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ドラマで、ゲームで、アニメで、漫画で見たことがある日本刀。なんとなくのイメージはあっても、材料、製作工程となると、想像もつかない。とはいえ、一時期テレビのバラエティ番組では、「日本刀対○○」といった企画が流行し、「ものとしての刀」「ものづくりの観点から考える刀」という切り口に注目が集まった。そこで、今回、『日本刀の科学』を著し、衝撃工学、熱応力の専門家である室蘭工業大学名誉教授の臺丸谷政志氏に、「日本刀の美しさ」の源泉を科学的観点から解説していただいた。
なぜ日本刀は身近な存在に感じられるのか
――日本刀について。
日本刀といえば、何となく身近な存在として感じている方も多いように思われます。映画やテレビドラマの時代劇は、日本刀なしでは成立しないでしょう。確かに、映像としては身近です。しかし、1876年に廃刀令が公布されてからすでに140年ほど経ており、愛刀家や真剣を用いた居合道などを実践されている方々などを別にすれば、一般的には遠い存在になっています。
――でも、日本刀にまつわる言葉は数多くありますね。
日本刀には1000年の歴史があり、日本文化に深く根付いています。ですから、私たちが特にそれをイメージせずとも、ごく自然に使う日本語の中に日本刀にまつわる言葉も多くあります。
たとえば「真剣勝負」「一刀両断」「単刀直入」「切羽詰まる」「鐔迫(つばぜ)り合い」「鎬(しのぎ)を削る」「反りが合わない」「折り紙付き」「助太刀」「両刀使い」「伝家の宝刀」など、枚挙にいとまがないほどです。これも、我々が日本刀を身近な存在として感じている一因かもしれません。
――そもそも「日本刀」の定義は?
「玉鋼(たまはがね)」および伝統的な「鍛冶・鍛錬法(かじ・たんれんほう)」によってつくられた刀剣類の総称が「日本刀」です。刀剣類には、太刀(たち)、刀(かたな)、脇差(わきざし)、短刀(たんとう)、剣(つるぎ・けん)、長巻(ながまき)、薙刀(なぎなた)、槍(やり)などがあり、太刀や刀の代名詞にもなっています。
図1のAの日本刀は「刀(打刀ともいう)」で、刀装のことを拵(こしらえ)といいます。江戸前期に作刀された寛文「新刀」と呼ばれる約400年前の比較的新しい刀です。慶長以前に作刀されたものを「古刀」といいます。Bは鞘(さや)を抜いた姿で、Cは刀身、目釘を抜いて分解した状態です。
刀匠(刀工)の仕事は刀身の製作で、刀刃の研ぎは研師(とぎし)、拵の刀装品などは、鞘師(さやし)、鐔師(つばし)、白銀師(しろがねし)、柄巻師(つかまきし)、塗師(ぬりし)などの専門職人の仕事になります。日本刀の鑑定や鑑賞は、普通、拵を外した刀身のみが対象になります。
武器としての"機能美"
――日本刀は本来、「武器」ですよね?
現在、日本刀は美術工芸品として、主に鑑賞の対象になっていますが、いうまでもなく本来は日本固有の武器です。日本刀の出現は平安中期といわれ、その製作技術は1000年におよぶ長い伝統をもち、鎬造り(しのぎづくり)の彎刀(わんとう)に代表されるように独自の形態と機能を備えた、我が国特有の武器です。
日本刀は武器ですが、その機能美も重要視され、時代とともにその社会的存在の意味も変遷してきました。江戸期には武器としての存在のみならず、社会的地位や身分を表す象徴的存在となり、一方で「武士の魂」「精神的な拠り所」といわれるように神聖視もされました。
【次ページ】科学的視点から見る日本刀の「強靭さ」と「美しさ」
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