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  • 2023/05/15 掲載

ピーター・ティールが「最強」になれたワケ、「ジョブズ超えの天才」の意外な成功哲学

連載:企業立志伝

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ビジネス界でその名を知らない者はいないピーター・ティール氏。電子決済サービス企業「ペイパル」の創業者であり、投資家として多くのスタートアップを支援してきた同氏は、対話型AI「ChatGPT」を開発した「OpenAI」の設立にも参画しています。なぜ、ペイパルはイーロン・マスク氏をはじめ、テスラやYouTubeなどの革命的企業の創業者を輩出することができたのか。なぜ、ティール氏はFacebookの可能性を誰よりも早く見抜くことができたのか。「最強の起業家」「天才投資家」「影の米大統領」──数々の異名を持ち、ジョブズを超えるとも言われるピーター・ティール氏の半生をたどると、同氏を成功に導いた哲学が見えてきました。

経済・経営ジャーナリスト 桑原 晃弥

経済・経営ジャーナリスト 桑原 晃弥

1956年広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者を経てフリージャーナリストとして独立。トヨタからアップル、グーグルまで、業界を問わず幅広い取材経験を持ち、企業風土や働き方、人材育成から投資まで、鋭い論旨を展開することで定評がある。主な著書に『世界最高峰CEO 43人の問題解決術』(KADOKAWA)『難局に打ち勝った100人に学ぶ 乗り越えた人の言葉』(KADOKAWA)『ウォーレン・バフェット 巨富を生み出す7つの法則』(朝日新聞出版)『「ものづくりの現場」の名語録』(PHP文庫)『大企業立志伝 トヨタ・キヤノン・日立などの創業者に学べ』(ビジネス+IT BOOKS)などがある。

大企業立志伝 トヨタ・キヤノン・日立などの創業者に学べ (ビジネス+IT BOOKS)
・著者:桑原 晃弥
・定価:800円 (税抜)
・出版社: SBクリエイティブ
・ASIN:B07F62BVH9
・発売日:2018年7月2日

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ピーター・ティール氏の知られざる半生
(写真:The New York Times/アフロ)

ピーター・ティールとは何者か?

 「ペイパル・マフィア」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。

 電子決済サービス大手のペイパルは、イーロン・マスク氏(テスラCEO、スペースX創業者)やリード・ホフマン氏(リンクトイン創業者)、チャド・ハリー氏、スティーブ・チェン氏、シャウェド・カリーム氏(いずれもYouTube創業者)、マックス・レプチン氏(スライド創業者)、デビッド・サックス氏(ヤマー創業者)、ジェレミー・ストップルマン氏(イェルプ創業者)、キーラ・ラボイス氏(コースラ・ベンチャーズ創業者)といった起業家たちを輩出しています。

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あの企業はなぜ成功したのか? GAFAMや世界中の大企業の創業秘話が詰まった本連載はこちらから
 お互いの企業に投資するなど堅い絆で結ばれている彼らは「ペイパル・マフィア」と呼ばれていますが、そんな多士済々のメンバーの中で「首領(ドン)」と呼ばれているのがピーター・ティール氏です。

 ペイパルを離れたあともデータ分析企業「パランティア」を起業して成功させたほか、Facebook(現メタ)の創業期を投資家として支え、現在話題の対話型AI「ChatGPT」の開発を手掛けているOpenAIの設立にも深く関わったティール氏とはどんな人物なのでしょうか。今回は、日本では意外と知られていない同氏の半生をたどっていきます。

「不健全だった」勝つことばかり考えていた子ども時代

 ピーター・ティール(ペーター・アンドレアス・ティール)氏は1967年、西ドイツのフランクフルトで生まれ、1歳の時に両親とともに米国に移住しますが、鉱山会社で化学エンジニアとして働く父親の仕事の関係で引っ越しも多く、アフリカでの生活なども経験しています。

 6歳になり、学校に通うようになったティール氏ですが、アフリカのスワコプムントの学校は規則でがんじがらめでした。単語のつづりを間違えるたびに教師から定規で手の甲を叩かれるような厳しい学校だったため、ティール氏は画一性や規制を毛嫌いするようになったと言われています。

 9歳で米国に戻ったティール氏は、1977年にスタンフォード大学の北にあるフォスターシティーで暮らすようになります。ちょうどその年にスティーブ・ジョブズ氏が創業したアップルが「Apple Ⅱ」を発表しています。

 ティール氏が通うことになった学校はアフリカとはまるで違う自由な雰囲気に包まれていましたが、アフリカ時代から成績の良かったティール氏にとって学校のテストは「死ぬか生きるか」の戦いでした。特に数学が得意で論理的思考に優れていたティール氏は、チェス選手としても秀でた才能を発揮、13歳未満の部門で全米7位に入るほどのめりこんでいます。当時をこう振り返っています。

「若い頃を振り返ると、僕は不健全なコースを歩んできて、競争に勝つことばかり考えていたのも不健全でした。そういう人間は、他の人と争う場面ではいい成績をあげますが、陰でたくさんの犠牲を払っているんです」(『ピーター・ティール』p19)

 当時、ティール氏がチェスと同じように夢中になったのがSF小説で、特に『指輪物語』は、10回は読み返すほどだったといいます。こうしたSF好きはイーロン・マスク氏と共通するところがあります。

スタンフォード大に進学、なぜか「哲学」を専攻

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ピーター・ティール氏の経歴をまとめた年表
(出典:各種資料から整理)
 サン・マテオ高校をオールAで卒業、出願したすべての大学から合格通知を得たティール氏の未来は「大金を稼ぐこともできるし、尊敬される仕事に就くこともできる」(『ピーター・ティール』p22)という、まさに前途洋々でしたが、「何らかの形で世界に影響を与える」ために自宅から通えるスタンフォード大学に進学します。

 ただし、選んだのは哲学でした。数学的才能に恵まれたティール氏であれば、数学や物理、コンピューターなども選択肢にあったはずですが、なぜか哲学を専攻。大学2年の頃には保守派の学生新聞『スタンフォード・レビュー』を創刊しています。

 当時、ティール氏はスタンフォード大学の学費が高いことを問題視し、「経済的支援について考える」といった論説を展開するとともに、リンクトインの創業者となるリード・ホフマン氏など、のちの起業を支える仲間とも出会っています。 【次ページ】「20代は誤った答えに執着しすぎた」人生初の挫折から得た「失敗論」

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