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  • 2019/03/29

精神疾患をゲームで治す?「アキリ(Akili)」のデジタル療法はココがスゴイ

スマホのアプリを使って医学的な治療効果を目指す「デジタル療法」に注目が集まっている。ゲームに患者を没頭させながら、認知的機能を鍛えるタスクを課し、精神疾患の症状改善を目指す。開発しているのは米ベンチャー企業アキリ インタラクティブ ラブズ(Akili Interactive Labs、以下アキリ)だ。アキリのゲームは、従来の医薬品と同様、臨床試験を通じ、その有効性・安全性の確認検査が行われている。塩野義製薬とのパートナーシップも発表した同社のビジネスがどのような内容なのか紐解いてみよう。

佐藤 隆之

佐藤 隆之

Mint Labs製品開発部長。1981年栃木県生まれ。2006年東京大学大学院工学系研究科修了。日本アイ・ビー・エムにてITコンサルタント及びソフトウェア開発者として勤務した後、ESADE Business SchoolにてMBA(経営学修士)を取得。現在は、スペイン・バルセロナにある医療系ベンチャー企業の経営管理・製品開発を行うと共に、IT・経営・社会貢献にまたがる課題に係るコンサルティング活動を実施。Twitterアカウントは@takayukisato624。ビジネスモデルや海外での働き方に関するブログ「CTO for good」http://ctoforgood.com/を運営。

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ゲームで精神疾患は本当に治せるのか?
(© Elnur - Fotolia)

デジタル療法とは「何を」「どうする」のか

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 新薬の開発費用は年を追うごとに高額になっている。有効な治療法がない難病がいまだに多数存在する中、その開発費用は製薬会社にとって大きな負担となり、ひいては患者を含めた医療システム全体の課題である。新薬を市場に出すためには、平均して14年間かかり、約25億ドルが必要とされる。大規模な臨床試験を行ってから効能が確認されないなど、期待された治療法が予想どおりの成果をもたらさないリスクが高いからだ。

 特に、脳神経系の病気や精神疾患について治療法を確立するのは難易度が高い。MRI(Magnetic Resonance Imaging)などの測定手法が開発された今でも、脳については説明できない事象が多い。臨床試験においても、効果の有無が被験者の主観的な評価による場合が多いため、多数の患者で試験を行ってから効能が確認できないケースが発生してしまう。

 ADHD(注意欠陥多動性障害)をはじめとした精神疾患の治療では、主に心理療法と薬物療法が用いられる。心理療法ではカウンセリングなどの手法を通じて、患者の考え方・捉え方に影響を及ぼし、症状の緩和を目指す。また、薬物療法では脳内の化学物質に作用して治療を図る。さらに、患者に適した生活環境・労働環境を整えるサポートも、治療プログラムの一部となる。

 近年ではアプリやWebサービスの形態で治療を行う「デジタル療法」が開発されてきた。デジタル療法は、疾病や健康障害を招く習慣を変え、病気の治療に貢献することを目的とする。FDA(米国食品医薬品局)などに医薬品としての認可を受け、医師によって処方される点で、そのほかの健康管理アプリとは一線を画す。医学的な根拠に基づき、個人ごとの行動療法を提供する。  

 「ゲームが薬になる」と聞くと、意外に思われるかもしれない。しかし、医学の分野でもゲーム的な要素を活用して、ユーザーの行動変容を促す「ゲーミフィケーション」は注目されている。病みつきになるような双方向性のあるアクションや、ポイントやレベルといった進捗を可視化し、利用を促進する仕掛けは医学にも適用可能だ。

ADHDを治療するアクションゲーム?

 アキリは、アクションゲームを開発し、医学的な検証および利用を目指しているベンチャー企業である。同社が提供するゲームの画面は、一見普通のゲームに見えるが、精神疾患によって弱まった認知機能を強化する仕掛けを組み入れている。

 たとえば、ADHDは複数の刺激を並列して処理する(マルチタスク)に問題を抱える場合があるが、アキリのゲームを通じて、注意や作業記憶を司る前頭葉を刺激し、症状の改善を図る、いわゆる「脳トレ」の要領で、ゲームを通じ認知機能を向上させる。

 さらに、アキリはゲーム画面だけではなく、総合的な治療ソリューションとしてソフトウェアの開発を行っている。具体的には、ゲームを楽しむ患者の行動データを分析し、医師がその経過を判断できる機能がある。

 医薬品などと同等に扱われるため、アキリのゲームは臨床試験を実施している。ADHD向けのゲームAKL-T01は、複数拠点での大規模な臨床試験を実施し、FDAからの認可を求めている。ほかにもうつ病・自閉症・多発性硬化症の改善に向けたゲームも臨床試験を開始した。

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アキリのビジネスモデル

 実際、2019年3月11日には、塩野義製薬との戦略的パートナーシップを発表した。アキリがゲームおよびプラットフォームの開発を行い、塩野義製薬はADHDと自閉症のゲームについて、日本と台湾での規制対応と販売を担当する。今後の開発と販売によって、塩野義は1億ドル以上をアキリに支払う。ベンチャー企業であるアキリにとって大きな販売機会の拡大であり、一方、塩野義にとっては先進的なデジタル療法への大胆な投資となる。

【次ページ】デジタル療法が保険適用治療になる(かもしれない)理由

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