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  • 2016/04/26 掲載

Uber、ネスレに学ぶ、経営者が直接組み換えてビジョンを反映する事業ポートフォリオ

グローバル経営者に伝える日本の弱点(6)

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企業の事業群の組み合わせを指す事業ポートフォリオ。自社のビジョンを実現する具体的な計画を示すものであり、また、社内・社外に対して実を伴うメッセージとしての役割を果たす。経営者による「命題の設定」「命題を解決するモデルの策定」を論じる本連載だが、今回は「事業ポートフォリオのあるべき姿」「企業ビジョンを実現するためのポートフォリオ」をアクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰氏が解説する。

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CEOが自らの責任で最適化する事業ポートフォリオとは

日本企業の命題を解決するためには、経営者が自らの手で事業ポートフォリオを組み換えなければならない

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アクト・コンサルティング
取締役 経営コンサルタント
野間 彰氏
――今回から、日本のグローバル企業が解決すべき命題に関してお話頂けるそうですが。

野間氏:はい。いくつか解決を急ぐべき命題があると思います。今回は、事業ポートフォリオの組み換えについてお話ししたいと思います。

 日本企業で「選択と集中」という言葉を聞きます。その多くは、企業業績が低迷するなかで、不採算事業をグループの外に出すという意味で使われているのではないでしょうか。一方で、欧米企業では、業績が良い時にでも自社の事業ポートフォリオを組み換える。利益が出ている事業を売却するといったことが行われています。

――日本企業は、業績が低迷するまで手をこまねいている。もっと早く対応すべきだと言う意味でしょうか。

野間氏:スピードの問題もあるでしょうが、そもそも事業ポートフォリオの組み換え責任が明確になっているか、そして、何の基準で最適化するかという問題があります。

 例えば、あるヨーロッパの大手素材メーカーでは、2010年から2020年まで、年平均6%の成長計画を持っていて、安定的に世界の成長率を超える事業でポートフォリオを固めるよう、ポートフォリオの組み換えを行っています。ポートフォリオの評価軸は、事業パフォーマンス(収益性とシェア)と、市場魅力度(市場成長、市場規模、イノベーション機会、競争環境)。この評価軸に従い、既に医薬品や、肥料、スチレンなどを売却してきました。この企業は現在も、新たな長期経営計画の下、在任期間8年前後のCEOが、買収(売却)、投資、イノベーションを計画的に進めています。

 この企業には、現行事業部が対応できない新規事業の立ち上げを支援する子会社があります。この会社は、
①立ち上がった事業の(事業部として独り立ちするまでの間の)マーケティング&セールス
②新しい事業部門の確立
③技術・企業のスカウティング
を行い、また先進の情報を提供することで、CEOのポートフォリオ組み換えの決断を支援しています。

――なるほど。まずCEOが自社グループの事業ポートフォリオの組み換え、最適化を行うことを、自分の責任として認識することが先決ですね。

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野間氏:日本企業でも、事業ポートフォリオの組み換えは誰の責任ですかと問われれば、それはCEOでしょうという答えが返ってくるでしょう。しかし、常に問題意識、説明責任を持ってこれに対処している日本企業は少ないと思います。

 例えば、企業の新規事業開発の仕組を調べてみると、ハイテクや素材、電機などでは、欧米の大手企業はポートフォリオレベルに関してはCEOの責任で、事業周辺に関しては事業責任者の責任で進めているところが多い。これに対して日本企業では、今でもスタッフ部門の中間管理職や若手が企画している所があります。スタッフには、事業運営経験も、広い視野も人脈もない。社内ですら妥当な有識者から自由に話を聞けない。ましてや新しい事業の顧客候補の経営幹部に話を聞きに行く人脈もない。いかに優秀でも、スタッフには能力に限界がある。スタッフが自社の新しい柱を考えるのは大変です。また、たとえ良いプランが出来上がっても、関連する事業部を納得させて事業部移管するには、すごく時間がかかる。だから、新規事業を考えるのは経営幹部となっている。ポートフォリオの組み換えも同じです。

 例えば先ほどのヨーロッパの企業の場合、世界市場の高い成長率を超える成長を自社が果たせなければ、市場でポジションが低下する。いかにして世界の経済成長以上に成長するかという命題への答えとして、当時のCEOが成長を重視したポートフォリオの組み換えを考えました。スタッフを使うのはいいですが、意思を持って組み換え策をクリエーションし実現するのはCEOでなければ、素早く妥当な策を考えて決断することは難しいでしょう。CEOとしても、現状を大きく変える施策を他人が考えた場合、それを決断するのは簡単ではない。ポートフォリオ組み換えは、CEOの重大な仕事なのです。

【次ページ】日本と欧米で比較する「事業ポートフォリオ最適化の基準」

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