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  • 2017/11/16

震災後に乱立、石炭火力発電所が見直し迫られるワケ

2011年の東日本大震災後、原発停止の受け皿として建設が計画された石炭火力発電所が岐路に立たされている。国内の電力需要が低下しているうえ、地球温暖化防止パリ協定の発効で大量に二酸化炭素(CO2)を排出する石炭火力に厳しい目が注がれるようになったからだ。各地で新増設計画が相次いで中止になったほか、兵庫県では市民グループが公害調停の申し立てを計画、宮城県では市民が営業運転差し止めを求める訴えを仙台地裁に起こした。NPO法人・気候ネットワークの山本元研究員は「地球環境への影響だけでなく、大気汚染の不安もある。石炭火力の新増設はストップすべきだ」と訴えている。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。

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マンションや市営住宅が並ぶ住宅街から神戸製鋼所の神戸製鉄所を望む。高架道路を挟み、距離は400メートルほどしかない
(写真:筆者撮影)


神戸製鋼所が大型発電所を計画、場所は市営住宅の目の前

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 市営住宅やマンションが建ち並ぶ神戸市灘区の新在家南町。市営住宅の非常階段から南の海側を望むと、高架の港湾幹線道路越しに広大な敷地を持つ神戸製鋼所の神戸製鉄所が見える。その距離はわずか400メートルほどしかない。

 神戸製鉄所内には既に2基合わせて出力140万キロワットの石炭火力発電所が設置されているが、新たに2基で130万キロワットの増設が計画されている。近くに住む女性(65)は「電気は余っていると聞くのに、こんな住宅街のすぐ先でなぜ、発電所を建てるのだろう」と首をかしげた。

 増設計画は環境影響評価の審査手続きに入り、各地で公聴会などが開かれた。神戸市の環境影響評価審査会では、委員からCO2削減策が不十分として「容認できない」との声が出ている。神戸市が灘区で開いた公聴会では、喘息の子どもを育てる母親がと大気汚染の不安を訴えたほか、神戸大の研究者らも地球温暖化への懸念を表明した。

 審査手続きは神鋼の製品性能データの改ざん問題でストップしている。兵庫県と神戸市は神鋼がまとめた環境影響評価準備書の信頼性を精査するため、環境調査の基礎データ提出を要求した。しかし、精査終了までにどれだけの時間がかかるか不明で、兵庫県環境影響評価室は「審査再開の時期を見通せない」としている。

 これに対し、神鋼は「不適切行為が電力事業に与える影響はない」として予定通り計画を進める考えを崩していない。神鋼にとって発電はアルミなどと並ぶ事業の柱。2017年3月期で191億円の連結経常赤字に陥る中、電力事業が130億円の利益を上げているだけに、簡単に断念できないのが実情だ。

 反対住民らは「神戸の石炭火力発電を考える会」を組織し、兵庫県公害審査会に公害調停を申し立てる方針。同会は「地球環境、地域環境のどちらから考えても、石炭火力の増設は認められない」と反発している。

震災後40基以上の石炭火力建設計画が進むが、その必要性は?

 石炭火力発電は東日本大震災の福島第一原発事故のあと、次々に建設計画が浮上した。原発停止で電力が不足することを危惧し、新たな電源が必要と考えられたからだ。コストが安く、電力を安定して確保できることも、石炭火力建設の追い風になった。

 気候ネットワークによると、2012年以降に計画された石炭火力は49基。このうち、40基以上が進行中で、大型施設は千葉県袖ケ浦市の千葉袖ケ浦火力発電所(200万キロワット)、秋田県秋田市の秋田港火力発電所(130万キロワット)、千葉市の蘇我火力発電所(107万キロワット)など。首都圏の需要を見越し、東京湾岸や東北地方に多い。

石炭火力発電所の主な新増設計画
事業者場所出力(万キロワット)
千葉袖ケ浦エナジー千葉県袖ケ浦市200
関電エネルギーソリューション、丸紅秋田県秋田市130
神戸製鋼所神戸市130
JERA神奈川県横須賀市130
山口宇部パワー山口県宇部市120
中国電力、JFEスチール千葉県千葉市107
出典:経済産業省資料から筆者作成
 電気事業連合会のまとめでは、発電用エネルギーに石炭が占める割合は2015年度で32%。2010年度の25%から大幅に伸びている。このまま計画が進めば近い将来、石炭火力の稼働ラッシュとなり、さらに増えそうな状況だ。

 ところが、原発がすべて停止しても電力不足に陥らなかった。2010年度に総発電量の29%を占めていた原子力の減少分も、石炭、天然ガスや太陽光などの増加で補えている。

 企業や家庭で省エネが浸透したこともあり、総発電量自体も2010年度以降、減少した。国内の総発電量は2015年度で8,850億キロワット時。2010年度の1兆64億キロワット時に比べ、12.1%も減っている。

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国内発電実績量の推移
(出典:電気事業連合会ホームページ)


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