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  • 2020/04/10 掲載

コロナ禍の選挙で痛感「新たな仕組みを」、課題乗り越え投票率アップできるか

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新型コロナウイルスの感染拡大で政府が緊急事態宣言を出す中、各地の地方選挙で投票率が大幅に低下している。立候補した陣営が派手な出陣式や個人演説会、有権者との握手などを自粛しているためで、選挙戦は盛り上がりに欠け、選挙中であることに気づかない有権者も。選挙の延期を求める声に対し、安倍晋三首相は参議院議院運営委員会で「地方選挙は不要不急の外出に当たらない」として否定的な見解を示したが、このままでは有権者の選挙離れに拍車がかかりそうな状況だ。熊本大法学部の伊藤洋典教授(政治学)は「感染症が流行した場合の選挙の仕組みを社会全体で検討すべきでないか」と指摘する。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。

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徳島県徳島市の中心部かちどき橋で市長選挙最終日に最後のお願いをする内藤佐和子陣営の支持者ら
(写真:筆者撮影)

保守分裂の「令和の阿波戦争」、それでも有権者動かず

 徳島県徳島市中心部の新町川に架かるかちどき橋。徳島市長選挙の運動最終日となった4日夕、両側にある歩道上に「みんなでいっしょに前へ」と書かれたピンクののぼりを手にした約50人が並ぶ。全国最年少の女性市長を目指す無所属新人の内藤佐和子氏(36)への投票を訴える最後のお願いだ。

 これまでの選挙なら選挙運動最終日にJR徳島駅前や新町地区の中心商店街に候補者が出て有権者と握手を交わして最後のお願いをするのが恒例だったが、この日は内藤氏の選挙カーが駅前周辺を軽く流しただけ。新型コロナ感染拡大を受け、異様に静かな最終日となった。

 徳島市長選は再選を目指す無所属で元アナウンサーの遠藤彰良氏(64)に街づくり団体代表の内藤氏が挑んだ。徳島市と徳島県の対立で建設のめどが立たない音楽芸術ホール、遠藤市長と踊り子団体の対立が混乱を招いた阿波踊りの運営などが争点に浮上していた。

 地元選出の自民党国会議員は、後藤田正純衆議院議員が遠藤陣営、福山守衆議院議員が内藤陣営につき、2016年の前回徳島市長選、2019年の徳島県知事選に続く保守分裂選挙となった。後藤田、福山の両衆議院議員はともに党内で石破茂元地方創生相の派閥に属し、衆院徳島1区の候補者争いを繰り広げている。

 徳島県では、田中角栄元首相直系の後藤田正晴元副総理派と三木武夫元首相派が長く対立し、「阿波戦争」と呼ばれた時代があっただけに、今回の選挙戦を「令和の阿波戦争」と呼ぶ自民党関係者もいた。市を2分する激しい選挙戦となっても不思議でない戦いの構図だ。

 しかし、両陣営が大集会や有権者との握手を自粛したため、選挙戦は盛り上がりを欠いたまま。東新町商店街で買い物していた女性(74)は「いつもなら候補者がアーケード街を練り歩くのに、本当に選挙をしているの」。大学の飲み会へ行くという女子学生(21)は「市長選挙中とは知らなかった。こんな時期にしなくてもいいのに」と驚いていた。

 選挙は約2000票差の接戦を制し、内藤氏が初当選した。だが、投票率は38.88%。前回の45.7%を大きく下回った。両陣営はSNSやインターネットサイトを通じて懸命の主張を続けたが、投票所へ足を運ぶ人は少なかった。

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3月以降の主な首長選、投票率はいずれも低下

 新型コロナの感染が国内で拡大を始めた3月以降、各地で予定通りに首長選が行われたが、投票率はいずれも前回を下回った。蒲島郁夫知事の4選の是非が争点となった熊本県知事選は、前回より約6ポイント低下し、45.03%の投票率にとどまっている。

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3月、4月にあった主な首長選の投票率

 現職に新人の女性候補が挑んだ宮崎県日向市長選は約20ポイント下がり、過去最低に。現職と新人が一騎打ちを繰り広げた長崎県対馬市長選は約16ポイントの低下となった。

 長野県松本市長選は戦後最多の無所属新人6人が乱立する異例の選挙戦が繰り広げられた。しかし、選挙戦は一向に盛り上がらないまま投票日を迎え、前回を1.5ポイント下回る48.38%の投票率にとどまっている。過去3番目に低い数字だ。

 町議選とのダブル選になった滋賀県多賀町長選は前回より約7ポイント、無所属新人2人が大接戦を演じた京都府笠置町長選は約6ポイントの低下となった。現職、新人、元職が三つ巴の戦いを繰り広げた長野県池田町長選も、前回を4ポイント近く下回っている。投票率の低下は最近の全国的な傾向だが、注目度の高い選挙まで投票率が低下した。

【次ページ】「こんな選挙は初めて」「新たな仕組みを」

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