- 2026/08/19 07:10 掲載
“包丁キャンセル”で市場3倍…「ワンプレート冷食」86%が未購入でも急増中のワケ
連載:ヒットの現在地
1981年生まれ。フリーランスライター・PRとして、「ビジネストレンド」「国内外のイノベーション」「海外文化」を追う。一般社団法人 日本デジタルライターズ協会会員。エンタメ業界で約10年の勤務後、自由なライフスタイルに憧れ、2016年にOLからフリーライターへ転身。その後、東南アジアへの短期移住や約2年間の北欧移住(デンマーク・フィンランド)を経験。現地でもイノベーション、文化、教育を取材・執筆する。2022年3月~は東京拠点。関連サイトはこちら。
数年は低空飛行だったが……風向きが変わったワケ
ニップンがワンプレート冷食市場に参入したのは、2015年のこと。当時、PB(プライベートブランド)から発売されている製品はあったが、NB(ナショナルブランド)からは発売されていなかったという。ニップンは、主食とおかずを組み合わせた従来の日本人の食事を冷凍食品で再現したいと考え、同市場に参入。同社の調査では、一部の冷凍パスタユーザーが、サラダやおかずを自身で用意し、冷凍パスタと一緒に食べていることも分かっていたという。
2015年にハンバーグとパスタのセット商品を発売すると、良い反響が得られたものの、急速に支持を獲得したわけではない。新商品を投入するも、2018年度までは“低空飛行”の状態が続いていた。そんな折、コロナ禍が転機となり、バランスの良いワンプレート冷食の支持が高まっていったという。
「コロナ禍の巣ごもり需要により自宅での食事が増え、ワンプレート冷食の認知が高まりました。さらに、多くのリピーターを獲得できたことが市場拡大につながったと思います。実は、当社製品のリピート率は、競合と比較しても高いというデータがあります」(ニップン 家庭用食品事業本部 冷凍食品統括部 営業統括チームマネージャー 須田岳彦氏)
同社では、2018年以降、和食系やボリューム重視の商品など続々とラインアップを拡大していった。
「近年は、外食のチェーン店をベンチマークとして、同店での人気メニューを積極的に取り込んでいます。2018年の登場からずっと一番人気の『鶏と野菜の黒酢あんと五目ご飯』のほか、『バジルチキン』や『おろし煮風チキンカツ』なども外食メニューを参考にしました」(須田氏)
同社によると、「食事としての完成度」と「おいしさ」が利用者に評価されているという。では、どのように顧客満足度を上げていったのか。多数のリピーターを呼び込んだ背景には、「おいしさへの追求」があった。
実は裏にスゴイ技術、最大の壁「温めムラ」をどう解決?
主食とおかずをセットにしたワンプレート冷食を開発するにあたり、最大の壁となったのは、「温めムラの解消」だ。食材やメニューによって「温まりやすさ」が異なる中、どうしたら異なるメニューを同時調理できるかと試行錯誤したという。そうして、温めムラを起こしづらい丸みのある専用容器を開発することに。10年ほど前に原材料をプラスチックから紙に切り替えたことで、環境負荷の軽減も実現した。また、温まりやすく乾燥しやすいご飯は、メニューごとに水分量を調整している。食材のサイズや配置にも気を配ることで、できたての味わいを追求した。
「容器は、電子レンジから出るマイクロ波がうまく食材に跳ね返るような独自デザインを採用しています。温めムラを解消したことでお客さまの満足度が上がり、リピートにつながったと考えています」(須田氏)
ニップンが8月4日に実施した「2026年秋冬冷凍ワンプレート 新ブランド発表会」では、温めた商品をサーモグラフィーで検証するデモンストレーションも行われた。映し出された画像では、全体がほぼムラなく温まっている様子が認識できた。一部、黄色になっている部分について、担当者は「黄色い部分は『ナス』です。ナスは熱々にならずともおいしく食べられます」と説明した。
このように、ニップンでは発売当初から“おいしさ”にこだわってきた。しかし、それでも一向にワンプレート冷食に関心を示さない消費者は少なくない。そこで、新たに見えてきた課題を解消するべく、ニップンはこの秋冬に新たな戦略を打ち立てた。 【次ページ】86%が未購入、立ちはだかる「本当においしい…?」の壁
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