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  • 2020/12/24

路線バスが直面する「壊滅的な状況」、カギは“欧米流”への転換か

連載:MaaS時代の明日の都市

コロナ禍における移動者急減やマイカーへの移行によって、以前から厳しい状況にあった路線バスが危機的状況に陥っている。11月26日に発表されたバス・鉄軌道・旅客船事業に従事する124社を対象にした調査では、生々しい声が寄せられた。地域の公共交通を支える路線バスの活路はあるのだろうか。欧米の例や昨今のモビリティを取り巻く技術を踏まえ、解決の糸口を考える。

モビリティジャーナリスト 森口 将之

モビリティジャーナリスト 森口 将之

1962年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、出版社編集部を経て1993年にフリーランスジャーナリストとして独立。国内外の交通事情・都市事情を取材し、雑誌・テレビ、ラジオ・インターネット・講演などで発表。2011年には株式会社モビリシティを設立し、モビリティやまちづくりの問題解決のためのリサーチ、コンサルティングを担当する。著書に『パリ流環境社会への挑戦』『富山から拡がる交通革命』『これから始まる自動運転 社会はどうなる!?』『MaaS入門 まちづくりのためのスマートモビリティ戦略』など。

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岡山駅前で待機する路線バス
(写真:筆者撮影)


コロナ前から直面していた「利用者減少」と「運転士不足」

 路線バスは以前から、経営面で厳しい事業者が多かった。その背景には、利用者減少と運転士不足という2つの理由がある。

 利用者の減少は、少し前まで続いていた東京などへの一極集中によるところが大きい。多くの地方で鉄道が廃止され、バスに転換したものの、バスは鉄道に比べると遅いうえに時間に不正確であり、乗客離れが進み、それに合わせて減便という、負のスパイラルに陥る例が少なくない。


 もう1つの運転士不足は、地方だけでなく東京のような大都市でも発生しており、安定した利用者がいるのに減便や路線廃止が出ている。筆者がアドバイザーを務める長野県東御市の電気バスでも、増車に伴い運転士を探したものの、なかなか見つけることができなかったというエピソードがある。

 こうした苦しい状況の中で新型コロナウイルスの感染が拡大した。多くの人が外出を控えるようになり、テレワークで通勤需要は減った。これは鉄道も同じであるが、バスは事業者の多くが鉄道より小所帯で、経営体力に差がある。とりわけ組織の小さな地方のバス事業者にとっては大打撃である。

 地方のバス事業者の中には、路線バスでは収益が望めないことから、観光バスを収益の柱にしていたところも多かった。しかしコロナでインバウンドを含めた観光需要が激減。感染拡大初期に外国人観光客とともに乗務したバスガイドが陽性になったというニュースもあり、感染防止の観点からも観光バス需要は大幅に減った。

 GoToトラベルの恩恵を受け、観光需要は少し持ち直した地域はあるものの、施策の一時停止を受け先行きは再び不透明となった。年々増加を続けていたインバウンド需要は皆無に等しいままであり、海外の感染状況を考えれば、元に戻るにはもう少しかかるだろう。

調査結果が語る危機的状況

 では、どれだけの打撃を受けているだろうか。ここでは一般財団法人 地域公共交通総合研究所の代表理事で、岡山県を中心に交通事業を幅広く展開する両備グループ代表を務める小嶋 光信氏が、2020年11月26日に発表した調査結果を紹介する。この調査にはバス・鉄軌道・旅客船事業に従事する124社が回答した。

 それによれば2020年4~9月でのコロナでの損失額は、バス業界で1億円未満と答えたのは60社中9社で、全体の半数にあたる30社が1~5億円の損失としており、それ以上と答えた会社も21社ある。1億円未満が半数以上を占める鉄道より状況が悪いことが想像できる。

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2020年4~9月末までのコロナ禍による経営的被害(損失額)
(出典:一般社団法人 地域公共交通総合研究所)

 輸送人員については、影響なしと答えた会社はバス・鉄道ともにゼロで、前年度比10~30%の減少と答えたのはバス12%、鉄道18%と鉄道のほうが多い。逆に30%以上の輸送人員減少となったのはバス88%、鉄道82%で、わずかではあるがバスのほうが深刻な状況にあることがわかる。

 その結果、2021年3月末の経営状態は、バス事業者については19%が債務超過になると答えており、鉄道の15%や旅客船の9%を上回る。

 その一方で交通事業者は、生活や経済の維持という名目で政府や自治体から運行継続を要請されており、アンケート回答企業では運行・運航を休止した企業はなく、なんと64%が平常通りの運行・運航を続けた。

【次ページ】欧米流経営体制への転換が急務だ

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