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- 2017/06/29 掲載
プロジェクト譜で「勝利条件」を更新して「瀕死プロジェクト」を救う方法
プロジェクト工学勉強会レポート
WBSより「プロジェクト譜」
この手法は、ほとんどのプロジェクトマネージャーが必ず採用するといっても過言ではないものだが、使いづらいと感じたことがある人も多いのではないだろうか?
実はこれは、仕事のINPUTとOUTPUTがあらかじめ明確になってはじめて成立する管理方法である。
そもそもプロジェクトとは「次々と局面が変化してしまう」もの、「やってみなければわからない」ものだ。ゆえに、WBSはある程度実績があるプロジェクトには有効だが、新規性の高いプロジェクトには適用しづらい。事前にある程度精度の高い計画を立てられていない場合、現実とのズレが激しすぎて、あまり使い物にならないのだ。
そこで筆者らが提案するのが、「プロジェクト譜」によるプロジェクトマネジメントである。
プロジェクト譜とは
「プロジェクト譜」とは、時系列的な遷移も含めたプロジェクトの全体像を可視化するための記述方式である。前述したような、WBS的なプロジェクト管理方法における課題を乗り越えるために、筆者らが考案した。記述要素は、各局面における所与の条件、施策、中間目標、ゴールから成る。ポイントは、その時点で検討している施策に加えて、制約条件や狙っている目標、ゴールも含めて「1つの局面」としてとらえ、各局面をスナップショットとして記述し、局面同士の関係性をゲーム木の要領でつなぐことにある。
プロジェクトでは、ある時点で実施した施策が、狙い通りでない結果をもたらすことが頻繁にある。結果、当初考えていた目標やゴールの変更を迫られることも珍しくない。
「プロジェクト譜」はその各局面における変更履歴を可視化することで、プロジェクトメンバー間での現状認識をすりあわせることを主眼にしている。
未知の要素が大きなプロジェクトにおいて、「ゴール」と「所与の条件」は、施策を行った結果の当否によって時間とともに変化していく。これをとらえるために考案したのが、この記述方式なのである。
「瀕死プロジェクト」の当事者になってしまったら
6月、筆者らはNTTドコモ・ベンチャーズが運営するドコモ・イノベーションビレッジにて「プロジェクト工学勉強会 第2回 ~『計画通りにいかないプロジェクトに、いかに”勝利”をもたらすか?』」を開催した。これには出版、製薬、金融など、さまざまな業界のプロジェクトマネージャーたちが参加した。この勉強会では、架空のスタートアップ企業「X社」のプロジェクトを題材に、プロジェクト譜を使ったグループディスカッションが実施された。シナリオはこうだ。
X社では、家計簿アプリを制作、提供している。先行してマーケットに参入し、一定のブランドとシェアを確保している。こうした中、資金的余裕が出てきたので、より顧客満足度を高めるような、新たな機能を提供したいと考えている。そこで、若手社員のA子がプロジェクトを進めることになった。ゴールは「2017年末にユーザーを増加させること」。
自分が発注するものについて、特にその技術領域に関して、深い知識を持たないということは、そんなに珍しい話ではない。もちろん、専門知識を持たないがゆえに外部に発注するわけであり、間違ってもいない。しかし、知識がないよりは、あったほうが、プロジェクトがスムーズに進むのは当たり前の話だ。
世の企業社会においては、「いつも助けてくれるパートナー」というありがたい存在があることもあるが、もし人が「知識もなければパートナーもいない」という状況に陥ったら、それは非常にまずい話である。
【次ページ】プロジェクト譜を使って「勝利条件を更新」し、豊かな選択肢を持て
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