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  • 2018/05/17 掲載

ノーベル賞モハメド・ユヌス氏が力説「人間は無限の創造力を備えている」

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経済活動を通じて貧困や高齢化社会といった社会的課題の解決に取り組む「ソーシャルビジネス」に注目が集まる。そんな中、ノーベル平和賞受賞者ムハマド・ユヌス氏が来日。自身がノーベル平和賞を受賞するきかっけとなったソーシャルビジネス「グラミン銀行」を始めたいきさつや、金融業の根幹にかかわる「信用」の意味、そして事業を始める心得を語った。

執筆:フリーライター/エディター 大内孝子

執筆:フリーライター/エディター 大内孝子

主に技術系の書籍を中心に企画・編集に携わる。2013年よりフリーランスで活動をはじめる。IT関連の技術・トピックから、デバイス、ツールキット、デジタルファブまで幅広く執筆活動を行う。makezine.jpにてハードウェアスタートアップ関連のインタビューを、livedoorニュースにてニュースコラムを好評連載中。CodeIQ MAGAZINEにも寄稿。著書に『ハッカソンの作り方』(BNN新社)、共編著に『オウンドメディアのつくりかた』(BNN新社)および『エンジニアのためのデザイン思考入門』(翔泳社)がある。

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ムハマド・ユヌス氏

ユヌス氏にノーベル賞をもたらした「グラミン銀行」

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 日本のお笑いの老舗、吉本興業がノーベル平和賞受賞者ムハマド・ユヌス氏監修のもと「ユヌス・よしもとソーシャルアクション(yySA)」を立ち上げた。これに関連し、今回、ユヌス氏が来日した。

 バングラデシュの経済学者で実業家でもあるユヌス氏は、1983年に貧困層を対象にした無担保融資を行うグラミン銀行を創設し、多くの人々の自立を支援したことで知られる。さらに、バングラデシュの貧困軽減に大きく貢献した功績により、2006年にノーベル平和賞を贈られている。

 おなかがすいた人がいれば、まず食べ物や飲み物を与えるのが一般的な考え方だ。しかし、ユヌス氏は「そうではないだろう」と考えた。お腹に入ったものはもう出てこない。食べてしまえばそれで終わりだ。それで、本当の解決になるのか、と。

 そこで、貧しい人たちにお金を貸すことを考えたが、「そんなことは不可能だ」と言われたという。ユヌス氏が自分のポケットマネーで貧しい人たちにお金を貸すことを始めたのはそうした経緯がある。

 自分の資金から始めたので、借り主は行政などに申請書を提出する必要もない。抵当も担保もいらない。そもそも貧しい人は抵当に当てるものを持っていない。要は「信頼」だけで成り立つビジネスだ。これがマイクロクレジットと呼ばれる、低金利・無担保融資のスタートだった。

 多くの人が「うまくいくはずがない」と言った。しかし結果として、この試みはうまくいった。お金が戻ってきたのだ。1つの村、2つの村と実績を上げていき、地区全体でやってみようということになった。村から村へ渡って、そこで銀行を作っていった。

「自分の人生もどうしたらいいかわからないでいるような貧しい女性にお金を貸したんです。すると、驚くことに、彼女たちが小さなビジネスを始めたんです。そして、きちんと返金してくれました。また必要なお金を借り、どんどんビジネスを大きくしていったのです。これがグラミン銀行のストーリーです。今、グラミン銀行には世界中で900万人の借り主がいます」(ユヌス氏)

 2001年には米国にも広がり、現在、ニューヨークやロサンゼルス、サンフランシスコなど20の支店があり、10万人以上の借り主がいるという。

「米国には貧しい人がいないからうまくいかないと言われましたが、それは気づかれていなかっただけ。たとえばハウスクリーニングの会社で働いていたが失業してしまった女性は、グラミン銀行でお金を借りて必要な道具を買って自分でサービスを始めました。また、今まで家庭の中にこもって仕事がなかった人も、たとえばケーキを作ったり、お菓子を作ったり、このローンを借りることで、商品として家で作ったものを売ることができます。そして、うまく回れば人を雇用して、ビジネスを立ち上げるわけです」(ユヌス氏)

資本主義の「信用」とユヌス氏の「信用」

 ソーシャルビジネスというと、貧困層にビジネスのチャンスを与えるという点が取りざたされがちが、本当の意義は、個々人が自分の可能性を社会の中で発揮できるということにある。

 ユヌス氏によれば、人の可能性は時と場所によって無限大だ。たとえば、ペットの世話をすることは、バングラデシュではビジネスにならないが、ニューヨークではニーズの高いビジネスだ。

「全世界の人口の半分は底辺にいて、銀行とはまるで無縁に生きています。こうした人たちは高利貸、質屋からお金を借りています。もっともお金を必要としている人は銀行の融資の対象になっていないのです。だからこそ、私たちはそういう人たちを対象にビジネスを始めたんです」(ユヌス氏)

 これまでの資本主義でいうところの「信用」と、ユヌス氏がいう「信用」は少し異なる。これまで重視されてきた「信用」は借り主の実績や経験だが、ユヌス氏が「信用」するのは、借り主の持つ未来の可能性だ。

【次ページ】「職を探す」のは陳腐、「職を作る」があるべき姿

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