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  • 2016/10/08 掲載

「お、ねだん以上。」は山手線沿線でも実現できるのか

ニトリが都心出店を加速

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家具中心の量販店「ニトリ」を展開するニトリホールディングスの3~8月期中間決算は、きわめて好調だった。そのニトリが2015年から、東京都心部の銀座、渋谷、上野、新宿、池袋などへ相次いで出店、「山手線大作戦」を積極的に進めている。その背景には、今や「郊外」よりも「都心」のほうが将来有望な、消費市場の実情がある。

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、経済・経営に関する執筆活動を続けている。

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郊外型で成長してきたニトリだが都心出店を加速している

ニトリの3~8月期の中間期決算は最終利益43%増で絶好調

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 9月27日、家具・ホームファッションの大型専門店「ニトリ」や、小型店舗「デコホーム」をチェーン展開するニトリホールディングスが、2016年3~8月期の中間期決算を発表した。

 売上高は前年同期比14.7%増の2547億円、営業利益は34.0%増の491億円、経常利益は32.0%増の498億円、四半期純利益は43.3%増の328億円で、2ケタ増収増益の絶好調。営業利益、四半期純利益は中間期で過去最高を更新し、それぞれ今年3月時点で発表された中間期見通しを24.4%、32.3%上回っている。

 通期の売上高は前期比9.1%増の5000億円、営業利益は8.2%増の790億円、純利益は9.4%増の514億円を見込んでいる。今期の各月の既存店売上高は、日本列島が台風に相次いで襲われた9月以外は前年同月比プラスで、30期連続の増収増益はよほどのことが起きない限り、ほぼ確実な情勢である。

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ニトリHDの通期業績の推移
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ニトリ 月次国内売上高前年比推移(既存店ベース 単位:%)

 業績好調の要因は、商品面では夏場に自社開発の冷感寝具「Nクール」「Nスリープ」の売れ行きが良かったこと。ホームファッションの重要商材のカーテンや、キッチン用品や食器など生活雑貨の販売も好調だったという。利益については商品の改廃、原材料の共通化などの取り組みが効果をあげ、売上高営業利益率は前年同期の16.5%から19.3%へ、2.8ポイントも改善している。

 だが、売上を伸ばした要因として見逃せないポイントに「客層の拡大」もあり、それに大きく貢献しているのが「東京都心部への積極出店」という新しい店舗戦略である。

山手線ターミナル駅近辺のデパートのテナントとして入る

 ニトリがもともとターゲットにしていたのは「郊外」だった。幹線道路のロードサイドに用地を確保し、駐車場つきの1~2階建ての低層の店舗を建設して単独で出店するという形で、家具を中心に品揃えして自動車で来店するファミリー客に対応するには、それが最も適していた。

 ところが、ニトリがいま、戦略的に進めているのは「東京都心部出店」。都心のターミナル駅近くのデパートなど既存の大型商業施設にテナントとして入る。昨年から池袋、銀座(有楽町)、渋谷、上野、新宿と、山手線のターミナル駅中心の出店を進めており、名付けるとしたら「山手線大作戦」だ。

ニトリの東京都心部への進出状況
時期場所
2015年2月池袋/サンシャインシティ
(小型店「デコホーム」)
2015年4月銀座/プランタン銀座
2016年9月渋谷/東急東横店
(小型店「デコホーム」)
2016年10月上野/上野マルイ
2016年12月新宿/タカシマヤタイムズスクエア
2017年3月銀座/プランタン銀座
(2フロアに増床予定)
2017年春池袋/東武百貨店池袋店
※他には2016年9月に山手線恵比寿駅から地下鉄で1駅、東急東横線との乗換駅の近くに「中目黒店」を開店させている。

 ではなぜ、ニトリは都心に積極出店しているのか? 似鳥昭雄会長は中間決算発表時の記者会見で、こう話している。

「初の都心出店のプランタン銀座では『売れなくてもいい』と売上や利益は考えなかった。都心部の20~30代の女性に『おしゃれな店』と感じてもらえればよかった。結果は想像以上で、男性客も増えた。その後、他のデパートから『ウチにも入りませんか』という話が出てきた。デパートに入れるようなおしゃれムードを実験しながら、進歩している」

 つまり、ニトリも銀座出店で新しいイメージが加わって「ユニクロ」や「無印良品」などと肩を並べるようなイメージが認知されており、都心のデパートのほうもニトリのような「稼げるテナント」を欲している。「あくまで郊外中心だが、都心部も空白地帯なので今後も取り込んでいきたい」と、似鳥会長は意欲的な姿勢をみせる。当初は「売れなくてもいい」と思っていたプランタン銀座店は来春、2フロアに増床する。

 もちろん、地価が非常に高いエリアなのでテナント料も張り、低価格帯を抑えて中価格帯中心とする品揃えで客単価のアップを図っても採算に乗せるのはなかなか大変だが、都心部出店はやり方次第で、今までとは異なる新しい客層を開拓できるのは確か。

 そのやり方とは具体的には新業態の展開で、「デコホーム」がそれにあたる。すでに池袋や吉祥寺などに出店しており、今年9月に渋谷の東急東横店に出店したのもこの小型業態である。

 郊外型の「ニトリ」の平均店舗面積は約5000平米あるが、「デコホーム」はその10分の1の500平米前後で、渋谷の東急東横店内の店は約430平米である。商品構成は「ファッション」「ペット用品」「トラベル用品」「ステーショナリー」「ヘルス&ビューティー」「キッチン雑貨」などに絞り込み、家具、ホームファッションの品揃え中心の郊外型「ニトリ」とは様子がかなり異なる。

 「ニトリ」も、都心のデパート内店舗では売場面積に制約があり、たとえば東武池袋は約3700平米の計画。バックヤードも郊外型のように思いのままには使えず、都心部の交通渋滞もネックになる。

 それでも、首都圏エリアの消費市場が変化している中、ニトリは都心出店に大きな可能性を見出し、それに期待している。

【次ページ】「東京23区」は小売業の有望エリア

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