ボッシュが開始した電動バイクのシェアリング「Coup」
都市の交通が悩みの種となっているのは、全世界で共通する現象だ。運転手が交通渋滞で足止めされている時間を年間で算出すると、モスクワが91時間で欧州1位、ついでロンドンが73時間、パリが65時間と続く。非生産的な時間は都市の経済を圧迫し、また、労働者の生活の質も下げてしまう。
交通問題は、今後、悪化の一途を辿る可能性さえある。都市部への人口集中が続いているため、より多くの人が限られた道路と駐車場を利用するようになる。
世界中で都市部に住む人口の割合は、1970年には30%だったのが、2014年には54%、2050年には66%に達するとデロイトは予測がしている。さらに、過剰な自動車利用は環境問題も引き起こすため、欧州の主要都市では、中心地への自動車乗り入れを規制する動きも増えてきた。
そこで、小回りが利き、かつ環境に優しい交通手段として注目されているのが、電動バイクのシェアリングサービス「Coup」だ。自動車部品大手ボッシュが子会社として設立した企業で、ボッシュの本社があるゲルリンゲンの他、パリ、ベルリン、マドリードと欧州3国の首都にサービスを展開した。
どこでも乗り捨て、使った分だけ支払うサービス
小型の電動バイクをいつでも、どこでも、好きなときに乗れる同サービスの魅力は、そのシンプルさだ。バイクの免許を持っていれば、アプリを登録するだけで利用を開始できる。鍵もカードも必要ない。自分の近くにあるバイクをアプリで探し、バイクのGoボタンを押せば運転を開始できる。アプリとバイクが通信し、自動的に認証を行う。
シート内にはヘルメットが用意されているので、自分で準備するものはない。事故が起きた際の保険も含まれている。利用を終了する際も、アプリで操作が完了する。乗り捨て型なので、降りる場所を選ぶ必要がない。電動バイクの充電はCoup側が担当するので、利用者は充電を気にしなくて済む。
人口密度の高い欧州首都では、十分な数の電動バイクが導入された。ベルリンは1000台、パリは600台、マドリードは850台が導入され、必要なときにはバイクが見つけられる環境が整備されている。
利用料金は、使った分だけ支払う従量課金制になっている。ベルリンの場合、始めの30分は3ユーロ(約370円)で、その後、10分ごとに1ユーロが追加される。1日(午前7時~午後7時)使う場合は20ユーロ(約2500円)、一晩(午後7時~午前7時)使う場合は10ユーロ(約1250円)といったプランもある。料金や規約が都市によって若干異なるが、基本的な仕組みは共通だ。
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