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  • 2018/11/27

東京の財源がまた地方へ、「財政格差」でわかる日本の“いびつさ”

その差、およそ50倍

東京など大都市と地方の税収格差是正を検討してきた総務省有識者検討会が、地方法人2税のうち、法人事業税の一部をいったん国税化し、地方自治体に再配分するとした報告書を石田真敏総務相に提出した。再配分の規模は盛り込まれず、年末の与党税制調査会に委ねられるが、東京都は税源移転が日本のプラスにならないと反発している。地方は急激な人口減少と高齢化社会の進行で自治体機能の維持が困難になりつつある。北海学園大経済学部の西村宣彦教授(地方財政論)は「地方創生を国策として進めている最中であり、多様な地域の存続可能性を高めるために、ある程度の格差是正を行うのは当然だ」とみている。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。

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2017年3月から通行止めが続く和歌山県田辺市の秋津橋。老朽化した橋の維持が難しいほど地方の財政は危機に瀕している
(写真:筆者撮影)

改修できない橋や道路があちこちに

 和歌山県南部の中心都市である田辺市。市中心部のJR紀伊田辺駅から北へ約15分歩いた秋津町で、住民の生活道となってきた橋が2017年3月から通行止めになっている。市に予算がなく、架け替えも補修もできないからだ。

 この橋は右会津川に架かる秋津橋で、延長60メートル、幅5.6メートル。1971年に架けられたが、安全点検で橋脚の亀裂や鉄筋の露出などが見つかり、危険と判断された。本来なら架け替えればいいのだが、市の予算にそんな余裕はない。撤去方針を打ち出したところ、住民から待ったがかかり、通行を遮断して放置されている。

 市は県内第2の都市だが、10月末現在の人口が約7万4,000人。1985年の8万8,000人から1万4,000人も減った。人口減少は税収減となって財政にはね返る。市土木課は「生活道を手放したくない住民の気持ちは分かるが、老朽化した橋を維持できない」と頭を痛めている。

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 西日本豪雨で被害が集中した兵庫県宍粟市では、山間の一宮町河原田地区で阿舎利集落が消滅の危機に直面している。集落には1世帯2人が暮らしてきたが、今冬は河原田地区の中心部で暮らしている。集落に通じる唯一の市道が一部崩落したためだ。

 行政はかつて、どんな山奥の集落でも住人がいる限り、インフラを整備してきた。しかし、財源不足で自治体の力が削られ、手に負えない部分が広がろうとしている。市も復旧に手をこまねいていたところ、最後の世帯が集落を出た。

 市一宮市民局は「予算が潤沢なら、すぐに工事に着手できたかもしれない。今は財政が厳しい」とくちびるをかむ。

 地方の自治体は今、財源不足に悲鳴を上げている。何らかの措置が施されなければ、行政サービスがストップしかねない瀬戸際に追い込まれているところも少なくない。

総務省検討会の方針に東京都が強く反発

 総務省検討会の報告書は、こうした地方の厳しい財政状況を打開するために、まとめられた。地方法人2税の法人事業税、法人住民税のうち、法人事業税の一部をいったん国税化し、地方に再配分するとした内容だ。

 約40兆円ある地方税の中で地方法人2税は6兆円程度を占めるが、企業が集中する大都市圏に偏っている。住民1人当たりの税収額の格差は、最大の東京都と最少の奈良県で6倍の開きがある。

政府は過去に繰り返し、法人2税の一部を国税化し、地方に再配分してきた。2008年度の税制改正で法人事業税、2014年度の改正で法人住民税が対象となり、2018年度は2兆7,000億円が国税になっている。

 2016年度の税制改正では、法人事業税の再配分を廃止するとともに、法人住民税の国税化枠を拡大することが決まっていた。しかし、税収格差が是正し切れないとして2019年10月の消費増税に合わせて法人事業税の国税化分を事実上、存続させることに方針転換した。

 これに対し、財源を狙い撃ちされた形の東京都は反発を強めている。都財務局は総務省検討会が今回の方針を決めた直後に「地方法人課税の偏在是正措置に関する見解」を発表し、反対の意向をあらためて示した。

 東京からの税源移転が日本の経済成長にマイナスで、偏在是正措置では地方の自治体の救済策にならないというのが主な理由。都の有識者会議も10月末、地方税の拡充を求める報告書をまとめ、政府の取り組みを批判している。

 小池百合子都知事は記者会見で「地方財源そのものが全体的に不足している。税源格差の是正は国から地方へ税源移譲する中で進めるべきものだ」と訴えた。さらに、松井一郎大阪府知事と会談し、政府方針への反対で共同歩調を取ることも確認している。

 都は今後、与党税制調査会などに働きかけを強める方針だ。しかし、全国知事会が地方法人課税について「新たな偏在是正措置を講じるべきだ」と主張するなど、都会と地方の対立の構図も色濃くなっている。

【次ページ】一極集中で広がる一方の東京都と地方の財政格差

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