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  • 2017/03/30 掲載

インテルVSエヌビディア、自動運転を取り巻く半導体メーカーのプラットフォーム競争

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自動運転開発に関するニュースが次々と報じられている。Intel(インテル)は153億ドルで自動運転ソフトウェアを開発するモービルアイを買収し、一方、NVIDIA(エヌビディア)は、独ボッシュとの提携を発表して自動車メーカーへの関係強化を目指す。半導体メーカーは、自動運転に欠かせない高機能で低電力な半導体の開発を行うとともに、基礎的なソフトウェアを「プラットフォーム」として提供するようになった。今後の大きな成長が見込める自動運転市場で生き残るため、企業間が複雑な提携関係を模索する様子は、さながら「インテル陣営」と「エヌビディア陣営」の戦争のようだ。

執筆:在スペイン コンサルタント 佐藤 隆之

執筆:在スペイン コンサルタント 佐藤 隆之

Mint Labs製品開発部長。1981年栃木県生まれ。2006年東京大学大学院工学系研究科修了。日本アイ・ビー・エムにてITコンサルタント及びソフトウェア開発者として勤務した後、ESADE Business SchoolにてMBA(経営学修士)を取得。現在は、スペイン・バルセロナにある医療系ベンチャー企業の経営管理・製品開発を行うとともに、IT・経営・社会貢献にまたがる課題に係るコンサルティング活動を実施。Twitterアカウントは@takayukisato624。ビジネスモデルや海外での働き方に関するブログ「CTO for good」を運営。

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自動運転開発は半導体メーカーを中心とした競争へ?
(© Arthur-Palmer – Fotolia)


業界最大手のインテルVS技術力に優れたエヌビディア

 半導体メーカーによる自動運転開発競争が激しさを増している。2017年3月、業界最大手のインテルは自動運転技術を開発するイスラエルのベンチャー企業Mobileye(モービルアイ)の買収に153億ドルという巨額を投じ、開発競争をけん引する立場へと一気に躍り出た。

 モービルアイは、大手自動車企業である日産、BMW、GM、現代(ヒュンダイ)などに自動運転ソフトウェアを供給している。インテルは自社の半導体とモービルアイの情報技術を組み合わせて、自動運転のプラットフォームを築こうとしているのだ。

 業界最大手の「インテル陣営」に勝負を挑むのが「エヌビディア陣営」だ。画像処理等に秀でた半導体を開発してきたエヌビディアも、自動運転に欠かせない半導体と基礎的なソフトウェアを開発し、ホンダ、アウディ、フォード、メルセデスベンツ、ボルボ、BMW、テスラといった自動車メーカーと提携を進めてきた。

 さらに、インテルがモービルアイを買収したのと同じ2017年3月、エヌビディアはドイツの大手企業ボッシュとの提携を発表した。自動車部品、電動工具、家電などを開発する世界的企業との提携は、半導体開発のニッチ分野に特化していたエヌビディアにとって、自動車業界への太いパイプを得たことを意味する。

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エヌビディアとボッシュは3月17日、自動運転車向けのAIコンピューターを発表
(出典:NVIDIAブログ)


自動運転開発の中心にいる半導体メーカー

 半導体メーカーが自動運転開発の中心的存在になっている理由とは何だろうか。自動運転を実現するには、膨大な情報をリアルタイムに処理する必要がある。

 具体的には、周囲の状況をカメラで撮影したものから自動車を操作する意思決定を行ったり、地図情報やGPS情報を組み合わせて進路を決定したりする処理が含まれる。

 このような処理を行うには、これまで通常のパソコンに使われていたような汎用的な半導体では十分ではなく、画像処理や並列計算に優れた半導体が必要になるのだ。

 また、自動運転に必要となる基礎的なソフトウェアは、どの自動車メーカーでも共通して利用できる。カメラや各種センサーから得られた情報を統合するコンピューター・ビジョンや、情報を処理した結果をアクセル・ハンドル・ブレーキといった操作へとつなげる機能などは、自動運転には欠かせない。

 モービルアイやエヌビディアは、この基礎的なソフトウェアを開発した上で、各自動車メーカーに必要な機能を追加できるようにする「プラットフォーム戦略」をとっているのだ。

 旧来の自動車メーカーにとっても、自動運転に必要な基礎的なソフトウェアがプラットフォームとして提供されるのはメリットが大きい。

 運転技術を自動車に「学習」させたり、センサー情報を集約・分析したりするのは、これまで自動車製造で手掛けてきた技術とは大きく異なるため、モービルアイやエヌビディアと提携を進めた方が自動運転の実現には早道だ。プラットフォームを利用して基礎的な機能を満たした上で、各自動車メーカー固有のサービスを実装し、差別化を図る。

 自動運転分野は、IT企業からの参入も相次いでいる。配車サービスのウーバーは、自動運転開発を行うオットーを買収し、自動運転タクシーという新たなサービスの実現を目指してきた。

 また、グーグルの自動運転プロジェクトWaymo、中国のWeb検索サービス百度(バイドゥ)なども自動運転開発を行ってきた。これらの企業にもエヌビディアは提携関係にあると言われ、自動運転サービスの進化に貢献している。

自動運転におけるプラットフォーム型ビジネスモデル

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 プラットフォーム型のビジネスモデルとして有名なのが「ウィンテル連合」だ。ウィンテル連合とはパソコン市場におけるマイクロソフトとインテルの協業を意味し、この2社が業界に長らく影響を及ぼしてきた。

 1980年代に始まった両者の提携関係は、インテルの半導体とWindowsのオペレーティングシステムが共に発展することでパソコンが大きく進化したと共に、両社は市場の独占的地位を確保した。

 自動運転における「インテル連合」と「エヌビディア連合」の競争は、このウィンテル連合が発生した状況に似ている。

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インテルとエヌビディアを取り巻くプレーヤー

 基礎となる半導体とソフトウェアを開発し、多くの自動車メーカーへ導入した企業は、今後、独占的な地位を築く可能性がある。自動運転車への期待が高まっていく現状を考えると、半導体メーカーにとって企業の存亡をかけた競争だと言っても過言ではない。

 半導体業界は今、大きな変化に直面している。IDCの調査では2016年にパソコンの出荷台数は前年比で7.2%減少し、今後も急激な成長は期待できない。さらに、市場をけん引してきたスマートフォンでさえ、2016年は全世界で3%成長に過ぎず、日本を含めた先進国では既に出荷台数が減少に転じた。

【次ページ】自動運転やIoT分野では負けられないインテル

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