。建物の施工・維持管理を中心に3次元モデルを据える「施工プロセスそのもの」をBIMやCIMと表現する場合も多い。国土交通省では、これらを総称して「BIM/CIM」と呼んでいる。

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BIMのイメージ図
(出典:タカミヤ)

 BIM/CIMを建築設計・建設現場に導入すると、多くのメリットが得られる。その1つが「フロントローディング」だ。BIM/CIMを介して設計者や施工者同士が、初期の工程から集中的に検討し、後に想定される仕様変更や手戻りを未然に防ぐ手法だ。まさに「段取り八分」の考え方で、初期の段階でさまざまなシミュレーションを行ってから施工に入るため、実際の工事は効率的に進められる。

 2つ目は「コンカレントエンジニアリング」。これは、BIM/CIMで情報を共有しながら、複数の工程を同時進行することで、開発期間を短縮する手法を指す。工期が短くなるので、トータルコストの削減が期待できる。そのほか、完成図を3次元モデルで作成すると関係者全員が完成形をイメージしやすく、合意形成がスムーズになるという利点もある。長年日本の現場で定着している2次元の図面は「熟練の職人でなければ解読できない」という課題があったが、BIM/CIMならば若手の職人も建造物の完成形を想像しやすくなるのだ。

 このように、BIM/CIMは建築・建設に関わる人々のコミュニケーションを円滑にするツールでもある。これらのメリットは建設業界全体の生産性向上につながるため、官民一体となってBIM/CIMの導入を進めているのが現状である。

【次ページ】2年前倒しの「BIM/CIM原則適用」、依然立ちはだかるコストの壁

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