- 2025/08/05 掲載
現場が勝手に…ITツール「増やしまくり問題」、ガートナー流の“ド定番”の解決策(2/4)
カギとなる「分業モデル」とは
そして、コンポーザブル化の中核となるのが「分業モデル」である。従来は企業内で使用するITツールすべてをIT部門が選定・サポートし、費用も負担するのが一般的だった。一方、分業モデルでは「全社標準ツール」と「領域別ツール」はこれまで通りIT部門が担当するが、「活動特化ツール」については受益者負担の原則に基づき、ユーザー部門が費用とサポートを担う形に変更する。「活動特化ツールまでIT部門が抱えたままだとどうなるか。ある企業では多数のツールの申請がどっと押し寄せて、結果が出るまで数カ月かかる状況になりました。そして、それを待てずに現場が先に無断で使い始めてしまい、元の木阿弥になってしまいました」(林氏)
基本スイートにある機能を使わず、別のツールで代替することの是非は現場しかできない。現場に費用を負担させることで、「お金を払ってでもそのツールを使いたいか」という判断を促すことができると林氏は話す。
分業モデルで覚えておくべき「3つのステップ」
では、そんな分業モデルの実践には、具体的にどんなステップを踏めばよいのだろうか。林氏は、分業モデルの実践は、以下の3つのステップで行われると話す。
- 採用
- 利用中
- 棚卸
まず「1.採用」では、ユーザー部門がツールの情報を収集・申請し、IT部門が可否を評価する。新規採用と既存ツールの追加導入ではリスクの軽重に差があるため、申請パターンを分けるのがポイントだ。新規採用では十分な情報をそろえて提出してもらう必要があるが、社内の他部門ですでに使用されているツールであれば、それを採用した際に審査を受けているので、そこから機能が強化された部分だけをチェックすればよい。
また、ユーザー部門の責任者を明確に決めることも重要だ。この責任者は形式的なものではなく、実際にツールの活用とサポートの旗振り役となる人材を選定する必要がある。
そして「2.利用中」では、IT部門が、SSE(SWG/CASB)ツールのエクスペリエンス監視機能を使って、ユーザーのSaaS利用状況のモニタリングを行う。申請されていないツールの使用が発見された場合は申請を促し、現場が再三の求めに応じない場合はアクセス遮断もあり得ると林氏は話す。
「3.棚卸し」においては、定期的な棚卸しでユーザー数の増減を確認し、活用度の低いツールは削減・解約を検討する。逆に、アクティブユーザー数が全体の2~3割に達するツールは全社標準化の検討も行う。また、責任者の異動確認や、機能強化に伴うリスク再評価も重要だ。最近のコラボレーションツールでは、高いクラスのエンタープライズライセンスで“いつの間にか”生成AIが使えるようになっているケースも増えているため、定期的にリスク評価を行う。
「ユーザー部門とIT部門の役割を明確にし、3つのステップを回していくことで、むだなライセンスはなくなり、逆によく使われているものは全社標準に昇格していく形でデジタル・ワークスペースが進化していきます」(林氏) 【次ページ】まず着手するべき「あの分野」
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