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  • 2017/08/22 掲載

小林製薬、ベンツ、CAのマーケが語る「デジタルメディアがテレビ広告を超える日」(2/2)

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ストーリーテリングにより“知られざるドア”を開く

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メルセデス・ベンツ日本法人でマーケティング・コミュニケーション部 メディアコミュニケーション課 マネージャーを務める津止 久雄氏

 一方、メルセデス・ベンツ日本法人の津止 久雄氏は、「高級車マーケットにおいても、ニーズの多様化を肌身で感じている」と語る。津止氏が入社した1997年当時、メルセデス・ベンツの車種は10程度だった。しかし、現在では30タイプ100モデルを超える。

 2017年4月にリニューアルしたオウンドメディア「Mercedes-Benz LIVE」では、高級車やメルセデス・ベンツブランドに普段接することのないエンドユーザーや周辺層に向け、車の楽しみ方やライフスタイルの発信を強化してきた。

「自動車という製品のヒストリー、安全性への取り組みなど、メルセデス・ベンツというブランドにまつわるTipsをさまざまな観点からコンテンツ化しています。主流のボディタイプも10年位前まではセダンだったのが、近年ではSUVモデルなどコンパクトカーが注目されるようになり、ブランドストーリーも多様化している。ブランドネームから検索するユーザーだけでなく、ユーススタイルからの逆引きで検索されることも増えています」(津止氏)

 たとえば、コンパクトモデル車種の新型「GLA」プロモーションでは、公式SNSに投稿されるヒントを基に、日本全国を巡るGLAをGoogleストリートビューで探すというデジタル体験動画コンテンツ「FIND GLA!」を展開した。目的地までのルートを地図で確認しながら、景色の中をドライブする楽しさを伝えるのが目的だ。

 また、東京大阪で展開するブランド発信拠点の「Mercedes-Benz Connection」では、カフェの設置や女性限定の安心教習、家電メーカーとのコラボベント開催など、タッチポイントをより広域にするための体験イベントも積極的に開催している。津止氏は「何かを手掛かりにメルセデスを知ってもらう、知られざる側面を開いていくということを大事にしている」と説明する。

 たとえばAmazonが初のポップアップストアを展開した際には、「メルセデスAMG E63」の横にメルセデス・ベンツのダッシュボタンを設置した。実際にダッシュボタンを押したからといって自宅にベンツが届くわけではないが、コンセプト展示としてはインパクトのあるものだ。“フューチャーメルセデス”をテーマに、実車を置かず、VRでの試乗体験なども行っている。

「このような新たな取り組みに対して、高級車オーナーである旧くからのロイヤルカスタマーからの反発はないのかというと、むしろ面白いことをやっている、新しいことに取り組むということをポジティブにとらえているオーナーが多いですね」(津止氏)

 メルセデス・ベンツは2017年6月、京都・岡崎に日本初のコンパクトカー専売店の「smart center 京都, the garden」をオープンした。ショールームは日本家屋と庭園を活かした伝統的な「和」を感じる仕様になっている。ARを用いた展示や、「スマートビジュアライザー」という内外装をカスタムオーダーできるシステムを用意するなど、伝統と革新の融合をテーマに最新テクノロジーとのコラボレーションを積極的に展開。多様化する顧客に対し、今後もさまざまな角度からアプローチを行う予定だという。

「デジタルシフト」のリアルな進捗具合は

 デジタルマーケティングが担う役割は、各企業の置かれている状況によりさまざまだ。新たな手法が次々に生まれ、淘汰もされていく。では、デジタルシフトは、本当に起きているのだろうか。

 小林製薬の福井氏は、「デジタルメディアに対して実験的に投資を増やすことはあるが、メインはテレビ。一商品あたりの投下予算はそれほど多くはありません」と説明する。

「わかりやすいネーミングや今までにない商品を作ろうとする会社なので、(視聴者が)見た瞬間に買いたいと思うかを大切にしています。認知と好感度を獲得することが大事。その出稿先がデジタルなのかは今後の議論になる。現在はデジタルメディアで先にコンテンツを見せた方が、全体の売り上げが上がるといったデータはありません。だから、うまくいくかどうか判断がしにくい」(福井氏)

 メルセデス・ベンツの津止氏は、「マーケティングという意味では、気になる情報を検索したときに受け皿となる媒体への投資は今後も続けていく」としたうえで、以下のように指摘する。

「Web広告に限定したキャンペーンでは、コンパクトカーに絞るなどの予算配分となります。また、ブランディングという観点では、従来のメルセデスをインパクトとして出していく。表現の自由度という点で、デジタルメディアは(マス広告と比較して)どこまでできるのか。この部分を注視しています」(津止氏)

 デジタルマーケティングとブランディングの融合を実践している企業は少数だ。少ない人員で複数のタスクを同時にこなさなくてはならない現場においては、十分な運用体制すら確立されていない。そのような状況では、データや顧客とのタッチポイントが増加しても「手が回らない」のが現実だろう。さらに、スキルセットとしてデジタルも理解している人材の掘り起こしも必要になってくる。

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情報やノウハウ共有の難しさ。デジタルマーケティングとブランディングを融合しようにも、規模が大きければ大きいほど組織の壁や専門領域の細分化、社内外でのサイロ化が課題になってくる

 「改善プロセスや学習することに工数を割くより、目の前の商品を売ることが大事なのだ」という現場の切なる想いが伝わったセッション。聴衆者も頷くポイントが多かったのではないだろうか。

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