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2016年06月24日

過去5年で小麦の価格は「最安」水準

うどんもラーメンもパンも「この夏」安くなる

麦茶、麦飯、麦わら帽子など、麦は日本人にもなじみがある穀物だが、世界的にみても重要な農産物。特にパンの原料になる小麦は世界の商品市場(コモディティ市場)で、主に家畜の飼料になるトウモロコシ、大豆と並ぶ重要な取引商品である。そのコモディティ市場で小麦価格は今、過去5年間で最も安い水準になっている。昨年、政府の小麦売渡価格が3.0%上昇すると夏にパンや麺類が一斉に値上がりしたが、その後、売渡価格はマイナス5.7%、マイナス7.1%と連続して下がった。この夏、小麦が原料の加工食品の価格はどうなるのだろうか。

執筆:経済ジャーナリスト 寺尾 淳

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小麦の存在感は確実に大きくなっている



日本人は「加工食品を通じて」小麦をよく食べる

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 「日本人の主食は米」というのは、必ずしも正確とは言えない。食卓の上では、米のご飯が主食で肉や魚や野菜は副食という位置づけだが、それ以外にパン、うどん、ラーメン、菓子など、小麦からつくられる加工食品の消費が伸びているからだ。

 農林水産省食料安全保障室が発表する「食糧需給表」によると、2014年度の国民1人あたりの年間の小麦消費量は32.9kgで、米の55.2kgの59.6%と、約6割まで迫っている(概算値)。前回の東京五輪の翌年の1965年度は25.9%、1975年度は35.7%、1985年度は42.4%だった。小麦の年間1人あたり消費量は2008年以降は31〜32kg台で安定しているが、食生活に占める存在感は確実に大きくなっている。

 戦後の食糧難の時代、大蔵大臣の時に「貧乏人は麦を食え」と失言しながら総理大臣になった政治家がいたが、今の日本人は貧乏人ではなくても、麦飯ではなくても、多彩な食品に加工された小麦を好んで食べている。しかも「ラーメンブーム」「(讃岐)うどんブーム」「スイーツ(菓子)ブーム」「パンブーム」と、食の分野では近年、次から次へと小麦加工食品のブームが起きている。パスタやピザも日本人の食生活にすっかり定着した。

 日本全体の小麦の消費量は2014年度で417.7万トン、国内生産量は85.2万トンで、その79.6%を外国産の輸入に頼っている(「食糧需給表」)。財務省の貿易統計によると、2015年の小麦の輸入先のトップ3はアメリカ(50.5%)、カナダ(29.2%)、オーストラリア(16.3%)で、全体の約8割が北米産である。

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日本の小麦の消費量(左)、日本の小麦の輸入先


輸入小麦の価格はどう決まるのか

 その北米産の小麦、トウモロコシ、大豆など穀物の集散地として発展した都市がアメリカ・イリノイ州のシカゴ。ここにあるCBOT(シカゴ商品取引所)の先物価格が、世界の小麦の価格を決定すると言っても過言ではない。1848年にCBOTで始まった穀物の先物取引が世界の商品市場(コモディティ市場)の原点で、金融のデリバティブ取引の原点でもある。

 そのシカゴCBOTの小麦先物価格は今、最近5年間で最も安い水準まで下がっている。1ヵ月先に受け渡しする先物価格(取引単位は1ブッシェル=27.2kg)は、2011年は600〜800ドルの間でおさまっていたが、天候要因で2012年6月に900ドルを突破して直近の高値をつけた。その後、2013年になると年初の800ドル近くから年末の600ドル割れまで徐々に下落していき、2014年はヨーロッパ有数の小麦生産国ウクライナの政情不安やアメリカ西海岸の港湾ストで700ドル前後まで急騰した時期があったものの、2015年になると500ドルを割り込む時期が長くなり、2016年に入って500ドル割れの水準が続いている。

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シカゴCBOT小麦先物の値動き

(出典:時事通信社)


 しかし、シカゴの先物価格が安くても、それはそのまま日本国内の小麦の価格には反映されない。半分以上を占める最大の輸入先アメリカの小麦はドル建てで取引されるので、輸入価格はドルと円の為替レートによって変動し、円安なら高く、円高なら安くなる。

 また、北米から日本に輸入するにはオレゴン州ポートランドやバンクーバーにある専用積出港まで運んで穀物運搬船に積み、広い太平洋を横断しなければならない。そのためシカゴの小麦先物価格の変動だけでなく、為替レート、貨物船運賃の相場の変動も、日本での小麦の価格に影響する。

 それらをもとに国内の輸入小麦の価格を決めているのは、カーギルのようなアメリカの穀物メジャーでも、総合商社の食料部門でも、日本製粉、日清製粉グループ本社、昭和産業のような製粉会社でもない。日本政府(農林水産省)である。

 なぜなら、「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」に基づいて、2007年4月から輸入小麦は全量を政府が買い上げ、「相場連動制」により年2回、4月と10月に改定される政府売渡価格で製粉会社に売り渡すという制度をとっているからである。

 民間ではなく政府が輸入する「国家貿易」なので関税はかからないが、「マークアップ」と呼ばれる買上価格と売渡価格の差額が実質的な関税とされる。

【次ページ】加工食品の価格は下がるのか?

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