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  • 2016/11/10 掲載

IoTの「マネタイズ方法」をガートナーが解説、「サービス売り」のその先が重要だ

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ガートナーでは、2020年にIoTのもたらす経済的な波及効果は1.9兆ドルになると予測している。内訳として一番大きいのは製造業で全体の15%、同等規模でヘルスケアが続き、さらにはこれまでまったくのアナログだった教育や農業にもその効果は広がっていく。ここで重要な点は、1つ1つの業界規模を議論することではなく、IoTにより産業の壁を超えてモノがつながり、それに伴って儲かる機会も膨大に増えていくということだ。IoT時代の新たな競争にどう立ち向かうべきかをガートナー コンサルティング シニア ディレクター 森 亮 氏が解説する。
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IoTは企業が取り組む必須事項だ

IoTに取り組まなければ既存の領域に留まることすら難しくなる

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 研究開発→設計→製造/組立→流通→販売…という製造業のバリューチェーンを考えるとき、良いものを作れば売れるという発想の中では、最初の研究開発フェーズの価値は相対的に高い。また製品が値引きされることなく、うまく宣伝して売り抜けることができれば、当然利ザヤは稼げる。後工程の販売フェーズの付加価値も高くなる。

 これに対して、標準化し、シンプルに効率よく作業を行うことで規模の経済性を追及し得る組立や流通のフェーズは、付加価値も下がってくる。

 つまり両端のプロセスは相対的に付加価値が高く、中間に位置するプロセスの付加価値は低い。いわゆる「スマイルカーブ」を描いている。

 しかし、現在のデジタル化時代では状況がかなり変わってきており、だんだん「笑えなく」なっている。販売、さらにはその先にあるサービスと呼ばれるプロセスの付加価値が大きく高まって、スマイルカーブが「ひきつった感じ」になってきているのだ。要は売った後で儲けようという世界である。

 こうしたところに手を打っていかなければ、今後生き残っていくことは非常に厳しくなる。ガートナーでは、2018年までにIoTへの取り組みに着手できない企業の大半は、既存のビジネス領域に留まることすら難しくなると予測している。

IoTで目指すのは「サービス売り」ではない

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GEの変革を進めるジェフリー・イメルトCEO
 過去から現在に至るまで、販売後の保守やメンテナンスで差別化して稼ぐというモデルがある。そこから一歩進んで、今ではモノやハードウェアではなくサービスで稼ぐという動きも出てきている。しかしその理解だけで止まっていてはいけない。

 たとえば米GEは、ソフトウェアとアナリティクスの企業に変革すると宣言している。2020年のデジタルの売上目標として、売上比15%に相当する1.8兆円という非常に大きな数字を掲げており、デジタルIoTの世界のトップランナーだと認識されている。

 彼らは自分たちが作った航空機エンジンにセンサーを付けて、稼働データを収集/分析することで、必要最小限のメンテナンス頻度を明らかにし、顧客である航空会社のコスト削減に貢献したが、それだけで終わりにせず、航空会社の運行管理の最適化という領域にまで踏み込んだ。つまり顧客のビジネス成果を、どれだけ向上させることができるのかを考えているのである。

 もはやサービス売りではなく「成果売り」だ。この成果売りの先には、現在、将来の社会問題に挑み、それを解決することで儲けていくという方向性もあるだろう。

 IoTの取り組みでは、より顧客に目を向けなければならなくなってくる。IoTへの取り組みを成功へと導いていくためには、発想の転換が必要だ。サービス化のところで立ち止まっていてはいけない。

顧客視点で、より高次の価値提案を考える

 IoTで儲けることを考えた時には、「顧客のビジネスがいかによくなるか」を突き詰めていく必要がある。そうすることで顧客への価値提案も、より高次になっていく。

 たとえば単にこの機能を自動化したとか、品質を高めたということではなく、それら機能や品質の組み合わせによって生み出される価値、たとえば安心・安全、あるいは病気リスクの低減、より健やかな暮らしを提供するといったことだ。

 先のGEの話なら、航空会社の運行管理を最適化することで、顧客のさらにその先にいる消費者に、より便利で快適な搭乗体験を提供するという視点だ。顧客、顧客の顧客というように「顧客視点」でつながっていくからこそ、ビジネスになる。

 こうした顧客視点での一連のつながり、あるいは因果関係が見えていなければ、サービス化のレベルで止まってしまう。

 しかしデジタル戦略を考えようとしても、そう簡単に進むものではない。そこで、まずはビューの統一が必要だ。経営層からマネジメント層、現場までを含めて、デジタル化、IoTの本質とは何か、やらなければならないことは何なのかの認識や、使用する言葉のすり合わせをきちんとしておく必要がある。

 これができているかいないかで、その後の意思決定の進み方がまったく違う。ここがクリアできた企業は、次にデジタル戦略の策定という段階に入り、そして動きの速い国内企業では、既にその次の実行段階にまで入っている。

 参考までにこうした取り組みは、テクノロジーの調査研究部門とIT企画戦略を立案する部門の仲がいい企業が、スムースに進みやすい。

【次ページ】IoTの基本戦略を考えるための5つの技術レイヤー

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