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  • 2015/09/28 掲載

迫る「大学の2018年問題」、地方創生目的の入学者抑制策は地元定着に結びつかない

札幌大は7000人が2800人まで減少

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文部科学省は、首都圏など3大都市圏にある私立大学の入学定員超過を抑える補助金見直しを打ち出した。2016年度から私大への補助金が不交付となる大学定員超過率の基準を厳格化し、3大都市圏への学生流入を抑制することで、地方にある私大の定員割れを解消するとともに、学生の地方定住を促す地方創生策の1つと位置づけている。しかし、地方は既に急激な人口減少が始まり、存続の危機が迫っている自治体も少なくない。机上の数合わせとも映るこの政策が、学生の大都市流出をどこまで防げるのだろうか。
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2018年には私大が壊滅的な状況に追い込まれる可能性がある
(Photo:milatas/fotolia)

3大都市圏で約1万4,000人の学生を抑制

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 文科省私学助成課によると、補助金を全額不交付とする入学定員超過率は現在、大規模校(定員8,000人以上)で1.20倍以上、それ以外で1.30倍以上としているが、これを大規模校1.10倍以上、中規模校(定員4,000人以上8,000人未満)1.20倍以上と厳しくし、16年度から3年間かけて段階的に新基準に移行する。

 小規模校(定員4,000人未満)の基準は現状のまま。基準の厳格化は3大都市圏に限定したものではないが、文科省はこれにより3大都市圏で約1万4,000人の学生流入を抑制する効果があるとしている。

 さらに、現在は1.0倍を上回っても定員分の学生経費が交付されているが、19年度からは1.0倍を超えると超過分に応じて交付する経費が減額される。逆に、大学が1.0倍以下に抑えると、私学助成金を上乗せする優遇措置も採り入れる。国立大でも基準を厳格化し、定員超過分を国庫返納させる方針だ。

 地方から3大都市圏へ若者が流出するのは、大半が大学進学か就職時。下村博文文科相は記者会見で「私立大の入学超過約4万5,000人のうち、8割の約3万6,000人が3大都市圏。定員超過の抑制を図ることで地方に学生を留め、地方創生に貢献したい」と狙いを語った。

迫る「大学の2018年問題」

 日本の18歳人口は戦後、「団塊の世代」が18歳を迎えた1966年に249万人のピークを迎えた。団塊ジュニアが高校を卒業した1992年に205万人を記録したあと年々減少し、2014年で118万人まで落ち込んだ。しかし、この間に国内の大学数は1990年の507校が2014年の781校と、私大を中心に大幅に増加している。

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日本の大学数。90年以降、私立大が急増している

 それでも大学進学率が50%前後まで伸びたため、多くの大学が経営を維持できるだけの学生を集められたが、今後は地方大学の状況は厳しさを増す一方だ。

 日本私立学校振興・共済事業団がまとめた15年度の地域別定員充足率をみると、3大都市圏がそろって100%を上回っているのに対し、地方の大半が100%に満たず、人口減が急激に進む北海道、東北、中四国、南九州で定員割れが深刻になっている。特に四国は90%を下回り、飛び抜けて低い。定員割れしている大学は国内全体の半数に及び、多くが地方大学だ。

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私立大の地域別定員充足率。オレンジ色は100%を切っている地域

 たとえば、北海道札幌市の札幌大は、最盛期にざっと7,000人いた学生が約2,800人まで減り、13年度に学部再編を余儀なくされた。徳島県徳島市の徳島文理大は、保健福祉学部の看護、理学療法、診療放射線科を除き、他の全学科、短大で定員割れ。両校とも学生確保に懸命だが、3大都市圏の有名大に学生を奪われ、苦戦している。もはや受験戦争は難関校に限った話で、地方大学では入学生の獲得競争に追われているのが実情だ。

【次ページ】入学者抑制が若者の地元定着に結びつかない2つの理由

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