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  • 2016/08/10 掲載

相次ぐ赤字ローカル線廃止、地方「切り捨て」の足音が聞こえる

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赤字ローカル線廃止の動きが全国で相次いでいる。北海道では、留萌線の一部が12月で廃止されるほか、JR北海道が大幅な路線縮小を関係自治体と協議する方針を示した。中国地方では、JR西日本が広島県と島根県を結ぶ三江線の廃止を近く正式発表するとみられる。地方の人口減少が急速に進んでいることなどから、島根県立大総合政策学部の西藤真一准教授(交通政策論)は「今後も赤字ローカル線の問題が浮上する」とみている。地方創生の時代に地方切り捨ての足音が聞こえる。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。


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JR北海道の増毛駅。留萌-増毛は12月に廃止となることが決まった

JR北海道は路線の抜本的見直しを計画

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 「すべての路線を維持したのでは経営破綻を避けられない。持続可能な交通体系を地域の皆さんと相談したい」。JR北海道の島田修社長は7月末、札幌市で記者会見し、鉄道事業を抜本的に見直す方針を明らかにした。

 JR北海道は近く、運行している14路線、約2,600キロのうち、単独で維持困難と判断した区間を関係自治体に提示する。そのうえで地域の公共交通維持に必要な対策を協議する方針だ。

 見直しの対象となる区間は明らかにしていないが、島田社長は会見で利用の少ない区間を対象とする見方を示唆した。運賃の引き上げなどで対応しきれない区間については、バスなど代替交通機関への転換もやむなしとしている。

 北海道は札幌圏を除き、全国を上回るハイペースで人口減少が進んでいる。このため、1975年の輸送密度(営業距離1キロ当たりの1日平均旅客輸送人員)を100として見ると、10分の1に落ち込んだ区間も出てきた。

 JR北海道が道主催の地域公共交通検討会議に提出した資料によると、2014年度の全14路線30区間はすべて赤字で、うち7路線10区間が輸送密度500人を下回った。輸送密度500人程度の区間では燃料費も賄えない。

JR北海道の主な線区別輸送密度と収支状況(2014年度)
線名・区間輸送密度
(人/キロ/日)
管理費含む営業損益
(百万円)
営業係数
(円)
留萌線留萌-増毛39▲2274554
札沼線医療大学-新十津川81▲3322162
石勝線新夕張-夕張117▲1821421
根室線富良野-新得155▲8921591
留萌線深川-留萌177▲6471508
日高線苫小牧-様似298▲15441179
宗谷線名寄-稚内405▲2544622
根室線釧路-根室436▲1000505
根室線滝川-富良野460▲1028953
釧網線東釧路-網走466▲1652594
室蘭線沼ノ端-岩見沢516▲11301011
函館線長万部-小樽675▲2067570
石北線上川-網走1051▲2907327
宗谷線旭川-名寄1512▲1919365
根室線帯広-釧路2259▲3234246
函館線函館-長万部3765▲4281194
函館線岩見沢-旭川9320▲2517143
出典:JR北海道「地域公共交通検討会議」提出資料

 JR北海道は運賃収入の低迷に加え、修繕費や安全対策費を先送りしてきたことが影響したため、2017年3月期の経常損益が175億円の赤字となる見込み。このまま全線を維持し続ければ、毎年200億円近い赤字が出る可能性がある。借入残高も2019年度には1,500億円に膨らむ見通しだ。

 赤字解消や借入金の返済、老朽化した橋の更新を考えると、年間200億円ほどの収支改善が必要になる。輸送密度2,000人未満の区間の赤字が全体で約200億円に達することから、JR北海道は輸送密度2,000人未満を維持困難な路線の目安と考えているもようだ。この場合、宗谷線など11路線が該当するという。

 北海道交通企画課は「赤字のすべてを線区の見直しで補おうとするのなら、北海道の交通ネットワークに与える影響はあまりにも大きい」と困惑している。

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JR北海道は全線が営業赤字、総額は約400億円にのぼるという(2014年度)
(写真:Cy Speed/flickr


ひと足早く留萌線の一部が12月に廃止

 路線見直しに先立ち、廃止が決まったのが、留萌市と増毛町を結ぶ留萌線の留萌-増毛間16.7キロ。JR北海道は既に両市町の同意を得て、鉄道事業廃止届を国土交通省北海道運輸局に届け出た。

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留萌線の一部が12月に廃止になる
(写真:Yuriko IKEDA/flickr


 同区間は故高倉健さん主演の東宝映画「駅 STATION」(1981年、降旗康男監督)のロケ地として知られるが、2014年度の輸送密度はわずか39人。100円の営業収益を上げるのに、4,554円もの経費がかかる。2014年度では約2億円の営業損失が出ていた。

 両市町は当初、廃止に強く抵抗していたが、JR北海道が増毛町に代替交通機関運用経費の一部負担や駅周辺整備事業への費用拠出を申し出るなどして両市町を説得、12月4日限りで幕を閉じることになった。

 増毛町は7月末現在の人口約4,600人。漁業が盛んな町だが、1970年に約1万1,000人を数えたのに、半分以下に落ち込んでいる。高齢化も深刻で町民のざっと4割が65歳以上の高齢者だ。留萌線は高齢者ら交通弱者の足になってきた。

 増毛町町民課は「廃止の受け入れは苦渋の選択で、今も残念でならない。今後は路線バスで町民の足を守っていきたい」と厳しい口調で語った。

【次ページ】JR西日本は三江線全線廃止を近く表明

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