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- 2016/02/26 掲載
グローバル経営者に伝える日本の弱点 - 日本のIT化の遅れを取り戻す唯一の方法
グローバル経営者に伝える日本の弱点(4)
膨大な投資のグローバル業務改革、はたして元はとれるのか
野間氏:1つ例を示します。グローバルに事業展開している日本企業で、業務プロセスとこれを支援するITを世界で標準化・統合する動きが進んでいます。しかし、当初の計画通りに進まず、経営者がこの活動に疑問を持ったり、再考する企業も出ています。
具体的には、ERP(基幹システムのパッケージ)で自社グループに合うテンプレートを作って、各国現地法人の既存システムを、このテンプレートに置き換えるのですが、1か国の置き換えで10億円以上の投資が必要な場合も珍しくありません。一方で、この投資の回収については、システムを統合して運用保守費を下げるとか、ビジネス部門がM&Aなどで事業構造を変えた場合、システムが迅速にこれに対応するといった、システム部門のメリットで何とかしようとしているところが多いようです。
――それで、回収できるんですか。
野間氏:難しいでしょう。だから、毎年システムの置き換えでどんどん投資が増えるのに、リターンがないじゃないか・・・と、経営側が問題指摘をしている。
一方で欧米の先行事例を見ると、この活動で大きなリターンを上げていることが分かります。例えば、間接業務をグローバルに標準化して中国など人件費の安い国に集約し、業務コストを削減する。生産・販売・在庫情報をグローバルに見える化し、計画策定の統合度を高め、需給調整サイクルを早め、在庫を削減する。拠点・事業を超えた集中購買で部材コストを削減する。世界で生み出された改善実績を定期的に収集して標準を充実させ続ける。
業務プロセスとITを統合した後で、これらの改革をシステム部門ではなくて経営者、ビジネス部門が行わなければ、投資回収は難しいと思います。
間接部門の海外アウトソースは現実的なのか
野間氏:そうです。海外大手企業の日本の現地法人を見ると、既に間接部門がないところがいくつもあります。中国などのシェアードサービス会社に、グローバルグループの間接部門を統合しているのです。
東日本大震災の後、日本企業が工場が被災して製品供給が出来なくなったとき、競争相手の外資系企業は、すぐさま海外工場で国内向け製品を作り、供給を続けたという例もあります。この企業は、サプライチェーンのグローバル統合で、世界のどこでも作れる体制を整えていました。
アメリカの機械メーカーでは、社長候補者の部長クラスを評価者として、毎年世界の現地法人を回らせ、標準通りの業務が出来ているか、その上でどのような改善を行ったかアセスメントし、標準を徹底するのみならず、改善を標準に上乗せして、世界レベルで業務を改善し続けるサイクルを回しています。
――しかし、間接部門を海外に持って行くと、日本語での対応が難しい。工場の場合、きめ細かな日本人でしか対応できない工程もあるのではないでしょうか。
野間氏:欧米企業のグローバルなビジネスの改革では、苦労もあったようです。ある外資系企業で間接部門を中国に持って行ったとき、コールセンターでは日本語がうまく通じず、一旦サービスレベルは落ちました。しかしその後、サービスの改善を進め、今では、過去よりももっときめ細かな対応を、日本語のみならず多言語で行っています。
ある日本の製造業の事業責任者に、買収した米国企業の社長を据えた所がありました。この米国人事業責任者が日本工場を視察した際、工場担当者から「この工程は日本人でしか対応できない」と聞き、すぐに世界で作れるように指示を出しました。その後、生産技術の改善や現場の標準化などで、今では世界のどこでも作れるようになっています。
――その気になってやれば出来ると。
野間氏:何よりも、経営者が命題を定めて、これを解決する気になるかどうかが問題です。現在、グローバルに事業展開している日本企業の中には、世界中で拠点や組織機能など、リソースが重複している所が多いと思います。また、顧客情報がバラバラなため、グローバルグループの総力を上げて顧客に対応できていない所も多い。このことを、経営者が、自ら解決すべき命題だと捉えれば、その解決策として、間接部門も、サプライチェーンも、調達も、すべてを1つに向けて統合するという統合モデルが考えられるはずです。
欧米の先行企業を見ると、まず、このような命題、それを解決するグローバルな統合モデルが経営者によって考えられ、これを実現する方法として、システム部門に、業務プロセスとITの統合が指示されています。これに対して日本企業の場合は、問題意識を持ったシステム部長やCIOが、ボトムアップにITの統合を提案していることが多いと思います。
【次ページ】IT化でグローバル競争に勝ちたい経営者は何をすべきか
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