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  • 2015/02/26

ソフトバンクの現役プレゼン担当者が明かす、プレゼンの極意

連載:ソフトバンク人材開発の秘密 vol.5

ソフトバンクは、現役の社員自身が講師を務めるという、一風変わったグループ向け研修プログラム「ソフトバンクユニバーシティ認定講師(ICI)制度」を導入している。その中で今回は、同社の決算発表やイベントにおけるプレゼンテーション(以下、プレゼン)の資料作りを担当し、プレゼンのスキルアップ講座で講師を務めるソフトバンク 社長室 石黒 真氏に、プレゼン能力向上の意義や上達のポイントなどをうかがった。
 ※ Internally Certified Instructor

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ソフトバンク 社長室 戦略企画グループ マネージャー 石黒 真氏

なぜビジネスにおいてプレゼン能力が大切なのか?

──まず、石黒さんの所属部署と業務内容について教えてください。

 石黒 真氏(以下、石黒氏)■所属はソフトバンクの社長室で、弊社社長の孫 正義からタスクを受ける直属の部署です。社長室にはいろいろな機能がありますが、私は、ソフトバンクグループ全体の長期的な戦略を練ったり、発生したばかりの最重要案件を計画に落としていくチームに所属しています。また、新規事業提案で通過した案件を推進・運営する仕事もしています。

──そうした通常業務に加え、グループ社員向けの研修機関「ソフトバンクユニバーシティ」(詳細はvol.4を参照)で社員にプレゼンを教えておられるのですね。そもそも、プレゼンが得意になられた経緯について教えてください。

 石黒氏■もともと私はネットワーク技術者だったので、実を言うとプレゼンの経験はそれほど多くありませんでした。ですが入社3年目に社長室へ異動し、そこで初めて経営陣のプレゼン資料を作る仕事を始め、やがて決算説明会や大きなイベントなどのプレゼンも担当するようになりました。多くの人々にプレゼンを見せるという意識を持ったことが、得意になったきっかけだと思います。

 エンジニアから経営戦略関連へ異動した際、業務内容がガラっと変わったため、いかに人を納得させるか、泥臭い折衝などの技量も必要になりました。社長の孫のタスクを部門幹部に対して上から落としていく際には、当時平社員だった私の立場からどうアプローチしていけばよいのか、悩むこともありましたね。

──プレゼンの役割については、どのようにお考えですか?

 石黒氏■人がコミュニケーションするときは、広い意味で何かしらのプレゼンをして、形としてメッセージを伝えているわけです。そういう意味では、プレゼン力のない企業は、社内でも社外でもコミュニケーションが下手な企業と言えるかもしれません。

 孫は世界で最も注目されている経営者の一人だと思います。そこに洗練されたプレゼンを用意することで、メッセージをさらに強く・正確に伝えられることが大きな貢献になっていると考えています。これにより、世の中に対してソフトバンクの理解がより深まったり、ビジョンに賛同してくれる人々が増えると思います。孫の拡声器のようなものですね。

 また、社内に目を向けても、多くのビジネスマンがiPhone/iPadなどのスマートデバイスを仕事で使うようになり、働き方が変わってきたと思います。小さな画面でプレゼン資料を見る機会が増え、文字が多く込み入った資料では見づらくなりました。昔のようにPCでじっくり資料を見る時代ではなく、それを意識した資料作りやノウハウが必要です。

──プレゼン能力の差で、企業にはどのような影響が出るとお考えですか?

 石黒氏■プレゼンには、最も伝えたいエッセンスが必ずあります。それを短い時間でわかりやすく届けるテクニックが数%でも向上したら、多くの人が働いている企業においては、パフォーマンスの向上に大きくつながります。

 プレゼン力を鍛えることは、体の根幹にある筋肉を鍛えることと同じくらい重要だと考えています。でも、普段歩いているときに「筋肉が足りない」と思うことは少ないでしょう。プレゼンも同じで、誰でもある程度はできるため、普通の筋肉だけで満足しがちです。

 とはいえ、少しでも運動を始めると「筋肉が足りないかも」と気になってきますよね。そういう意識の変化を持たせられると、社員全員がスポーツマンになり、全体の能力が自然に向上できると思っています。いつも通りに正しくグラフを作ることが普通の筋肉だとすれば、効果的な見せ方やメッセージを考えて試行錯誤することが、意識して筋肉を向上させるということなのです。

プレゼン能力を向上させるソフトバンクの社内研修の極意

──プレゼン研修の講師として社内でご活躍されていらっしゃいますが、どのような人が受講されていますか?

 石黒氏■年齢層は幅広いですね。20代から30代の社員が中心ですが、中には管理職をしている40代の方もいらっしゃいます。仕事はまちまちで、営業、商品企画、エンジニア、財務、アシスタントなど、全社からいろいろな職種の人が来られます。グループ全体に告知している研修なので、グループ企業からの受講者も多いですね。

 以前はヤフーの経営幹部プレゼン担当者向けに出張研修をしたこともありました。ソフトバンクグループ内でメッセージ性の強い方と言えば、孫に次いでヤフーの宮坂 学社長だと思っています。ヤフーのプレゼン力を上げることは重要だと思い、自ら提案して研修を開催しました。

──受講者はプレゼンに対して、具体的にどのような課題を感じているのでしょうか?

 石黒氏■一番多いのは、情報過多になってしまうスライドをどうしたらよいか? ということです。知っていることを書き出そうとするので、人に伝えるよりも自分のメモ書きになってしまいます。

 今は「ワンスライド・ワンメッセージ」というキーワードを、皆さんが覚え始めていますので、少しレベルアップした人が多くなってきました。しかし逆に、それだけだと内容が薄いプレゼンになってしまうこともあります。他にも、絵心がない、図表をうまく描けないなど、いろいろなお悩みを抱えています。

──そうした課題解決のために、実際にどのような研修を行われていますか?

 石黒氏■まず研修チームで作ったビデオを受講前に見てもらうことにしています。全員が使える共通したソフトバンク流ノウハウが数多く盛り込まれた内容になっています。また、この映像は全社公開されており、研修を受講していない人へのレベルアップにも貢献できるのではないかという狙いもあります。

 ビデオを見た上で、講義形式のクラスルーム研修になります。研修は合計2回。まず1回目は、ビデオで学習した内容を実践してみるワークショップです。頭で学ぶことと、実際に手を動かすことは異なりますから、全員でディカッションしながら進めます。ここで使う資料は、参加者のうちの一人が事前に持ち込んだものを使います。資料を作成した人の気持ちを知り、「ならば、こうしたほうがよいのでは?」と、議論の深まりから理解が得られます。こちらで教材を提供すると、正解を当てにいこうとしてしまうため、どうしても凝り固まった考え方から抜けられません。その場限りの資料を使うことに意味があります。

 1回目の研修の後に、自分が今取り掛かっているプレゼン資料や、昔作った思い入れのある資料を使って、自分で手直しする宿題を出しています。2回目の研修では、手を入れる前と後を比較してプレゼンし、全員から突っ込みを入れてもらいます。そうすると、まさに現在作っている資料がブラッシュアップされます。自分の限界だと思っていた資料をさらに改善できるのです。このように、あくまで参加者自身の目線や課題に合ったものを使うことにこだわっています。

──研修の効果については、どのように感じていますか? また研修を受けた社員の声で、印象に残っているものはありますか?

 石黒氏■研修後にソフトバンクイノベンチャー(新規事業提案制度)にチャレンジして初めて決勝まで駒を進めた方がいらっしゃいました。もともと実力があったのですが、前回の出場時よりも気持ちよくプレゼンできた、と喜んでいただきました。また前述の通り、2回目の研修は実際に業務で使う資料を直すため、「客先での提案がうまくいった」などの即効性のある結果が出るようです。

 ただし私自身の狙いは、その先です。部門ごとに影響力のある人たちにプレゼン方法を教えることで、その周りに波及してほしい。本当に効果があったかどうかは、ソフトバンクグループ全体のプレゼン能力やコミュニケーションスキルを細かく調べないと分かりません。その効果測定の方法を体系立てることが我々の次の課題ですね。

【次ページ】 社外用と社内用のプレゼン資料は分けて考えるべき

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