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  • 2019/03/20 掲載

RPAの事例とツールをガートナーが比較・分析、「導入と運用の勘所」とは

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現在多くの企業が導入に動き始めているRPA。しかしRPAに対する期待と、実際にできることには大きな隔たりがある。どうすればそのギャップを埋め、適切な導入目標の設定と効果の最大化を実現できるのか。ガートナーのシニア ディレクター/アナリストの阿部恵史氏が、効果的なRPA導入を実現するためにITリーダーが知っておくべきRPAの現実と、効果的に社内で展開するための戦略について解説した。
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どのようにすればRPAの導入は成功するのだろうか
(©wladimir1804 - Fotolia)

RPAとは何か?

 RPAとは何か。ガートナーはRPAを以下のように定義している。
●RPAとは
ユーザー・インタフェース(UI)上の操作を認識する技術とワークフローの実行を組み合わせることで、人間が各種アプリケーション上で実行する『手作業』を模倣し、各種アプリケーションを介して、システム間で構造化データを自動的に移動・入力するよう設計されたソフトウェアの総称

RPAを理解する3つのポイント

 阿部氏はポイントはRPAを理解するポイントが3つあると説明する。

 1つ目は、GUIを使う人の「手作業」を模倣するということ。人間の手足の代わりにはなるが、頭脳の代わりではないということだ。

 2つ目は、デスクトップOS上のアプリケーションを連携させて構造化データを扱うということ。

 3つ目は、「ロボット」と呼ばれてはいるが、自動化ソフトウェアの一種であるということだ。

 ガートナーのハイプサイクルでは、2018年に入りやや下がり始めたものの、まだ「過度な期待」のピーク期に近い位置にあるという。

 IT部門を中心に現実が見極められてきたため、幻滅期に向かう位置付けだが、非IT部門の期待値は依然高い状況のようだ。

 「ただ、このギャップは今後縮まる可能性が高い」と阿部氏は補足する。期待値が高すぎて幻滅する人がいる一方、AIと呼ばれる複合技術の構成要素のいくつかが成熟し、それらがRPAと連携することによってRPAの可能性も広がりそうだからだ。

「ギャップが縮まるのに5年、10年という期間はかからない。数年、早ければ2019年には幻滅期に入り、現実的な認識が一般的になるだろう」(阿部氏)

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2018年10月のガートナー ハイプ・サイクル。RPAは幻滅期に差し掛かっている
(出典:ガートナー 報道発表)

RPAツールの仕組みと3つの基本機能

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ガートナー シニア ディレクター/アナリスト 阿部恵史氏
 次に阿部氏は「RPAの基本機能」の観点で、現在できることと、将来できるようになることを整理した。

 RPAが「手作業」の部分的な自動化、あるいは完全自動化を実現する上で基礎となるのは、3つの機能だ。

 1つは「実行エージェント」。いわゆる「ロボット」が作業を行うソフトウェア実行部分である。

 2つ目は、ワークフローを解釈する「ワークフロー・エンジン」。

 3つ目は、そのワークフローを設計・定義する「レコーディング/デザイン・ツール」だ。

「ワークフローは、ベンダーによって呼び方が異なり、シナリオなどと呼ばれることもあります。ワークフロー設計・定義には、人間がやっている操作手順を記録してそれを実行することを主眼に置いたレコーディング・ツールと、イチからプログラミングのように操作手順を組み立てて行くアプローチのデザイン・ツールがありますが、いずれにしてもRPAツールは必ずこの3つの機能を備えています」(阿部氏)

 これら基本機能に加え、「監視・管理」機能、操作対象となる各種アプリケーションとの「コネクティビティ」によってRPAは構成されており、「この2つの部分で、各RPAツールのできること、できないことの細かい違いが出てくる」と阿部氏は説明する。

RPAの日本企業への導入状況

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 ガートナーが日本企業を対象とした調査によると、2017年5月時点でRPAを導入済みの企業は14.1%だったが、同年12月の調査では20.1%へと6ポイント増加した。阿部氏は、「この傾向は現在も続いており、導入企業が増える流れはしばらく続くだろう」と予測する。

 日本では2016年後半に、ガートナーの顧客から「RPAとは何か」という質問を受けることが多かったという。当時マーケティング・メッセージとしてよく語られていた「デジタルレイバー(仮想知的労働者)」というキーワードとも相まって、AI・機械学習との親和性が高い、あるいは“デジタル労働者”と捉えられたふしもある。

 しかしその後、2017~2018年にかけてRPAを導入する企業が徐々に増え、「質問の内容が多岐にわたるようになった」と阿部氏は話す。

 具体的には、「どのような用途に使えるのか」「本当に誰でも開発・運用できるのか、利用部門に任せても大丈夫か」「本当に安いのか、何をもって安いと言っているのか」といった質問だ。

 阿部氏はその頃を振り返り、「『RPAで今できること』と『将来できるようになること』や『他のテクノロジーと組み合わせればできること』が混同して語られていたため、混乱を招いた」と話す。

 今はさらに導入企業が増え、「本当に全社的に展開して大丈夫か」「RPAをどんどん適用して、本当に長期的に見て効果があるのか、デメリットはないのか」「利用部門の自由度とモチベーションを維持しながら、ガバナンスを利かせるにはどうすればいいのか」という質問が急増しているという。これが、直近の約2年の推移だ。

RPA導入に適した業務とは?

 続けて阿部氏は、RPAには何ができるのか、どのような業務に使えるのかを、「プロセス/タスクの特性」と「データの特性」の2軸で説明する。

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現時点のRPAをAIと混同・同一視してはいけない

 プロセス・タスクには、ルールやルーティンで定められている、予測可能なものと、判断が必要な予測不可能なものがある。RPAで完全自動化できるのは、この軸でいえばルールベースの予測可能なものだ。

 判断が必要なタスクになるほど、RPAが果たす役割は部分自動化による「人間のサポート」となる。

 また、扱うデータの特性という観点では、RPAが扱えるのは構造化データに限定される。センサーデータなど非構造化データを扱うには、いわゆるAIの助けを借りる必要があり、現状ではRPAではできない業務ということだ。

「従って、RPAの適用は業務の種類への依存性はなく、操作の特性・データの特性に依存することになります。RPA導入に当たっては、適用したいプロセス・タスクと扱うデータにマッチする機能があるかどうかでツールを選ばなくてはなりません」(阿部氏)

【次ページ】RPAにはリスクもある? 失敗に終わらせない3つの「運用アクション」

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