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  • 2017/10/19

動物園も直面する「高齢化問題」、このままではゾウやゴリラが消えることに

全国の公立動物園でゾウやゴリラなど人気動物が高齢化している。ワシントン条約で取引規制が強化され、購入価格も高騰したため、地方自治体が人気動物を確保するのは極めて難しい状況。人気動物が死んだあと、代わりを調達できず、展示をあきらめる動物園も少なくない。岐阜大応用生物科学部の楠田哲士准教授(動物園動物繁殖学)は「もはやどこの動物園でもゾウやゴリラを展示できる時代ではない」という。公立動物園は地域の観光施設の役割も果たしているだけに、自治体の苦悩は深まるばかりだ。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。

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とくしま動物園が繁殖目的で借り受けたレッサーパンダの「ミンミン」。6頭の子どもを産んだ
(写真:筆者撮影)


ゾウ、トラ、コンドルなど人気動物が相次いで死亡

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 人気動物の展示継続を断念したのは、群馬県桐生市の桐生が岡動物園。飼育していたアジアゾウのメス「イズミ」が2017年4月、推定61歳の天寿を全うしたためだ。

 イズミは園で53年間飼育され、メスで日本一の長寿だった。看板動物だっただけに、新たなゾウの導入を希望する声もあった。しかし、アジアゾウは絶滅危惧種に指定され、新たに導入する場合、繁殖を前提にペアなど群れで飼育することが求められる。

 1頭当たり3,500万円ともいわれる調達費用に加え、複数飼育に備えたゾウ舎の改修に億単位の費用が必要になる。桐生が岡動物園の斎藤隆浩園長は「ゾウを新たに飼育するのはハードルが高すぎる」と苦しい胸の内を打ち明けた。

 人気動物が相次いで死んだ動物園もある。福岡市動物園では、2016年にミナミシロサイのオス「ロック」(推定45歳)、ニシゴリラのオス「ビンドン」(34歳)、2017年9月にアジアゾウの「はな子」(推定46歳)が死んだ。

 いずれも長寿といえる年齢で、これによりアジアゾウが園内から消えただけでなく、ゴリラが九州からいなくなった。

 徳島県徳島市のとくしま動物園もこの10年、人気動物の死亡ラッシュが続いた。園のシンボルだったアンデスコンドルの夫婦「ミスターチカラ」と「マユ」が推定62、63歳で2008、09年に死んだのを始まりに、2011年にレッサーパンダのメス「ラン」が19歳、12年にベンガルトラのメス「キャリー」が22歳で天寿を全うした。

 コンドルの夫婦とトラは日本一の長寿で、レッサーパンダは2番の高齢だった。ペアの相手や子どもたちを飼育しているため、展示を中止することはなかったが、とくしま動物園は「今後も動物の高齢化が進むだけに、将来のことを考えると頭が痛い」と不安を口にする。

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2017年に死んだ動物園の主な長寿動物
(出典:各動物園への聞き取り、ニュースリリースから筆者作成)


平均寿命を超す高齢動物が全国で増加中

 動物が高齢になれば、健康を維持するのに世話が大変になる。広島市の安佐動物公園は、長寿の世界記録を持つクロサイの「ハナ」を飼育している。メスで51歳。国内最多の10頭の子どもを産み、やしゃごまで含めると60頭を超す子孫を持つ。「クロサイ界のビッグママ」と呼ぶべき存在だ。

 来園したのは1971年。以来、園の人気者として来園者を喜ばせてきた。7月の誕生日イベントでは、大好物のリンゴをほおばり、元気な姿を見せた。

 ただ、年齢に配慮して公開は年数回だけ。クロサイは関節の軟骨が擦り減ると起き上がれなくなることがあるため、液体のサプリメントをパンに染み込ませて服用しているほか、低温による免疫力低下を防ぐため、室温を20度以上に保っている。

 安佐動物公園は「サイの年齢は人間と比較しにくいが、かなりの長寿であることは間違いない。できるだけ長生きできるよう気をつけたい」と語った。

 このほか、福岡県大牟田市動物園は飼育を始めて55年になるモモイロペリカンのオス「ペリー」を飼育している。長寿日本一の記録を更新中だ。神戸市王子動物園にいるオスのチンパンジー「ジョニー」は日本最長寿の67歳と推定されている。

 京都市動物園には23歳になるライオンのオス「ナイル」、福岡市動物園には29歳のマレーバクのオス「ジュリ」がいる。神戸市の須磨海浜水族園にいるオスのラッコ「ラッキー」は19歳。野生の平均寿命を超えた人気動物は多い。

【次ページ】調達価格の高騰で1頭当たり億単位の動物も

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