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  • 2018/06/19 掲載

マツキヨ過去最高益のワケ、大手ドラッグストアが「PB化粧品」で勝ちに来た

プライベートブランドがナショナルブランドを超えるか

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大手ドラッグストアの決算が好調だ。「インバウンド消費」の貢献が大きいが、化粧品分野の国内需要も寄与している。機能性のあるスキンケア商品が主体で、2015年を境に成長軌道に乗ったのだ。各社のPB(プライベートブランド)は大手化粧品メーカーのNB(ナショナルブランド)と陳列棚で激しい商戦を繰りひろげているが、その一方でドラッグストアでは新しい動きも始まっている。

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、経済・経営に関する執筆活動を続けている。

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マツキヨらドラッグストアの好調は、「インバウンド需要」だけでは説明しきれない。
カギは、PB(プライベート・ブランド)だ
(写真:都内にて撮影)



ドラッグストア大手5社、そろって過去最高益

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 ドラッグストア大手5社(ウエルシアHD、サンドラッグ、マツモトキヨシHD、スギHD、ココカラファイン)の2018年2月期・3月期の業績は、5社とも最終利益が過去最高益を更新し、非常に好調だった。今期も積極的に出店し、そろって増収増益の見通しである。

 前期の収益に貢献した主役は一般用医薬品や食品よりも粗利率が高い「化粧品」だった。

 化粧品は大きく分けると、“基礎化粧品”とも呼ばれる「スキンケア」、ファンデーションや口紅などの「メイクアップ」、髪の毛まわりの「ヘアケア」、香水などの「フレグランス」、「男性用化粧品」といったカテゴリーに分かれる。

 矢野経済研究所の調査では、2016年度の国内化粧品市場ではスキンケアが46.5%とほぼ半分を占め、前年度比で3.0%伸びている。メイクアップも健闘し4.4%成長したが、スキンケアはその2倍以上の市場規模がある。

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化粧品市場の2016年度製品カテゴリー別構成比

 ドラッグストアを中心にスキンケア、ヘアケア商品が販売されており、訪日外国人のインバウンド需要で人気がある高級基礎化粧品SK-Ⅱ(P&Gプレステージ)に代表される「酵母・発酵スキンケア」や、サンスクリーンなどの「UVケア」、働く女性に向けたオールインワン・ジェルなどの「時短ケア」、「自然派・オーガニック化粧品」といった商品群は、成長率が大きい。

 化粧品の売上比率が全体の約40%に達するマツモトキヨシHDは、50店舗を目標にビューティースペシャリストを配置した新型店舗「マツキヨラボ」の拡大を図っており、昨年6月には銀座に化粧品が9割を占める新業態店舗「ビューティーユー」を開店させている。

化粧品マーケット成長の年、“2015年”

 矢野経済研究所の調査によると、国内化粧品市場の2014年以前の伸び率は0~1%台と停滞していたが、2015年度以降は3%前後のやや高いレベルで推移している。この2015年度(決算期で言えば2016年2月期・3月期)が、大きな「分水嶺」だったのだ。

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化粧品の国内市場規模、伸び率の推移

 それはドラッグストア大手5社の業績とも符合している。

 マツモトキヨシHDもココカラファインも、2015年3月期(2014年度)の化粧品売上はそれぞれ-3.7%、-4.0%と前年度比マイナスに沈んだが、2016年3月期(2015年度)は+13.5%、+8.5%とV字回復を果たし、以後プラス成長を維持している。

 さらに2018年3月期(2017年度)の伸び率はマツモトキヨシHDは+9.2%、ココカラファインは+4.1%で化粧品売上は過去最高を更新し、年成長率は総売上高も、化粧品市場全体の2.79%を上回っている。

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マツモトキヨシHDの化粧品売上、伸び率の推移
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ココカラファインの化粧品売上、伸び率の推移
 イオン傘下の業界首位ウエルシアHDは大型合併を行ったので過去にさかのぼる業績の比較ができないが、2018年2月期の化粧品売上の伸び率は+8.1%だった。

 サンドラッグも決算発表で、化粧品は売り場面積を拡大して最終利益28期連続最高益更新の立役者だったと認めている。若い世代にはメイクアップ商品、中高年層にはアンチエイジングのスキンケア商品が売れたという。

 スギHDは化粧品売上比率が約3.5%で、約40%のマツモトキヨシHDや約27%のココカラファインよりもずっと小さいが、店舗でビューティーアドバイザーの育成に力を入れるなど、決して軽視しているわけではない。

 なぜ、市場全体もドラッグストアも、2015年を「分水嶺」に化粧品の販売が停滞から成長へ切り替わったのか。

 その理由としてよく挙げられるのが「訪日外国人のインバウンド消費」だ。都心店舗が多いマツモトキヨシHDは前期の免税売上高が670億円で三越伊勢丹HDの675億円に肉薄するなどインバウンドの恩恵が大きく、このインバウンド需要を狙った品ぞろえが当たり、売れ筋が高品質・高価格帯にシフトして業績に寄与している。

 だが、地方の店舗網が充実しているウエルシアHDの化粧品売上前年度比8.1%増は、インバウンド消費だけでは説明しきれないはず。2015年以降、インバウンドだけでなく国内の消費者の購買も着実に伸びなければ、化粧品全体で3%前後の成長率を維持することはできないだろう。

 それを解くカギは、ドラッグストア各社が強化してきたPB(プライベートブランド)の化粧品が業績の押し上げ効果を発揮しはじめたという点にありそうだ。PBで先行したのは、現状で全体のPB比率が10%を超えるマツモトキヨシHDだった。

【次ページ】共同開発や買収も?PBとNBのこれからの関係

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