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  • 2014/04/21

“鮮魚流通のアマゾン”を目指す八面六臂 レガシーな業界で見つけた勝ち筋とは?

日本人は魚に関して奥深い食文化を持ちながら、実は日常レベルではあまりおいしい魚を食べていない――。この問題点に着眼し、飲食店でおいしい魚を食べられる幸せを取り戻そうと立ち上がったのが、八面六臂株式会社だ。今回は代表取締役の松田 雅也氏にインタビューを実施。飲食店視点で“ハイブリッド流通”という新しい物流体制を確立するとともに、iPadを“置きカタログ”として飲食店に無償貸与する斬新なビジネスモデルで脚光を浴びている同社の事業戦略と、松田氏のベンチャースピリットに迫ってみたい。

フリーランスライター 吉田育代

フリーランスライター 吉田育代

企業情報システムや学生プログラミングコンテストなど、主にIT分野で活動を行っているライター。著書に「日本オラクル伝」(ソフトバンクパブリッシング)、「バックヤードの戦士たち―ソニーe調達プロジェクト激動の一一〇〇日 」(ソフトバンクパブリッシング)、「まるごと図解 最新ASPがわかる」(技術評論社)、「データベース 新たな選択肢―リレーショナルがすべてじゃない」(共著、英治出版)がある。全国高等専門学校プログラミングコンテスト審査員。趣味は語学。英語と韓国語に加えて、今はカンボジア語を学習中。

日本人は、本当に新鮮な魚を食べているのか

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八面六臂株式会社
代表取締役
松田 雅也氏
 2013年12月、和食がユネスコ無形文化遺産に登録された。自然を尊び、旬や風物詩に高いこだわりを見せる日本人、その気質に基づいた食の習わしが評価されたのだろう。

 しかし、ふだんの和食文化がそこまで豊かかというと、そうでもないような気がする。特に鮮魚に関しては、ほんとうに新鮮な魚料理をリーズナブルな価格で食べられる飲食店は限られるからだ。

 それはなぜか。たとえば、リーズナブルを謳うチェーン店は、センター集中で量を確保することを優先する傾向にある。そこでは冷凍ものや養殖ものでもヨシとする。

 一方の個人店では、おいしい魚を目利きできる料理人はいるが、数が限られている。そして、それを組織で形式知化できていないのだ。また、これまで鮮魚流通は何十年にもわたって供給者都合で構築されており、飲食店が欲しいものがあっても、思うように手に入らないなど、理由はさまざまだ。

“鮮魚流通のアマゾン”として脚光を浴びる

 「全面否定するわけではありませんが、回転率や利益率だけしか頭にない名ばかりの飲食店やチェーン店は“つぶれてしまえ”と思っています」

 少々過激な発言ではあるが、代表取締役の松田 雅也(まつだ まさなり)氏はそう言い放つ。こうした状況に疑問を感じ、松田氏が立ち上げた水産業ITベンチャーが八面六臂株式会社である。

 同社が標榜するのは“鮮魚流通のAmazon.com”だ。最新の鮮魚情報を満載し、ITに詳しくなくても、飲食店の注文担当者がパパっと操作して注文できるiPadアプリケーションを開発、これを搭載したiPadを“置きカタログ”として飲食店に無償貸与するのだ。

 各飲食店から送られてきた注文は、同社が取りまとめて中央市場や日本全国の産地から買い付けを行い、届いた魚を築地に持つ自社物流センターで分配、梱包して配達している。

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同社が提供しているのは、飲食店舗が鮮魚を受発注するプラットフォームだ

 また同社は、注文情報がデジタルデータであることを活用し、これを蓄積・分析して、供給者側と交渉する上での強みとするとともに、飲食店に対しても鮮魚の流行情報や利益の上がる料理情報や盛り付け情報などという形で提供する。

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 “ハイブリッド流通”というコンセプトも新鮮だ。これまで、中央市場での仕入れと産地直送での仕入れは対立した概念だった。いつのころからか飲食店や流通業の間で産地から仕入れる方が新鮮だというイメージが広がり、水産業の世界では中央市場離れが進んでいた。しかし、同社は、漁師、産地市場、中央市場のすべてを供給者としてとらえ、飲食店の要望に合わせて最適ルートを選択して届ける流通体制を確立したのである。

 具体的な仕組みはこんな感じだ。鮮魚情報は毎日16時に更新される。注文担当者が閉店後の深夜、iPad上の画面から発注すると、夜が明けた6時から13時の間にはもう当該の品が店舗に届く。

 八面六臂の登場によって、街場の飲食店が食材調達の利便性とスピードを上げ、鮮度の高い旬の魚や自分たちを他店と差別化できる魚を必要な量だけ仕入れられるようになった。当然、このビジネスモデルは“おいしさ”にこだわる飲食店に大歓迎され、同社は顧客数、業績を急激に伸ばしている。

【次ページ】楽天モデルではなくAmazonモデル

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