日産がシリコンバレーにオフィスを構えた理由
日産自動車の村松寿郎氏が、米国シリコンバレーのオフィスでデータ活用の研究に従事しはじめたのは2013年のこと。実は日産が、この地にオフィスを構えたのは2011年4月と比較的最近になってからだ。2013年はじめに本格的なR&Dの拠点を立ち上げ、ビッグデータに取り組むということから、村松氏が現地に招聘されたのだという。
では、なぜシリコンバレーでビッグデータなのだろうか?「
Data Business for Connected Vehicles Japan 2014(Telematics Update主催)」に登壇した村松氏は「ビッグデータ活用を推進するプレイヤーのほとんどがシリコンバレーを本拠地とし、多くのデータサイエンティストを擁している。シリコンバレーに行けば、いろいろなソリューションを迅速に見つけられるというメリットがある。また優秀な人材を確保し、ビッグデータ活用の研究を進められる」と、その理由を説明する。
とはいえ、ビッグデータの活用は、データサイエンティストを集めればそれで済むという単純な話ではない。活用先である業務部門の連携が重要であり、それは日本にある。そこで日産は厚木にもビッグデータ拠点を構え、日米双方で情報システムの連携を図っているという。
プローブデータと、インターナル・エクスターナルデータの融合が重要に
では具体的にどのようなことに取り組んでいるのだろうか?その1つがプローブデータの活用だ。プローブとは、直訳すると探り針・探査機の意。道路交通分野では走行する一台のクルマをプローブと見立てて、このクルマに搭載されているさまざまなセンサーデータを外部に取り出すことで、サービス向上に役立てようとしている。昨今では、クルマとスマートフォンが連携することも多く、スマートフォンで収集できるGPS情報やセンサーデータも含まれるようになってきた。
具体的なプローブデータとしては、ロケーション(緯度・経度・方向・目的地)、速度(加減速)、アクセサリの使い方、アクセス・ブレーキの踏み方、ABS(アンチロックブレーキシステム)の稼動タイミング、ワーニング(警報)などがある。これらを分類していくと、車のステイタスや、ドライバーのビヘイビア(振る舞い)が分かる。このようなデータがリアルタイム、あるいは統計的な手法で集められるため、自動車メーカーとしては可能な限り活用したいわけだ。
村松氏は、「今後こうしたプローブデータのみならず、それ以外のデータをインテグレートすることで、もっといろいろなことが分かるだろう」と指摘する。ここでいうデータとは、ディーラーからの情報や、インターナルデータ・エクスターナルデータのことだ。インターナルデータとは、実際に工場や設計側から上がってくる情報。エクスターナルデータとは、最近流行のSNSなどから発せられるつぶやきや評判などだ。
最近では何か問題があると、ユーザーはディーラーに問い合わせる前に、まずインターネットに答えを求める傾向がある。他人も同じような悩みがあり、こんな方法で解決したという答が手っ取り早く見つかることが多いからだ。「我々が知らないうちに、世の中で起こったことが解決してしまうことさえある。そういう情報も拾っていかなければならない」(村松氏)。
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