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  • 2019/02/28

ソフトバンクが巨額出資、物流テックの「フレックスポート(Flexport)」が注目されるワケ

国際貿易は17兆ドルを超える産業であり、世界経済を支えている。しかし、その手続きは、いまだに紙ベースであり、煩雑な手作業はミスを生みやすい。荷主にとっては時間やコストの面で透明性が低いという問題が指摘されていた。この規制の厳しい物流業界にデジタル化をもたらそうとするのが物流テックの米スタートアップ企業「フレックスポート(Flexport)」だ。その同社が今、ソフトバンク ビジョンファンド(SVF)などから10億円ドルの出資を受けたと報道され、一躍脚光を浴びている。いったいなぜ注目を集めているのだろうか。

佐藤 隆之

佐藤 隆之

Mint Labs製品開発部長。1981年栃木県生まれ。2006年東京大学大学院工学系研究科修了。日本アイ・ビー・エムにてITコンサルタント及びソフトウェア開発者として勤務した後、ESADE Business SchoolにてMBA(経営学修士)を取得。現在は、スペイン・バルセロナにある医療系ベンチャー企業の経営管理・製品開発を行うと共に、IT・経営・社会貢献にまたがる課題に係るコンサルティング活動を実施。Twitterアカウントは@takayukisato624。ビジネスモデルや海外での働き方に関するブログ「CTO for good」http://ctoforgood.com/を運営。

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フレックスポート(Flexport)は何が画期的なのか?
(© THATREE - Fotolia)


輸送仲介業者に、フレックスポートが殴り込みをかける

 グローバル化の波に乗り、国際物流は世界経済に欠かせないものとなった。賃金や物価の安い国で生産した商品に付加価値をつけ、先進国で販売するビジネスモデルは多くの商品で採用されている。Eコマースの普及により、国をまたがった売買も容易になった。

 WTOの調査では、全世界の輸出額は合計で17兆7,300億ドルを超え、2017年の段階で前年比11%増加となっている。また、B2B向けEコマースは、B2Cの6倍である23兆9,000億ドル市場規模があり、消費者が意識しないところでも、膨大な取り引きが行われている。

 国をまたがった商品の輸送は、極めて複雑なプロセスによって成り立つ。たとえば、中国の工場から米国の量販店に品物を届けるとしよう。中国の工場からトラックで港まで運び、貨物船に積み込む。米国に着いた後は、再度トラックで卸売業者へ届け、さらに、小売店へと輸送される。その間、税関の手続きが滞りなく行われなければ、積み荷は届かない。そのときの状況により最適な経路や輸送方法の選択が必要になる。

 この煩雑なプロセスを代行するため、フレイト・フォワーダー(貨物利用運送業者)と言われる代理店業者が存在している。荷主から商品を預かり、キャリア(船舶・交通・鉄道・トラック等)を仲介して、目的地まで商品を届ける役目を担う。日本では日本通運・近鉄エクスプレス・郵船ロジスティクスが有名だ。また、海外ではDHLグローバル・フォワーディング、キューネ・アンド・ナーゲル、DBシェンカーといった企業が高いシェアを占める。

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 規制が厳しいこの国際物流の問題は、紙ベースの処理が多く、効率化が進んでいない点にある。複雑で頻繁に変更のある国際的な取り決めに従って、膨大な貨物を手作業で処理するのは困難であり、間違いが起きやすい。荷主からすると、その複雑さはコストに転嫁されているのに加え、荷物がどこにあるのか、税関で問題が起きていないかといった透明性に欠ける点が指摘されている。書類のやり取りは、いまだにFAXでやり取りされ、フレイト・フォワーダーにかかる電話の約4割は、輸送貨物に関する顧客からの問い合わせになっている。

 年間10億ドル以上を売り上げているフレイト・フォワーダー25社はすべて、1994年以前、つまり、インターネットが普及する前に設立されているというのは象徴的だ。現代の情報技術を想定したビジネスモデルになっておらず、規制の壁もあり、デジタル化が行われてこなかったのだ。

 デジタル化が求められる国際物流に真っ向から挑むのが米国生まれのベンチャー企業フレックスポートだ。フレックスポートは「シリコンバレー流」に従い、ソフトウェアによって顧客にとっての利便性を追求する。「顧客が発送した荷物の位置をリアルタイムに把握できる」「費用を事前に確認できる」「輸送経路の最適化に関する情報を提供し、船便と航空便の決定を支援する」など、紙ベースのプロセスでは実現できなかった顧客ニーズがオンライン上で提供されるようになる。

フレックスポートが提供するオンラインサービス

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 フレックスポートに輸送を依頼した顧客は、オンラインサービスにログインすると集約されたすべての情報が閲覧できる。キャリアへのメッセージ送信や請求書の発行など、煩雑な処理が簡単に行えるのがメリットだ。

 小口貨物を船で送る場合、LCL(Less than Container Load)と呼ばれる、複数の荷主からの荷物を1つのコンテナに積んで送る方法がとられる。フレックスポートでは、事前にLCLによって輸送コストを抑える提案を行い、荷主にとって最適な輸送方法を提供する。また、複数の目的地へ配送する場合でも、フレックスポートが独自に保有する倉庫で管理し、間違いなく配送が行えるようにしている。

 税関手続きは国際輸送にとって最も難解なプロセスの1つであるため、フレックスポートはライセンスを持った社員によって、その支援サービスを行っている。Web画面から必要な書類を作成するよう通知し、手続きが滞りなく進むよう助ける。

 フレックスポートの特徴として、貨物輸送に加え、金融サービスを提供している点が挙げられる。

 たとえば、製造業の顧客であれば、まず、工場に生産にかかる費用を支払った後、数か月かけて生産・輸送・販売が行われる。販売した商品の代金が支払われるまで、かなりの時間差がある。そのためこれまで、この間の資金繰りを支えるため、輸出入を行う間のつなぎ融資としてトレード・ファイナンス(貿易金融)が、主に大手銀行によって提供されてきた。

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 8割以上の輸出入がトレード・ファイナンスを使用している中、フレイト・フォワーダーであるフレックスポートが融資を行うのは画期的なことだ。フレックスポートは、どのような商品をどのように輸送しているかという情報を保持しているので、詳細なリスク評価ができる。大手銀行が審査に1~2か月かかるのに対し、フレックスポートはより短い期間で審査を行い、顧客がビジネス機会を逃さないよう支援する。

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