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  • 2018/11/09 掲載

サバティカル休暇とは何か?日本での取り組みは?導入の注意点とは

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働き方改革が関心を集める中で、ひときわ注目を集めるキーワードの一つに「サバティカル休暇」がある。長期間勤務した従業員に対し長期間の休暇を付与する仕組みとしてヨーロッパを中心に普及しているが、国内企業でも導入する企業が出ており、今後ますます普及が進むものと見られる。そこで、サバティカル休暇が注目される背景やメリット、休暇制度が定着しているとは言い難い日本においてスムーズに導入し、定着させるために必要なポイントを、実際の導入事例などを交えて解説する。

執筆:田中 仁

執筆:田中 仁

大手総合商社にて10年間勤務し、新規事業開発を中心に資金調達、財務・会計等を担当。東京のほか、アメリカのベンチャーキャピタルやイギリスの金融機関等にて勤務経験もある。

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働き方改革を進める国内企業で長期休暇制度が定着するには何が必要か
(© M-SUR – Fotolia)


「サバティカル休暇」とは?起源は退職防止策

 「サバティカル休暇」とは、長期間勤務者に対して付与される、使途に制限のない長期休暇のことで、企業の「サバティカル休暇制度」とは、一定の条件で、少なくとも1カ月以上の長期休暇を取得できる制度のことを指す。

 この制度が生まれた背景には、1990年代のヨーロッパ企業において優秀な人材が次々と退職してしまっていたことがある。当時のヨーロッパでは、仕事だけでなく家族や自分自身の生活を重要視する「ワークライフバランス」の価値観が登場し、企業は人材の離反を防ぐための対策としてサバティカル休暇制度を導入しはじめたのである。

 例として、フランスではサバティカル休暇取得の条件を以下のように定めて運用している。

(1)そのとき勤務する企業における勤務期間が3年以上、かつ通算の勤務年数が6年以上
(2)そのとき勤務する企業で過去6年間に長期休暇を取得していないこと
(3)休暇の期間は6カ月から11カ月

 競業禁止義務はあるものの、休暇の使途は基本的に自由だ。旅行するもよし、勉強するもよしで、休暇取得後も取得前と同じもしくはそれに類する仕事に復帰でき、給与も取得前と同等もしくはそれ以上が支給される。休暇中は無給となるが、年間最大22日間の有給休暇を積み立て、サバティカル休暇時の給与補償に充てる制度もある。

 企業側は、同時期にサバティカル休暇取得者が一定水準を超えた場合、従業員の休暇取得を遅らせることができるし、その従業員がいなくなることで業務に大きな支障が出る場合は拒否権もある。国や企業によって細かい規定は異なるが、おおむねこのような条件でサバティカル休暇は運用されている。

サバティカル休暇が日本でも注目される理由

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 日本においても「働き方改革」の機運の高まりによってサバティカル休暇が注目されるようになった。長時間労働による過労死などの問題が大きく報じられ、過労を防ぎ労働者の健康を守るという観点からも、サバティカル休暇は重要な施策となりうる。

 また、少子高齢化やビジネス環境の変化に伴い、終身雇用制度への信頼が揺らいでいることも背景にはある。大手企業であってもリストラの可能性があり、転職は当たり前となって人材の流動化が進んでいる。さらに、副業を解禁する企業も出てきた。

 長期休暇を取得することによって、サイドビジネスの立ち上げやスキルアップのための勉強に時間を費やすことができるようになり、個人のキャリアアップにもつながることが期待されているのだ。

企業にとっての「サバティカル休暇」5つのメリット

 サバティカル休暇のメリットは多岐にわたり、従業員だけでなく企業にとっても有意義な点が多い。ここからは、企業にとっての具体的なメリットを5つ紹介していこう。

(1)長時間労働が是正できる
 会社に一定期間貢献した従業員に与えるサバティカル休暇は、ワークライフバランスを保つ上でも重要な役割を果たす。長年勤めてきた従業員は責任あるポジションについていることが多く、会社のために残業して長時間労働となっているケースも少なくない。残業代を適切に払っていたとしても、長時間労働が続けば疲れが溜まり、メンタルヘルスや過労死のリスクが高まってしまうものだ。サバティカル休暇の取得でこうしたリスクを軽減し、リフレッシュした状態で仕事に励むことが可能になる。

(2)従業員が新しい知見を得ることができる
 海外留学やボランティアなど、長期休暇でなければ経験できないことにチャレンジすることが可能になるため、従業員は新しい知見を会社にフィードバックさせられる。競業禁止とはいえ他業種で働くことはできるので、そこでの経験から新たな発想が生まれて企業にイノベーションをもたらす可能性もあるだろう。また、大学院や専門機関で専門知識を学ぶことでスキルアップにつながり、さらなる企業への貢献が期待できるのだ。

(3)介護・育児などによる離職を防げる
 少子高齢化が進む中、育児や介護の負担が重い従業員が増加している。しかし、日本の企業では依然として、育児や介護といったやむを得ない理由でも、休暇が取りづらい風潮がある。その結果、退職せざるを得ない従業員も出てきてしまうのだ。サバティカル休暇は、優秀な人材の離職を防ぐためにも有効である。

(4)業務効率が向上する
 身体を休めたり趣味に打ち込んだりするのはもちろんのこと、クリエイティブな感性を磨いたりグローバルな知識を身につけたりできるのも長期休暇ならではの特徴だ。復帰後は気分を一新して仕事に取り組める上に、長期休暇で得た経験を業務に反映できるようになるので、業務効率の向上が期待できるようになる。

(5)企業のイメージアップにつながる
 ヨーロッパでは普及しているサバティカル休暇であるが、日本ではまだまだ普及が進んでいない。サバティカル休暇を導入することで、従業員に対する福利厚生を充実させることができ、さらに、対外的にもイメージアップにつながり、優秀な人材を確保にもつながることが期待できる。

【次ページ】サバティカル制度導入3つの注意点、国内外の導入事例も

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