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  • 2015/04/30

トップダウン型かボトムアップ型か? 組織形成の方法論を中国の歴史に学ぶ(後編)

連載:名著×少年漫画から学ぶ組織論(27)

かつて中国大陸を統一するために、儒家が主張した「徳治主義」は、徳のある統治者がその持ち前の徳をもって人民を治めるべきだ、という考え方である。一方で法家は、そんな手ぬるいことでは中国大陸の統一など成し遂げられないと考え、より過激な「法治主義」を採用した。この「徳治主義」と「法治主義」の対立は、よくよく現代の「ボトムアップとトップダウン論争」を連想させる。

プロジェクト進行支援家 後藤洋平

プロジェクト進行支援家 後藤洋平

予定通りに進まないプロジェクトを“前に”進めるための理論「プロジェクト工学」提唱者。HRビジネス向けSaaSのカスタマーサクセスに取り組むかたわら、オピニオン発信、ワークショップ、セミナー等の活動を精力的に行っている。大小あわせて100を超えるプロジェクトの経験を踏まえつつ、設計学、軍事学、認知科学、マネジメント理論などさまざまな学問領域を参照し、研鑽を積んでいる。自らに課しているミッションは「世界で一番わかりやすくて、実際に使えるプロジェクト推進フレームワーク」を構築すること。 1982年大阪府生まれ。2006年東京大学工学部システム創成学科卒。最新著書「予定通り進まないプロジェクトの進め方(宣伝会議)」が好評発売中。 プロフィール:https://peraichi.com/landing_pages/view/yoheigoto

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国家統治コンサルタントとして「統治のあり方」を説いた儒家

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トップダウン型かボトムアップ型か?
組織形成の方法論を中国の歴史に学ぶ
 「諸子百家」とは、中国大陸が秦によってまだ統一される前の時代、様々な政治・経済、あるいは軍事・外交思想を持った士大夫が、各々に理想の政治のあり方を説き、数えきれない思想が生まれた当時の思想状況を表現した言葉である。

 湯浅邦弘の著書「諸子百家」は、儒家・墨家・道家・法家・兵家という、諸子百家における五つの主要な系統の考え方を解説した書だ。本書ではバランスよくわかりやすく、各流派の考え方や歴史を教えてくれる。

 なかでも興味深いのは、孔子・儒家的な「徳」による秩序形成のあり方。つまり、「徳治主義」と、秦の始皇帝・法家的な「法治主義」による秩序形成の対立である。

 儒家の主張である「徳治主義」とは、その名の通り「徳のある統治者がその持ち前の徳をもって人民を治めるべきである」とする考え方である。「その世界の中心に徳のある聖人がいて、それが辺境にも徐々に波及していくことで正しい秩序がもたらされる」というこの考え方は、中華思想の根幹をなす重要な要素となっている。

 「徳治主義」は、現代日本社会においても、直感的に受け入れやすく、ごく自然な考え方である。

 例えば「その人がいるから協力する」「あの人がトップだから、組織がまとまる」ということは、現実として存在する法則だ。例えば急成長企業におけるカリスマ起業家といった存在がまさにそうだし、漫画ONE PIECEにおける海賊団の船長達は、そうした人々がどうあるべきかといことの、現代における指南書のようなものだったりする。

 ちなみに、春秋時代の中国全体の総人口は約1400万人。孔子の出身国である、斉国の総人口は約150万人、兵力数は約30万人だったという推計がある。

 現代になぞらえると、東京都の人口が1335万人。150万人というと、世田谷区と杉並区を足した規模感である。30万人の軍隊組織ということを考えると、日立グループの連結従業員数が約32万人であると考えると、少しイメージしやすい組織の規模だ。

 儒家という人たちは、現代における首長や大企業経営者に対する政治評論家、組織コンサルタントの始祖のようなものなのであったのである。

 春秋時代の混乱期において、中国大陸は様々な国に分かれて、戦争に明け暮れ、政治のあり方に試行錯誤をしていた。儒者は「国を治めるには、君子にならないと駄目ですよ、伝説の聖人、堯舜のような、“徳”で治めるのが一番いいですよ」と説いて回っていたのだ。

 その儒家がどのような手法を用いてコンサルティングを行っていたのか。その中核にあったのが「君子こそが正しい治世を実践できます、君子とはこれこれこういった人物なのです」という「政治理論」だった。

【次ページ】法家が儒家を批判する際に用いた「矛盾」の概念

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