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  • 2023/10/19 掲載

伸びしろが凄い『クレヨンしんちゃん』、“ある国”で関連売上の爆増が期待できるワケ

連載:キャラクター経済圏~永続するコンテンツはどう誕生するのか(第16回)

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1990年、週刊誌『漫画アクション』(双葉社)より連載がスタートし、1992年からテレビ朝日でアニメ化された、大ヒットコンテンツ『クレヨンしんちゃん』。2023年に公開された映画『超能力大決戦 ~とべとべ手巻き寿司~』もシリーズ31作目にして過去最高の売上23億を7週目にして記録するなど、その人気ぶりは衰えを知らない。それどころか『クレヨンしんちゃん』は、今後、海外の“ある地域”でさらに売上を伸ばす可能性すらある。

執筆:エンタメ社会学者、Re entertainment代表取締役 中山淳雄

執筆:エンタメ社会学者、Re entertainment代表取締役 中山淳雄

東京大学大学院修了(社会学専攻)。カナダのMcGill大学MBA修了。リクルートスタッフィング、DeNA、デロイトトーマツコンサルティングを経て、バンダイナムコスタジオでカナダ、マレーシアにてゲーム開発会社・アート会社を新規設立。2016年からブシロードインターナショナル社長としてシンガポールに駐在し、日本コンテンツ(カードゲーム、アニメ、ゲーム、プロレス、音楽、イベント)の海外展開を担当する。早稲田大学ビジネススクール非常勤講師、シンガポール南洋工科大学非常勤講師も歴任。2021年7月にエンタメの経済圏創出と再現性を追求する株式会社Re entertainmentを設立し、大学での研究と経営コンサルティングを行っている。『推しエコノミー「仮想一等地」が変えるエンタメの未来』(日経BP)、『オタク経済圏創世記』(日経BP)、『ソーシャルゲームだけがなぜ儲かるのか』(PHPビジネス新書)など著書多数。

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『ドラえもん』や『名探偵コナン』に並ぶ国民的IP『クレヨンしんちゃん』は、まだまだ売上を伸ばす可能性がある。その理由とは?
(写真:アフロ)

双葉社『漫画アクション』が生んだ名作群

生成AIで1分にまとめた動画
 『クレヨンしんちゃん』(以下、クレしん)の作者である臼井儀人氏がデビューしたのは1987年、29歳のときだった。キャリアのスタートは、大型総合スーパーを舞台にしたギャグ4コマ『だらくやストア物語』という作品だ。

 臼井氏が双葉社に持ち込んだ『だらくやストア物語』は、広告業界を題材とした4コマ漫画『気まぐれコンセプト』(1981年)以来の“業界モノ”として、当時注目されていたテイストに近かったことから新人賞佳作に入選し、その後、週刊誌『漫画アクション』で連載をはじめることになる。

 クレしんが掲載されることになった漫画アクションは、1967年創刊とともに『ルパン三世』や『子連れ狼』をヒットさせてきた。休刊の噂が出るたびに『じゃりン子チヱ』(1978~1997)や『かりあげクン』(1980~2003)など“神風”が吹いて再興してきたが、『クレヨンしんちゃん』(1990~2010)が最後の神風となる。2003年には休刊、2004年以降は月2回の刊行となり、近年は10万部台と成人男性向け漫画誌としては5~10位くらいの位置付けにある(双葉社はこの命名にあやかり、2013年から「双葉社カミカゼ賞」を開始している)。

 今やドラえもんやコナンに次ぐ国民的キャラクターになったクレしんの主人公「野原しんのすけ」は、臼井氏の処女作『だらくやストア物語』に登場するキャラクター「二階堂信之介」のスピンアウトであった。

 本作の担当編集であった林克之氏がこのキャラをふくらませれば面白くなると直感し、単独作として独立させることを提案、1990年8月にクレしんがスタートした(田幸和歌子.『クレしん』30周年、担当編集が明かす「子どもに見せない」から「親子で楽しむ」の変化の過程.ORICON NEWS.2020年8月20日,https://www.oricon.co.jp/special/55030/,2023年10月10日)。

 編集長は当時否定的、「幼稚園児が青年誌に出てきておもしろいのか」という調子で、内容もかなり過激な内容で、あくまで「大人向け漫画誌に登場する子供」というキャラクター設定であった(中野 晴行.マンガ雑誌の黄金時代──1985~95年の編集部を語る 第10回 双葉社「漫画アクション」元編集長、現双葉社取締役編集局長・島野浩二. メディア芸術カレントコンテンツ.2020年4月7日, https://mediag.bunka.go.jp/article/article-16162/. 2023年10月11日)

『クレヨンしんちゃん』の爆発的ヒットのキッカケ

 手ごたえが徐々に出てくるのは1991年9月24日号で初めてメイン表紙を飾り、その12月に「クレヨンしんちゃん特集号」が出てきたあたりのころだ。その後、1992年1月には『ドラえもん』(1979~)や『おぼっちゃまくん』(1989)などを手掛けたアニメ制作会社のシンエイ動画により、1992年4月にテレビ朝日でアニメ放送が始まる。

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あの有名キャラたちは、なぜ成功できたのか?本連載でまとめて解説する
 ゴールデンタイムでの放送ということもあり、原作にある下ネタや過激なギャグは取り払い、しんのすけの子供らしい一面にフォーカスを当てたことが功を奏した。「ギャグアニメにしないで、平成の『サザエさん』にしよう」というこの1992年時点のアニメ製作方針が、その後のクレしんの成否を分けたと筆者は考えている。

 視聴率は第1回(4.0%)、第2回(6.4%)から第7回(10%)と最初こそ徐々にあがっていった程度だが、コミックス2巻(1992年6月)とあわせて100万部達成の報告がされた8月には『漫画アクション』でも毎週のように特集が組まれるようになる。9月には視聴率が15%を記録するようになり、3巻(1992年8月)とあわせて300万部を突破する(大山くまお(2020).『クレヨンしんちゃん大全 2020増補版』双葉社)。

 アニメ化を受け、視聴者層・コミックス購入者層は、それまでの2年間とは打って変わって「子供」に広がる。もともと大人の世界をかき回す存在としてのしんのすけは、そのまま子供たちのリアリティを表すアイドルのような存在となり、1992年末の視聴率は19.7%を記録、同時間帯の高視聴率番組となる(大山くまお(2020).『クレヨンしんちゃん大全 2020増補版』双葉社)。

 劇場映画が企画されたのが1993年、東宝・東映・松竹すべてからラブコールを受け、7月に劇場版第一作『アクション仮面VSハイグレ魔王』が興行収入約22億円を記録する。

 1993年7月には、ロッテから作中にしんのすけの好物として描かれるスナック「チョコビ」が販売され、20億円も売り上げ、チョコスナック市場シェア1位を獲得した。さらに、1993~1994年の2年間でゲームソフトは10本もリリースされたほか、1993年7月にアニメが最高視聴率28%を記録するころには、声優・矢島晶子氏が歌う主題歌『オラはにんきもの』がメガヒットとなり、12月には紅白歌合戦に登場する。

 1992~1993年はテレビアニメが火をつけたクレしん最初の大ブームであった。1993~1995年の3年間の劇場版は同時期に上映していた『ドラえもん』や『ドラゴンボール』よりも収益は上だった。

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『クレヨンしんちゃん』の売上がさらに伸びそうな国とは? 次のページで詳しく解説します

 そんなクレしんの売上をさらに伸ばすキッカケとなったのが海外展開だ。世界のあらゆる国に展開されているが、ある指標を見ると、中でも大きく売上に貢献するかもしれない国が浮かび上がる。その国とはどこか。 【次ページ】クレしん「売上爆増」が期待できる“ある国”とは

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