- 会員限定
- 2018/02/16 掲載
リクルート大久保幸夫氏「生産性を妨げるのは、マネジャー」 その真意は?
生産性向上を実現するモデル図、働き方改革とマネジメントは不可分
リクルート主催「一歩先のダイバーシティへ。マネジメント層に求められることとは」に登壇した大久保氏は冒頭、「労働生産性」を中心とするモデル図について説明した。モデル図を構成するのは「ダイバーシティ経営」「働き方改革」「マネジメント改革」「プロフェッショナル人材育成」の4つである(図1)。
「ダイバーシティ経営」が進むと、多様な人材が働きやすくならないといけないので、必然的に「働き方改革」が起こる。しかし、単に働き方改革といってもルールを変えるだけでは実態を伴わない。マネジャーが無駄・無理をなくすように仕事の割り当て方を見直し、プロセスよりも成果を重視するスタイルに変わる「マネジメント改革」をする必要がある。
「マネジメント改革」をすると、自律的な働きが促され、高度な専門性とリーダーシップを持つ「プロフェッショナル人材」が育成されやすくなる。そのような多様な属性を持つプロが組織にいることで、本当の意味でのダイバーシティにつながっていくというわけだ。
そして、この相関はすべて「労働生産性」につながると大久保氏は言う。
「『働き方改革』や『マネジメント改革』は効率を高めていく力を持ちます。そして「ダイバーシティ経営」や『プロフェッショナル人材育成』は革新的な成果を生みイノベーションを推進する効果を持ちます。この2つの角度から労働生産性を高めるという因果関係が、統計的に証明されているのです」(大久保氏)
「労働生産性」「ダイバーシティ経営」「働き方改革」「マネジメント改革」「プロフェッショナル人材育成」からなるモデル図がスムーズに回転することが、そもそも働き方改革、ダイバーシティ経営の基本発想だという。
では、なぜこれができないのか。それは、組織のマネジャーが流れを止めるボトルネックになっているからだと大久保氏は指摘する。
多様な人材のマネジメントにストレスを抱えるマネジャーたち
ダイバーシティが浸透してきているが、それはすなわち、現場のマネジャーに多様な人材をマネジメントする力が求められるということ。マネジャーにとって、それは少なくないストレスになる。大久保氏はリクルートワークス研究所が実施した「多様な部下のマネジメント経験」について調査結果を示した(図2)。比率が大きいものから「非正規雇用者のマネジメント経験(70.5%)」「育児両立(55.8%)」「60歳以上(48.9%)」と順に続く。マネジメント経験の比率が小さいものでは、発達障害を抱えた部下(8.1%)やLGBTs(2.0%)などが見られる。「LGBTsの経験はおそらく今後急速に広がっていくのではないか」と大久保氏。
「以前はマネジメントといっても『なんとなく』しているケースがあったと思います。あるいは、自分の上司のマネジメントを踏襲することも多かったでしょう。ただ、それは、極めて同一性の高い人々が新卒で入って、定年退職まで長く務めることが前提。今のようにメンバーが多様化してくると、新たなスキルやテクニックがマネジメントに求められます」(大久保氏)
マネジメントが生産性向上のボトルネックになるのは、それだけが理由ではない。数年前と比べて明らかに増大した業務量によりマネジャーに大きな負荷がかかり、それが長時間労働およびマネジメントの不調につながっているのだ(図3)。
「結果として、マネジャー自身が体調不良や高ストレス状態になっているのです。本来は組織のそういう問題を解決していってほしいと思っているにもかかわらず」と大久保氏。
このような、現代のマネジャーを取り巻く問題を解決するためのカギとなるのは、仕事の割り振り方――「ジョブ・アサインメント」と、多様な人材を活かす「インクルージョンマネジメント」の2つである。
【次ページ】「仕事の割り振り・指示」に内包されている、実に多様な要素とは
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR