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  • 2023/11/06 掲載

コンポジットAI(複合AI)とは何か? マルチモーダルAIとの明確な違いとは

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AIの技術的な進歩に伴い、次から次へと新しいAIが開発されるようになりました。しかし、人間にも得手不得手があるように、AIにも得手不得手があります。そうした中でAIの応用範囲を広げるため、複数のAI(アルゴリズム)を組み合わせることで互いの長所と短所を補い合うように設計されたのが「コンポジットAI(複合AI)」と呼ばれるAIです。本記事では、そもそもコンポジットAIとは何か、コンポジットAIが従来のAI技術と何が違うのか、コンポジットAIの事例3選を分かりやすく解説します。
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コンポジットAI(Composite AI)とは何か?分かりやすく解説します

コンポジットAI (複合AI)とは

 コンポジットAI (Composite AI)とは、複合AIとも呼ばれ、複数のAIモデル、もしくはAIアルゴリズムを1つのAIの中に組み込んで運用する手法です。画像認識・数値解析・ルート探索など、種類が異なる複数の知的タスクで構成される複雑なタスクを対象にして、モデルやアルゴリズムを使い分ける方式や、実行・監視・説明のようにタスクの階層を分けて作業を分担するような方式で運用されます。

 これによりAIの汎用性が高まり、応用範囲も広がります。ただ、こうした発展型のAI技術は数多く登場するようになっており、同じような場面で使われる似たような単語が次々に現れるようになりました。コンポジットAIは、ほかの類似技術とは何が違うのでしょうか。順番に紐解いていきましょう。

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コンポジットAI、従来技術と何が違う?

生成AIで1分にまとめた動画
 まず、近年主流のディープニューラルネットワーク(DNN)を利用したAIは、機械学習によって特定のタスクに特化した「学習モデル」が作られ、そこから用途に応じて学習を重ねてモデルが分化するような形で応用範囲を広げてきました。

 こうしたAIはある種の「タスク特化型のAI」として特定のタスクには極めて優秀な成績を収めますが、それ以外のタスクに関してはうまく働きません。画像モデルのAIは画像認識で、音声モデルは音声認識のように、綺麗に使い分けられていました。

 それに対して「1つのAIに画像モデルと音声モデルを組み込んだAI」のような従来は単体で使われてきたAIを組み合わせたAIが登場するようになりました。広義ではこのようなAIもコンポジットAIと呼べますが、このような「DNNの学習モデルを複合したAI」というのはそれほど珍しくはありません。巨大なニューラルネットワークの中に複数種類のモデルが混ざっているというだけで、このような技術はディープラーニング技術の黎明期から存在していました。

 コンポジットAIで本当に注目すべきは、異なる学習モデルではなくDNNとはまったく異なる系統のアルゴリズムを複合させているという点です。つまり、ディープラーニング以前の主力AI技術であった無数のルールとパターンからなる「ルールベース型」や、ナレッジグラフなどの知識表現技術を用いた「知識ベース型」の技術を組み合わせているAIという意味であり、双方の強みをうまく発揮できる画期的なアーキテクチャになっています。

 また、このような従来型AIとDNNを組み合わせたものを「Neuro-Symbolic AI(ニューロシンボリックAI)」と呼ぶこともあります。Neuroはニューラルネットワークを用いたコネクショニズム的な新しいAI、Symbolicは記号主義的な従来型AIを指し、双方を組み合わせたAIということです。

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コンポジットAIのイメージ
(出典:筆者作成)

 従来から存在するルールベース型も知識ベース型も、基本的には人間による「思考パターンの詳細な定義」が必要で柔軟性には欠けますが、人間が問題の解決法を理解している場合には極めて有効です。

 ただ、こうした従来型AIは画像認識などの人間が感覚的にやっているタスクを苦手としています。こうしたタスクは思考パターンの定義が難しく、機械学習によって「感覚的にできるようになってしまうDNN」に敵いません。それでも、効率の良い作業パターンがすでに分かっていて、特定の計算式や作業プロセスを用いるような場合は依然として従来型のアルゴリズムの方が高速で確実です。

 このような特性の違いから、コンポジットAIでは、複数のアルゴリズムを組み合わせることで計算リソースを削減しつつ精度を上げることができるようになるほか、複数種類の知的タスクを必要とする複雑なタスクに対し、役割分担で対応できるようになるため、AIの汎用性が高まります。また、人間と同等の知能を持つ「汎用AI」の実現にもコンポジットAIに類する技術が必要になると考えられており、AIの発展には必要不可欠な技術と言えるでしょう。

 しかし、欠点もあります。複数のアルゴリズムが1つのAIに組み込まれているため、タスクに対して最適なアルゴリズムやモデルを選択できなければ効果を発揮しません。また、組み合わせたAI同士の連携も重要で、連携時に情報が欠落すると単体AIに劣る精度になってしまう恐れもあります。コンポジットAIが能力を発揮するにはさまざまなシチュエーションを考慮した優れたアーキテクチャの構築が必要になるでしょう。

類似AIと何が違う?(1):マルチモーダル

 コンポジットAIの概念自体はそこまで難しいものではありませんが、問題は複数のAIモデルやアルゴリズムを使うことを前提とした技術や用語が数多く存在するため、それらとの関係性がよく分からなくなるという点かもしれません。

 たとえば、関連用語としてひんぱんに登場する「マルチモーダルAI」と呼ばれる技術は、画像・音声・言語などの複数種類のデータを扱えるAIのことを指します。こうしたマルチモーダルAIは最初からマルチモーダル化することを前提に学習を行った大規模なDNNで実現することも可能ですがコストがかかります。一方、タスクに応じて異なるアルゴリズムや学習モデルを使い分けるコンポジットAI的なアプローチであれば、低コストで実現できます。

類似AIと何が違う?(2):アンサンブル学習

 また、複数の学習モデルやアルゴリズムを利用して機械学習を行う手法のことを「アンサンブル学習」と呼びます。

 こちらも複数の学習モデルやアルゴリズムを採用していますが、基本的に過学習による精度低下を防ぐために「同じタスクを複数のAIで行う」という点に焦点があたっています。タスクに応じて作業を分担することで汎用性を高めるコンポジットAIとは少々異なるアプローチと言えますが、アンサンブル学習を行うAIをコンポジットAIの一種と考えても広い意味では間違いではないでしょう。

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アンサンブル学習のイメージ
(出典:筆者作成)

類似AIと何が違う?(3):説明可能AI

 さらに、説明可能AIの文脈でもコンポジットAIは登場します。DNNの欠点として「思考プロセスがブラックボックス化」する点がよく挙げられますが、コンポジットAIはそれを解決するのにも役立ちます。

 ルールベース型や知識ベース型は思考プロセスがあらかじめ定義されており、判断の根拠が極めて分かりやすいのが強みです。そのためDNNの思考プロセスを説明しやすくする目的で従来型を組み合わせ、説明可能AIにするのです。

 ただ、説明可能AIはコンポジットAIでなくとも実現可能ですし、コンポジットAIなら説明可能とも限りません。あくまで説明可能AIを開発する際にコンポジットAIが有用であるというだけなのです。

「コンポジットAI」と「その他AI」の境界線

 もうひとつややこしいのが、複数のAIを組み合わせた「AIサービス」や「AIシステム」との違いです。この場合、企業が提供する製品の一種になるので明確な定義がなく、区別されずに「コンポジットAI」と呼ばれてしまうこともあります。

 ただ、1つのAIに複数のモデルやアルゴリズムが入っているのではなくAI同士を「API」などでつないでいる場合はコンポジットAIとは呼べません。

 たとえば、Google AssistantやGoogle Autoなどは複数のアルゴリズムが組み合わされて提供されていますが、それぞれがAPIでつながっているだけなので、コンポジットAIとは呼びません。

画像
複数のAIを組み合わせた「AIサービス」のイメージ
(出典:筆者作成)

 ただ、モデルやアルゴリズムが独自APIで緊密に連携しており1つのAIとして機能しているような場合にはコンポジットAIと呼べるかもしれません。このあたりのさじ加減は開発者次第なところもあります。 【次ページ】コンポジットAIの市場規模、コンポジットAI事例3選を解説

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