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- 2017/10/12 掲載
タオカフェ登場で加熱する「無人店舗」競争、中国勢がアマゾンを脅かす
財布を出さずに退店すると決済完了
タオカフェを運営するのは中国でECを中心に一大商圏を築いたアリババグループである。ECサービス「淘宝(タオバオ)」、電子マネー決済を行う「Alipay(アリペイ)」といったオンラインサービスを運営している。これらの仕組みを活用し、さらに、人工知能技術や生体認証技術を組み合わせて、タオカフェを実現した。
利用者がタオカフェの入店時にアプリ認証及び顔写真の撮影を行うのは、タオバオのアカウント情報と、入店した人の顔を紐づけるためだ。カフェスペースで注文を行った際には、顔写真を照合して、誰が何を注文したかを記録する。そして、商品が用意されれば、顔写真によって、誰の注文かを判別し、商品が渡される。
また、飲食スペース以外の商品を購入する場合は、商品を手にとって、出口から退出すれば購入は完了する。商品ごとにRFIDと呼ばれる電子タグがついているので、レジを通す必要がない。誰が何を持ち帰ったかを自動的に判別し、タオバオのアカウントから代金を徴収する。このタオバオのアカウントには、電子マネー決済を行うアリペイが紐づいているので、別途、決済手続きを行う必要がない。アリババグループの技術を結集して実現したビジネスモデルと言えよう。
最強の万引防止技術を備える中国の無人コンビニ
タオカフェのコンセプトに影響を及ぼしたと思われるのがAmazon Goだ。2016年の終わりに発表されたAmazonの無人コンビニは世界を驚かせた。RFIDタグを用いるタオカフェとは異なり、Amazon Goでは店内に設置された無数のカメラやセンサーによって、誰が何の商品をとったかを把握するのを目ざしている。試験的に展開され始めたタオカフェやAmazon Goに加え、中国では多くの無人店舗が開発されている。広東省を中心に10店もの無人コンビニを展開しているのは「BingoBox」だ。食料品やお菓子が並べられた、15平方メートルほどの小さな店舗では、アプリ認証を入口で行い、購入する商品をスキャンして退店する。支払いは、決済機能を持ったメッセンジャーアプリ「WeChat」(ウィーチャット)と連携して行う。
BingoBoxでは、お菓子や日用品は従来のコンビニに比べ5セントほど安く提供され、消費者にとっても利用する価値は大きい。また、従来のコンビニと比べて、4分の1程度のコストで設置可能で、運転資金は8分の1ほどに留まるという。コスト的に優位なビジネスモデルを生かして、1400万ドルの資金調達を行い、200店以上の出店を目ざすとBingoBoxのCEOは語っている。
BingoBoxのほかにも、F5 future、wheelys、Wahahaといった競合がおり、中国での無人店舗開発競争が激化している。シリコンバレーの投資家から資金調達を行い、いずれも急拡大を目ざしている。日本企業もこの流れに乗り、中国での無人店舗開設に乗り出してきた。たとえば、ローソンは上海に2店舗の無人コンビニを設置し、スキャンした商品をアリペイやWeChatで決済する仕組みを構築した。
無人の店舗と聞くと、万引きが増えるのではないかと不安に感じるだろう。アプリで認証しているといっても、他人のスマートフォンを使う成りすましの懸念もある。しかし、中国の例では、不正が驚くほど少ないとされる。
前述のBingoBoxの場合、決済を行うWeChatと連携し、不正を行った利用者は警察へ通報するなどの厳しい対応を取っている。電子マネー決済の割合が多い中国では信用情報を毀損するリスクは大きいため、万引きに対する抑止力が働いているのだ。また、無人店舗にはカメラが多数設置されているため、不審な行動を取ったり、他人のアプリで認証したりした場合は、すぐに検知される仕組みだ。セキュリティの仕組みが整っていない有人店舗より、遥かに強固な体制といえる。
【次ページ】コンビニ、自動販売機、ECを統合した購買体験を創出
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