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  • 2019/04/08 掲載

岡田淳弁護士が語る「知財・データ戦略とプラットフォーム活用」

IVIシンポジウム2019 -Spring- レポート

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今、データ活用を巡って、ルールを整備する動きが活発化しています。個人情報やプライバシー情報など、保護するべきものは適切なルールで規制する一方で、利活用のために規制緩和をする動きも進展しています。こうしたデジタル戦略において欠かせない知財・データを巡る状況について、一般社団法人インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ主催「IVIシンポジウム2019 -Spring-」で講演した岡田淳弁護士の講演の模様をお伝えします。

東芝デジタルソリューションズ 福本 勲

東芝デジタルソリューションズ 福本 勲

東芝デジタルソリューションズ ICTソリューション事業部 担当部長
東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター 参事
中小企業診断士、PMP(Project Management Professional)
1990年3月 早稲田大学大学院修士課程(機械工学)修了。1990年に東芝に入社後、製造業向けSCM、ERP、CRMなどのソリューション事業立ち上げやマーケティングに携わり、現在はインダストリアルIoT、デジタル事業の企画・マーケティング・エバンジェリスト活動などを担うとともに、オウンドメディア「DiGiTAL CONVENTiON」の編集長をつとめる。2015年よりインダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)正会員となり、教育普及委員会副委員長、エバンジェリストなどをつとめる。その他、複数の団体で委員などをつとめている。主な著書に『デジタル・プラットフォーム解体新書』『デジタルファースト・ソサエティ』(いずれも共著)がある。その他Webコラムなどの執筆や講演など多数。

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IVIシンポジウム2019 -Spring- の様子
(写真:筆者撮影)

オープン化デジタル時代における、知財・データ戦略とプラットフォーム活用

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 2019年6月から設立5年目を迎える、一般社団法人インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)は、2019年3月14-15日に新宿京王プラザホテルにて2018年度の活動の総括として「IVIシンポジウム2019 -Spring- ~スマートシンキングが拓くものづくりの未来~」を開催しました。

 シンポジウムの初日は、経済産業省 製造産業局 上田洋二審議官による来賓あいさつ、岡田淳弁護士による招待講演、世界経済フォーラム(WEF) 第4次産業革命日本センター 須賀千鶴センター長による海外トレンド紹介、地域セミナーおよび各地域の実証実験結果を表彰する「地域アワード」、先進研究分科会の報告のほか、産業データ共有促進事業費補助金「製造プラットフォームオープン連携事業」に関するパネルディスカッションなどが行われました。

 また、IVI 西岡靖之理事長(法政大学 教授)からは、オピニオンとして「IVIM~スマートな組織の思考法 -つながるものづくりのメカニズム-」と題した講演がなされています。

 今回はこのうち、森・濱田松本法律事務所 弁護士・ニューヨーク州弁護士 岡田淳 氏による招待講演の内容を紹介します。

 岡田氏は経済産業省「2017年度(平成29年度) 産業データ共有促進事業費補助金 審査委員会」委員、東京大学 政策ビジョン研究センター 客員研究員などを務められています。本シンポジウムでは、「オープン化デジタル時代における、知財・データ戦略とプラットフォーム活用」と題して講演されました。

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森・濱田松本法律事務所 弁護士・ニューヨーク州弁護士 岡田淳 氏
(写真:筆者撮影)

 社会環境の変化として、第4次産業革命のもとで、IoTやAIなどの情報技術が爆発的に発展したことが挙げられます。企業の競争力の源泉は「データ」やその「分析方法」、およびこれらを活用した「ビジネスモデル」へ移り変わりつつあります。

 この競争力の源泉であるデータを囲い込もうとする動きが起きていますが、これには企業によるものと国によるものがあります。そのため、産業データ、パーソナルデータそれぞれで、データ保護、利活用を規制する法制度、ガイドがあります。

 このうち、企業によるデータの囲い込みには、競争力確保のため、可能な限り多くのデータを取得し、排他的に支配することで、サービスの付加価値や競争力を高めようとする考えがあります。

 もう一方の国によるデータの囲い込み(データ・ローカライゼーション)については、欧州などでは越境データの流通規制が広がっています。これは、プライバシー保護、自国内の産業保護、安全保障の確保、法執行/犯罪捜査などさまざまな動機・背景に基づきます。

 こういった囲い込みの動きと同時に、データを単に保有するだけでは意味がなく、共有・開放することがイノベーションをもたらす側面もあります。事業者や業界を超えたデータの利活用が付加価値を増大させ、「規模の経済」や「範囲の経済」をもたらすというものです。

 そのため、「オープン&クローズ戦略」も多様化していきます。単純に公開か秘匿かという選択ではなく、意志を持った一定範囲での共有が重要になっているのです。

安心してデータを利活用できるための、法制度設計

 データ戦略においては、デジタル専制主義・デジタル独占社会を実現するのか、それを回避していくのかという岐路にあります。

 インクルーシブな社会(あらゆる人が孤立したり、排除されたりしないよう援護し、社会の構成員として包み、支え合う社会のこと)が言われますが、回避の道を選び、個の多様化を活力として発展する社会、格差の解消やすべての人が意欲を持って参加する社会を実現することが必要です。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)を通じて、競争の主戦場は変化しています。現在はインフラのレベルでは協調・相互活用を行い、上位のビジネスサービスのレベルで競争をするといったレイヤー分けが進んでいます。

 このような時代においては、安心してデータを利活用できるための法制度設計が必要不可欠です。データの利活用と保護は相互補完的に機能します。データは容易に複製可能であることから、デジタル化が営業秘密やノウハウの社外流出や、個人のプライバシー情報侵害をもたらすリスクもあるのです。

不正競争防止法の改正

 法的には、従来は価値あるデータであっても、特許法、著作権法の対象とはならないことが多く、不正競争防止法の営業秘密に該当しないことが多いという課題がありました。2018年の不正競争防止法の改正により、これらの課題の解決をはかっています。

 従来の営業秘密と著作権による保護に加え、価値あるデータの一定範囲での共有について、悪性の高い不正利用を規制(不正取得・不正使用)するとともに、「限定提供データ」に関する指針(ガイドライン)が2019年1月に公表され、7月に施行予定です。これにより、データ提供側とデータ利用側のバランスを契約に基づき実現することが可能となっています。

著作権法の改正

 著作権法も改正されています。AI技術が急速に発展し、多くの企業がAI技術を活用したソフトウェアの開発や利用の取り組みを進めています。

 ディープラーニングなどでは学習に用いる写真などに著作権が存在するケースが考えられますが、こういった権利侵害の可能性の低い利用に対しては、権利制限規定を柔軟にできるようにしています。これは、日本版のフェアユースとも言うべき変更です。

【次ページ】データの利活用と、適切な契約実務の重要性

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