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  • 2019/11/29

インホイールモーターとは? 100年眠っていた技術が「EV時代の寵児」となり得るワケ

エコカーに追い風が吹き、車輪に直結して駆動するタイプのインホイールモーターの世界市場は2019~2027年の8年間で10倍以上に拡大すると予測され、今後EV駆動方式のデファクト・スタンダードとなる可能性がある。その利点は弱点を補っても余りあるとも言われ、日産やトヨタはEV搭載車のプロトタイプを発表。インホイールモーターの開発競争にはベアリング、電子部品、タイヤ、重電といった異業種も続々と参入して、期待の次世代技術は熱気を帯びている。

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、経済・経営に関する執筆活動を続けている。

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トヨタが東京モーターショー2019で発表した「e-RACER」。インホイールモーターを搭載したEVコンセプトカーだ
(写真:つのだよしお/アフロ)

世界的に来ている「エコカー」の波

 2015年12月に「パリ協定」が採択された後、2017年にイギリス、フランスは2040年をめどにガソリン車、ディーゼル車(内燃機関を動力とする自動車)の販売を禁止する方針を決めた。

 今、二酸化炭素(CO2)の排出量が小さく環境にやさしいエコカーには追い風が吹いている。

 中国は「2025年までにエコカー比率を20%に引き上げる」目標を打ち出し、日本の経済産業省は「2050年までに世界で供給する日本車について世界最高水準の環境性能を実現する」という長期ゴールを定め、同年のエコカー比率100%達成を想定している。

 そんな流れを受けてHV(ハイブリッド車)、PHV(プラグインハイブリッド車)、EV(電気自動車)の世界市場は21世紀前半、大きく伸びるのはまず確実だ。

 富士経済が2019年8月に発表した「2019年版HEV、EV関連市場徹底分析調査」の予測によると、2018年から2035年の間に乗用車の新車販売台数は、HVは3.4倍、PHVは17.8倍、EVは16.9倍に拡大する。3種類合計では2018年、前年比31.2%の成長をみせていたが、それが2035年までに9.6倍になる。

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HV、PHV、EVの世界市場の現状と予測
(出典:富士経済「2019年版HEV、EV関連市場徹底分析調査」(2019年8月))

 国別では日本はHVの成長率が1.48倍と大きいが、中国はPHVが15.6倍、EVが13.7倍。今やエコカーの開発、市場投入の主戦場は中国と言って良い。


成長期待大の「駆動用主機モーター」と「インホイールモーター」とは?

 HVやPHV、EV、水素と酸素の化学反応で電気を起こす水素自動車(FCV)、太陽光で電気を起こすソーラーカーには、電気エネルギーで車輪を駆動させるモーターが搭載されている。

 それは内燃機関のエンジンにあたり、ワイパーやパワーウインドなどを動かす車載モーターと区別して「駆動用主機モーター」と呼ばれている。

 その世界市場は2016年から2020年にかけて2.3倍になり、さらに2020年から2025年にかけて4.9倍になると予測されている。

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自動車の駆動用主機モーターの世界市場の現状と予測
(出典:矢野経済研究所「車載モータ市場の最新動向と将来展望2018」2018年5月)

 内燃機関の乗用車ではガソリンエンジンやディーゼルエンジンは1台に1個だけ搭載され、ドライブシャフトで動力を2つの車輪(FF車、FR車、RR車)または4つの車輪(4WD車)に伝達する構造になっている。エンジンを複数搭載するのは戦車のような特殊な車両に限られる。

 ところが、HVやPHVと違って内燃機関と決別するEVでは、「使用される駆動用主機モーターは従来のエンジンを置き換えて1台に1個だけ」とは限らない。

 1個のモーターからドライブシャフトで動力を伝達して車輪を駆動させるタイプ(日産「リーフ」など)とは別に、それぞれの車輪の車軸に直結した「インホイールモーター」で駆動させるタイプのEVもある。それにはモーターと車輪を直結するダイレクトドライブ方式と、間で減速ギアを介するギアリダクション方式がある。

 インホイールモーターを複数搭載するタイプは将来、EVの駆動方式で主流の座を占める可能性があり、それを裏付ける将来予測がアメリカで発表されている。

 MarketsandMarketsが2019年に発表した「In-Wheel Motor Market」によると、インホイールモーターの世界市場は、2018年は3.23億米ドルだったが、2019年は27.2%増加して4.11億米ドルになり、8年後の2027年には11.8倍の48.66億米ドルになる。CAGR(年間総合成長率)は36.2%もある。

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インホイールモーターの世界市場の現状と予測
(出典:MarketsandMarkets「In-Wheel Motor Market」(2019年))

 EV1台に2個、4個と使われるので数が出るとしても、2020年代後半に駆動用主機モーターの主力を占める可能性は大きい。

 その理由は、インホイールモーターは数々の優れた特徴を持っているからである。

インホイールモーターの何がスゴイのか?

 インホイールモーターは、EVの各車輪のホイールの内部に小型・軽量の駆動用モーターが組み込まれる。それは燃料パイプ、ポンプ、冷却水などが必要な内燃機関エンジンではまず不可能。エネルギー源のリチウムイオンバッテリーとの間は電線でつながる。

 EVがスムーズに走行できるよう、独立した各車輪の回転数、トルク(駆動力)は電子制御される。動力をドライブシャフトとギアで各車輪に伝える機械的な制御が、車輪を直接駆動するモーターにケーブル経由でデジタル信号が伝わり駆動を制御する「フライ・バイ・ワイヤー(FBW)」に置き換わる。

 インホイールモーターの利点は、主として次のような点が挙げられている。
  1. 電費の節約
    車重が軽くなり、長いドライブシャフトを介さないのでエネルギー損失が小さい。1回の充電での航続距離が伸びる。

  2. 車輪の回転角が大きい
    四輪駆動なら車輪を90度真横に平行移動させれば車庫入れが容易になる。EVをその場で一回転させることも技術的に可能。

  3. 安全性の向上
    制御システムで雪道などでの車輪の横滑りを防止しやすくなる。

  4. 操縦安定性、乗り心地の向上
    重量の分散でサスペンションのバランスが良くなる。

  5. 車体レイアウト設計の自由度が増す
    モーターが車輪のそばに移動するため、広い居住空間、独創的なデザインが実現可能。

  6. 事故時のダメージが小さくなる
    事故で1個の車輪とモーターが大きく損傷しても、残りの3輪で修理場所まで自走できる可能性が高くなる。

 自動車評論家が好きな「乗り味」の点で言えば、EV特有のアクセル反応の良さに加え、各車輪が独立して制御されるのでハンドル操作の反応が良くなる。加速でもコーナリングでもドライバーの意志がレスポンス良く挙動に反映するようなドライビングが実現する。

【次ページ】インホイールモーターの弱点とは? 自動車メーカー各社の開発状況、意外な企業も参戦

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