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- 2011/03/10 掲載
サイバーフィジカルシステムとは何か:東京大学 教授 喜連川 優氏に聞く
センサーネットワークと超高速データベースが生みだす「知」の創造
センサーネットワーク+サイバー空間=サイバーフィジカルシステム
こうした動きは、2004年に我々が重要な研究課題として文部科学省のプロジェクトで取り上げた「情報爆発」という現象と密接に絡んでいます。米調査会社のIDCによれば、世界中に点在するデータは、この10年で6.2EB(エクサバイト:ペタバイトの1000倍)から988EBまでおよそ110倍に増えており、2020年までにはさらに35倍以上の35ZB(ゼッタバイト:EBの1000倍)にまで達するといわれています。
ただし、情報爆発とは、PCなどのIT機器からの情報量が増える現象のみを指す言葉ではありません。多様なデバイスや高度な組み込みシステム、制御システムが生みだすセンサーデータも含まれているのです。これらのデータは、従来、独立して存在し、他と連携したり保存されたりすることはあまりなかったデータです。近年、組み込み機器やセンサーのデータがネットワークを通じて集約されることで、結合の度合いが強まっています。これが爆発ともいうべき情報の増加を生んでいます。
検索エンジンで何でも情報が手に入ると思っているかもしれませんが、それだけでは検索の対象から外れた「Deep Web」や、さらにNon-Webの情報(サイバー空間に反映されていない実世界の情報)には到達できません。2008年に公表されたあるデータでは、Web上の検索対象の情報量が約0.3EBに対し、Deep Webの情報は15EBにのぼり、Non-Webの情報は485EBにも達します。つまりウェブ以外の情報が、人々がつぶやいたり、書き込んだりしている情報量を大きく上回っているのです。
情報から価値を創出する
あるいは、日本政府の情報大航海プロジェクト、Internet of Things、スマートグリットやスマートシティへの取り組み、IBMのSmarter Planetなども、視点やアプローチを変えたCPSの取り組みの一形態と捉えることができるでしょう。これらに共通する特徴は、従来はITに直接関係がないとされていた領域、たとえば都市開発や交通整備、医療福祉といった分野の情報をクラウドやネットワークでつなぎ、その膨大な情報から新しい価値やビジネスを生み出そうというものです。
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