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  • 2014/10/02 掲載

なぜ日本でオフショア開発が浸透しないのか?ラボ型開発と品質共同担保の重要性

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システム開発市場全体の規模が違うとはいえ、日本のオフショア開発市場規模は、アメリカのそれと比較して1パーセント程度にとどまっているという。顧客と開発者の間に発生しがちな認識の齟齬を減らし、生産性の高い開発をオフショアで実現するにはどうするべきか。ベトナムでオフショア開発サービスを提供しているエボラブルアジア CEO 吉村 英毅氏が強調するのは、顧客と開発者による品質共同担保の重要性である。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

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オフショア開発成功のポイントとは


ベトナムでオフショア開発事業も展開するエボラブルアジア

 ベトナムでのオフショア開発サービスを提供しているエボラブルアジア。同社はもともと、旅キャピタル(現エボラブル アジア)といい、航空券やホテル予約サイトを運営するなど、オンライン旅行事業を中軸事業としていた企業だ。同社がなぜ、オフショア開発事業をスタートしたのか。同社 CEO 吉村 英毅氏はオフショア開発事業展開の理由について語る。

「きっかけは、変化の激しい旅行業界で勝ち抜くため、自社システムのオフショア開発拠点をベトナムのホーチミンに設けたことです。実際にベトナムでオフショア開発を行ったところ、現地エンジニアの高い技術力に驚かされました」(吉村氏)

 そこで吉村氏は「自社の開発拠点のみならず、他社からの受託案件にも対応できる」と考え、2012年6月にオフショア開発事業へ進出したという。

日米間の比較でみる、オフショア開発の現状

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 吉村氏は、日本とアメリカでのオフショア市場規模の違いについて次のように言及した。

「アメリカのシステム開発市場はおよそ100兆円。オフショア開発が占めている割合はその10パーセントとされています。一方日本のシステム開発市場は、約10兆円のうちオフショア市場が占める割合はわずか1パーセント程度です」(吉村氏)

 システム開発市場全体の規模自体が違うとはいえ、なぜ日本はアメリカに比べてオフショア開発が行われていないのか。この理由について同氏は「理由は単純で、アメリカのオフショア開発がうまくいっており、日本は失敗しているからです。成功例が生まれてくれば、徐々に市場が大きくなるでしょう」と語る。

オフショア開発、契約における2つの形態

 そもそも、オフショア開発とは何なのか。オフショア開発は、ソフトウェア開発やWebシステム開発などを、海外の開発会社や海外子会社にアウトソースすることで、コストを削減する開発手法だ。

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オフショア開発における2つの契約形態のちがい

 開発における契約形態は、「ラボ契約」と「受託契約」の2種類に大別される。

 「ラボ契約」は、開発人員を確保して顧客ごとに完全専属チームを提供し、100パーセントの稼働率で開発をすすめていくという契約だ。長期的かつ継続的に開発人員を囲えるので、開発の生産性が上がるほか、緊急のプロジェクトが発生した場合もすぐに対応できる。

 一方の受託契約は、契約時に依頼されたプロジェクト単位での契約だ。この場合、契約当初の想定より労力がかかったとしても成果物の納品まで対応する。依頼内容が曖昧だった場合、想定していたシステムと違うものができてしまう可能性や、緊急に進めたいプロジェクトが発生してもリソースが調達できない可能性がある。

「システム開発の現場では、あるプロジェクトが終わったらすべての開発が終わることはなく、次々と改善の要望が挙がってくるのが一般的です。日本企業の多くは、引き続き新プロジェクトを任せたいという恒常的なリソース確保の要望があるため、ラボ型開発の形態が向いているわけです」

 以上の理由から、エボラブルアジアのサービスは「ラボ契約」に特化している。実際に、同社がラボ型オフショアサービスを提供したクライアントのうち92%が契約を継続。さらにそのうち78%のクライアントが人員を増員しているということから、企業にとって継続的なシステム開発へのニーズの高さがうかがえる。

 続いて吉村氏は、オフショア開発成功のカギとなる「開発側と顧客が開発品質を高めあうこと」の重要性について語った。

【次ページ】プロダクトオーナー不在のオフショア開発に未来はあるか

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