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- 2015/03/03 掲載
クラウドワークス吉田浩一郎社長に聞く2030年、求められるのは未来をデザインできる人
これから仕事の総量は、今よりも確実に減っていく
──インターネットを介するクラウドソーシングの活用によって、個人、企業共に仕事の仕方が大きく変わってきています。今後のさらなる環境変化を、どのように捉えられていますか。
たとえば15年後の2030年を見据えた時、人の労働という意味での仕事の総量は、今よりも確実に減っていると思います。
つい先日、知人の所有するベンツのS550という車に乗ったのですが、この車種にはアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)という自動運転の機能が搭載されており、前に車が走ってさえいれば、それをセンサーで追尾してハンドル操作をしてくれます。人が運転しなければならないのは、前に車がいない時だけです。
現在、日本ではまだ自動運転が許認可されていないので、ACCはあくまで補助的なもので、定期的にハンドルを握れというアラートは出るのですが、ただ機能的にはもう完全な自動運転が可能になっています。
そうなると、バスなどの定期運行便は始発の車だけ人が運転すればよく、以降の便は自動運転で、一定の間隔を開けてその後に連なって運行させるというオペレーションが、十分に起こり得るでしょう。つまり“運転”という労働が無くなるのです。
その時に“運転する楽しみは無くならない”という人もいるでしょう。だから運転という行為もなくならないと。しかし、過去にオートマチック車が登場した時にも同じようなことが言われました。それが今、我々はマニュアル車を運転する人は趣味人という感覚になっています。
この例1つを見ても分かる通り、人間は“合理性の高い方向”にしか向かっていないのです。そう考えれば、これから仕事の総量は確実に減っていくでしょう。
付加価値が提案できる人間を目指すのか、地域コミュニティで暮らしていくのか
私は今、“あらゆる感覚がファミレス化してきている”と感じています。
ファミレスは、皆で、美味しいご飯を、安く、手軽に食べたい、という制約の中で選ばれますが、それに慣れてくるうちに、お金と時間をかけて、本当に美味しいものを食べるという行為が、だんだん縁遠いものになってきているのではないでしょうか。
これは旅行についても同様で、今では世界中のあらゆる風景がネット上で、あるいは高精細テレビで見ることができます。実際にナイアガラの滝に行かなくても、大体どんな感じかは分かる。すなわち、お金をかけて、時間を費やしてリアルな体験をするということのハードルが実はどんどん高くなっていると思います。
先に人は合理性の高いものを指向するという話をしましたが、高いお金を払って、何時間もかけてナイアガラの滝を見に行くのは非効率だよね、だったら写真集でいい、あるいは4Kテレビでいい、と考える人が既に出てきている。
2030年には恐らく、リアルの経験が自分にとって最上位の価値ではない人がもっと増えているでしょう。何に価値を見出すかの基準が大きく変わってきているのです。
地方都市では都会に比べて、日常生活ですべきことが多々あります。雪かきや魚釣り、あるいはスノーボードや山に行くとか。そういう身体性の強い地元のコミュニティで、リアルな仲間と働き、過ごすという世界と、ロボットやクラウドソーシングによって、より効率化されていく世界の乖離が、これからどんどん進むでしょう。
それがこれからの新しい世界の分かれ方で、2030年にはこの2つのレイヤーをベースに国が再構築されていくのではないかと考えています。それは個人にとって、非常に選択を迫られる時代であることは間違いありません。
効率化が進む世界で、さらに付加価値が提案できるような人間になることを目指すのか、それともそれらすべてを遮断して、自分の地域のコミュニティで暮らしていくのか。その間にいるだけでは、効率化の波に巻き込まれてしまうことになるでしょう。
【次ページ】オープンイノベーションで解決する問題を設定する
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