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  • 2013/11/14

トヨタ自動車が語る、エンジン開発で取り組んだ開発手法「MBD」とは?30日を1日に

安全面や環境への配慮など、現在の自動車にはさまざまな制約条件が求められるようになっている。それに伴い、エンジンの制御システムは複雑化、大規模化の一途を辿っている。一方で自動車メーカーは、商品開発期間の短縮とコスト削減という普遍的な命題を抱えている。こうした数々の課題を解決するためにトヨタ自動車が取り組んだのがMBD(Model Based Development)やMBD Frameworkの導入だ。Oracle Days Tokyo 2013で登壇したトヨタ自動車 東富士研究所 エンジン技術開発部 主幹の石崎直哉氏が、その取り組みについて語った。

執筆:レッドオウル 西山 毅

執筆:レッドオウル 西山 毅

レッド オウル
編集&ライティング
1964年兵庫県生まれ。1989年早稲田大学理工学部卒業。89年4月、リクルートに入社。『月刊パッケージソフト』誌の広告制作ディレクター、FAX一斉同報サービス『FNX』の制作ディレクターを経て、94年7月、株式会社タスク・システムプロモーションに入社。広告制作ディレクター、Webコンテンツの企画・編集および原稿執筆などを担当。02年9月、株式会社ナッツコミュニケーションに入社、04年6月に取締役となり、主にWebコンテンツの企画・編集および原稿執筆を担当、企業広報誌や事例パンフレット等の制作ディレクションにも携わる。08年9月、個人事業主として独立(屋号:レッドオウル)、経営&IT分野を中心としたコンテンツの企画・編集・原稿執筆活動を開始し、現在に至る。
ブログ:http://ameblo.jp/westcrown/
Twitter:http://twitter.com/redowlnishiyama

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複雑化/大規模化の一途を辿るエンジン制御システムの開発プロセス

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トヨタ自動車
東富士研究所
エンジン技術開発部
主幹
石崎 直哉 氏
 トヨタがハイブリッド(HV)車である初代のプリウスを発売したのが1997年のこと。2013年には累計販売台数は500万台を超えている。同社では2010年代の早い時期に年間100万台を突破することを目標に掲げ、さらに2020年代には全車種にHVを導入することを目指している。

 また次世代環境車の開発にも取り組んでおり、水素と酸素を化学反応させて電気を作る燃料電池を動力源とする燃料電池車(FCV:Fuel Cell Vehicle)も研究段階にある。

 エンジン専用の開発部隊に所属する石崎氏は、「こうした流れを背景に、我々は色々なバリエーションの車を同時に開発していなかなければならない。しかしエンジン制御もまた非常に多様化してしまい、制御システムの開発プロセスを管理していくことがとても難しくなってきている」と現状の課題を説明する。

 エンジンはハードウェアだけでは動かない。コンピュータシステムによって最適な燃料噴射量と点火時期を制御することで、優れた動力性能とクリーンな排気、スムーズな運転性能を実現している。

 たとえば現在、1つのエンジンにおける制御モジュールの数は600~800で、各モジュールはC言語の1つの関数だ。

 あるいは販売先の国に応じた個別対応も必要で、たとえばASEANならより安く車を作らなければならない制約があり、欧州なら厳しい排気ガス規制に対応しなければならない。さらには多様化する代替燃料エンジンへの対応も必要だ。

 現在では1年間に100車種のエンジン制御開発を同時並行で行っている。「開発現場はまさに混沌とした状況」(石崎氏)という。

実機での評価では、数か月単位の遅れが発生する場合も

 1980年代初頭に登場した最初のエンジン制御システムは、4ビットのCPUと4kバイトのROMで構成され、入力としては、アクセルの操作、空気量、エンジンの回転数、酸素濃度、水温/吸気温の5つ、出力が、燃料噴射量と点火時期の2つのみだった。

 これが現在のエンジン制御システムでは、CPUが32ビット、ROM容量が1Mバイトで、入力数は55、出力が48にもなっている。かつ最近では車載のCAN(Controller Area Network)を介して、駆動系システムなど他システムとも300以上の通信信号をやり取りしている。

 またエンジン制御システムの仕様書をプリントアウトした紙の枚数は、1988年で約90枚、2002年には2000枚、それが現在では約5000枚にもおよぶ。

「ここまで来ると、一人のエンジニアがすべてを理解するのは不可能だ。そこで、あるメンバーは空気の制御、また他のメンバーは点火の制御というように役割分担が進んできており、チームとしてエンジン制御システムを開発するという状況になってきている」

 実際の開発プロセスとしては、まず制御への「要求」を決定する。たとえば“2018年に発売する車の酸素濃度はこれ以下にする”という制約を達成するためには、どういう制御が必要なのかを考える。

 次にその要求を具体的な「機能」に落とし、ソフトウェア部分については「仕様」を決めて「コーディング」を行い、ハードウェア部分についてはCASEツールなどを使って「設計図」を描く。

 実際のソフトウェアおよびハードウェアの作成は外部のサプライヤーに依頼し、納入してもらった後に実機での「評価」を行う。

 実際に評価を始めても、思った通りに動かないということは起こる。その際にはまた要求段階に戻って考え直す。「これを開発期間中、繰り返す。そのため数か月単位の遅れが発生する場合もあった」という。

 こうした課題を解決するためにトヨタが採用したのが、コンピュータによるシミュレーションを多用するMBD(Model Based Development)という開発手法だ。

【次ページ】「これまで30日かかっていた工程が1日でできるようになった」

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