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  • 2018/06/13 掲載

ブロックチェーン活用の事例にみる「4つのインパクト」

ガートナー 鈴木雅喜氏が解説

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近年の仮想通貨ブームで耳にする機会が増えたブロックチェーン。同技術は実は仮想通貨以外にも幅広く応用が利く、既存のビジネスモデルを一気に陳腐化させる可能性も秘めた破壊的技術である。果たしてブロックチェーンはどこまで“使える”のか。ガートナー リサーチ部門のバイス プレジデントを務める鈴木雅喜氏が、今、そして未来を展望する。
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ブロックチェーンに過剰な期待が集まっている
(©ra2 studio - Fotolia)

ブロックチェーン登場のインパクト

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 インターネットの登場からわずか数十年。その間のIT技術の進化は“場所”や“時間”の障壁を取り払い、人、物、金、そして情報の流れをさま変わりさせることで経済/社会活動のあり方を劇的に変えた。

 ガートナー リサーチ部門のバイス プレジデントを務める鈴木雅喜氏は「IT技術は社会基盤上に新たな層を成し、そこに生まれた仕組みが新技術によって、別の仕組みを生むという連鎖が生じている。この状況は企業にとってリスクでもありチャンスでもあるが、とりわけ経営資源に乏しい中堅・中小企業にとっては、新たな成長の原動力を短期かつ従来よりも格安で手に入れられる点で後者のほうが勝るはず。そうした中にあって、ビッグデータやIoT、AIにならぶ次世代サービスの中核と目されている技術こそブロックチェーンにほかならない」と訴える。

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新しいテクノロジーの理解はすべてのITリーダーにとって必須事項だ
(出典:ガートナー)
 仮想通貨の文脈で語られることの多いブロックチェーン。だが、発想の技術的な原点はデータを集中管理する、従来からの中央集権型のデータベースとは対極にある不特定多数によるデータの分散管理にある。

 ブロックチェーンでは取引履歴データを主な管理対象とし、何らかの取引が生じた場合には、所有の移転情報を新たに生成。それを1単位のブロックとして、チェーンのようにつながる過去の取引履歴に追加して利用者全員で共有する。

 ブロック内には検証用データも併せて記録されており、取引発生時には利用者全員のブロックデータと照らし合わせ、多数決方式でデータの真正性を確保する。

普及までの道のりは険しいが「先行きは明るい」

 ブロックチェーンが注目される理由の1つが、こうした技術的な背景から「管理」を必要としないことである。「結果、従来では必須の管理者やサーバの配置が不要となり、従来のような膨大なシステム投資を伴うことなく、厳格な認証の仕組みを成立させることが可能となる。言い換えれば、ブロックチェーンは既存のデータ管理の在り方、ひいては既存のビジネスモデルを一気に陳腐化させる可能性を秘めた破壊的なテクノロジーと位置付けられるのだ」と鈴木氏は強調する。

 ブロックチェーンでは取引ルールをブロック内に埋め込むこともでき、物品や著作権といった多様な資産取引への応用を見込むことも見逃せない。

 これらの要因が相まって、“フィンテック”で知られる金融機関を皮切りに、今や業種・業態を問わず多様な企業がブロックチェーンの検討に着手。「多数のATMや巨大な勘定系システムを抱える銀行では、リスクとチャンスの双方でインパクトがとりわけ大きく、2~3年前から研究に本腰を入れ、独自仮想通貨のトライアルに乗り出すところもある」(鈴木氏)ほか、技術力のある小規模企業によるPoCも「恐ろしいほど」(鈴木氏)相次ぐ。海外はもちろん日本の政府や省庁もすでに対応に動き出している。

 ただし、ガートナーのハイプサイクルで見ると、ブロックチェーンの利用はいまだ緒に就いたばかりである。知名度が最も高い仮想通貨でも「幻滅期」に差し掛かった段階で、仮想通貨を管理する「ウォレット」や一定条件を基に取引を自働化する「スマートコントラクト」といった大多数は黎明期にとどまる。「だからこその期待値の高さと言えるが、普及までの道のりはまだまだ険しい」と鈴木氏は断言する。

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ほとんどの業界でブロックチェーンへの期待値が過剰に
(出典:ガートナー)
 もっとも、先行きは明るそうだ。ブロックチェーン技術は、取引履歴自体の機能や信頼性を高めるための「ブロックチェーン・プラットフォーム」と、その上で用途別に展開するための「アプリケーション」「開発」「セキュリティ」「管理」に大別される。

 鈴木氏によると、企業とベンダーはこれらの機能開発を戦略分野に位置付けており、機能向上とパッケージの充実が急速に進むことで、そう遠くない将来には手軽に使える技術になるとみる。

【次ページ】ブロックチェーンという破壊的技術が生む4つのインパクト

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