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- 2019/08/19 掲載
DeNA会長 南場智子氏が語る「クラウドへの全面移行」を決断させた“一言”とは
「DeNAは始まる前に終わるかも」と思った創業当初
DeNAの南場智子代表取締役会長は、米グーグル日本法人が先頃、都内ホテルで開いた年次イベント「Google Cloud Next '19 in Tokyo」においてゲストとしてスピーチした基調講演で自社のシステムについて変遷を語った。
インターネットサービスを主体に創業したDeNAが、当初はシステム開発を丸投げしていたとは驚きだ。システム開発を外注したことで、DeNAは衝撃の展開を迎えてしまう。開発の終了予定日になって、システムがほとんどできていないことが明らかになったのだ。この時、南場氏は「DeNAは始まる前に終わるかも」と思ったそうだ。
南場氏がエンジニア採用と内製化に注力した理由
そこから、DeNAはどうやって逆境を乗り越え、躍進を遂げてきたのか。まず、システム開発については丸投げを止め、基本的に自社で進めるために、エンジニアの採用に注力した。2000年代のことである。南場氏は当時について、経営者として次のように考えていたという。「システムの内製化を進めたところで、私自身のITリテラシーが急速に向上するわけではない。そこで、経営と技術の両方の言葉をしっかりと話せる人材を側に置いて、その人の判断を信頼して経営するしかなかった」
しかし、そうした不安は優秀な人材に恵まれたことで解消され、その後、同氏はむしろ、自社の技術力に自信を深めていく。それを象徴するエピソードについて、次のように語っている。
「1日のリクエスト数が50億件を超え、1秒に数十万件のリクエストが集中するような事態になっても、自社開発のシステムはまったく問題なく、安定して稼働し続けた。そのシステム規模も、数万台のサーバが必要と見られるところを実際は3000台でカバーした。そんなIT基盤を支えたエンジニアたちの技術力を、私は非常に誇りに思っている」(南場氏)
オンプレミス派とクラウド派が「宗教戦争」
そんなDeNAのIT基盤に変化が起こり始めたのは2015年。一部でクラウドを使い始めたのである。それをきっかけに社内のエンジニアの間でオンプレミス派とクラウド派が対立し始め、多くのサーバが更新時期を迎える2018年に向けて大論争が巻き起こった。南場氏はその時の経営者としての心境を次のように振り返った。「経営サイドから両派に対してさまざまな質問を投げかけたところ、答えが正反対だったりしたこともあった。そういうやりとりが続いたので、私は会議で『これは宗教戦争なのか』と問いただしたこともあった」(南場氏)
そこで、オンプレミスのままでいいのか、クラウドへ移行するほうがいいのか、「Q(Quality、品質)」「C(Cost、費用)」「D(Delivery、納期)」の3要素について比較検討することになった。すると、「Q」については現在オンプレミスで提供している品質をクラウドでも実現できそうなことが分かった。「D」についてはクラウドが有利だ。
【次ページ】「人材を生かす」ためにクラウドへ全面移行
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