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  • 2016/09/12 掲載

ソフトバンク社員が指南する「災害対策の知恵」、基本は「自助」「共助」「公助」

連載:ソフトバンク人材開発の秘密 vol.12

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ソフトバンクグループの社員発信型の学びの場「知恵マルシェ」。これは、一般の社員が「主催者」として自分の知識やスキル、自身がソフトバンクで取り組んでいる施策を他の社員に共有する業務時間外に行われるものであり、これまでも多種多様なテーマで業務に「活きる」内容で開催された。こうした機会に少しでもソフトバンクが取り組んでいることや知識を広めたいと、3回にわたり開かれたのが「災害対策に対する取り組み」をテーマにした知恵マルシェだ。主催したソフトバンク ネットワーク運用本部 米原 裕雄氏に話を聞いた。
(聞き手/構成:編集部 佐藤友理)


photo
ソフトバンク
技術統括 ネットワーク運用本部 運用企画統括部 災害対策部
米原 裕雄氏


「災害」って何ですか?

──まずは、ご自身の所属や業務について教えてください。

米原氏:ネットワーク運用本部 運用企画統括部 災害対策部というところで、技術面での災害対策を担当しています。ソフトバンクが構築したモバイル・固定通信サービスの災害対策全般について、情報収集、導入機材の検討から、実際の災害にあたって早期復旧へ向けた社内・社外の調整・交渉事の対応などをしています。1年を通して、台風、豪雨、局地的な大雪など、さまざまな災害に対し、ソフトバンクとして何らかのアクションを起こさなければならない。そこで、現場で活躍する全国の技術系社員を我々は後方で支援しています。

──災害対策部にいらっしゃるということですが、そもそも、何が災害にあたるのでしょうか? 一般的な障害とは分けられるものなのですか?

米原氏:答えるのにいつも困るのですが、本当にいろいろなものがあります。大雪が災害か、台風が災害か、地震、洪水は、という話になります。日本の法律でいうと、天候云々ではなく、天候・天変地異によって起きた被害の規模によって災害かどうか決まるという方が適切です。例えば、小さい台風であっても被害がものすごく大きかったら、災害になるかもしれません。震度7という地震でも、海の中で発生して何も被害がないのであれば、災害ではないのかもしれません。

 また、たとえば通信のネットワークを支える電力が途絶えたり、光ケーブルが断線したりすると、携帯電話の基地局が落ちる可能性があります。そして、それらが航空機の墜落や大型船舶が海底ケーブルを引っ掛けたことなどの人為的な事故によって引き起こされたとします。その結果、通信のネットワークに影響が出たとします。これは、普通にいえば人災ですが、影響が広範囲にわたると災害として対応せざるを得ません。

 結局のところ、何が起因となって起こるかではなく、ある事柄によって起きた影響規模が大きくなったり、それが一般の方に与える被害が甚大になったりすると「災害」として対応するということです。一方、障害というのは偶発的な装置の故障等を指します。ただ、何らかの外的要因によって広範囲に影響が出たものは災害ととらえることもできるのかもしれませんが。

──災害対策部の具体的な業務はどういったものなのでしょうか?

米原氏:障害対応と違い、災害の場合は規模が大きくなってくると特定の部署だけでは対応しきれません。となると、広範囲に社内、社外に協力を求めなければならなくなります。そういうところで、我々が支援活動の旗振りをします。 災害が起きた際に、ソフトバンクの顔としていろいろな関係機関、関係企業に対して窓口的な業務をしつつ、災害対策部としてさまざまな情報を集めて、現場の活動を支援しています。

 ただ、我々が忙しいときはあまりいいときじゃない。暇だなというくらいのほうがいいのかなと思います。基本的に、災害が起きていないときは、情報収集し、起こりうる災害の対策を練り、機材導入の検討などを行っています。

──ご自身は災害対策の仕事をして何年くらいになるのでしょうか?

米原氏:2年半になります。3.11のときは固定系の運用部門で復旧の早期化に取り組んでおり、数年経って災害対策を取りまとめるようになりました。災害対策部自体は3.11の後に発足し、前身となる組織を含めるといま4年目くらいです。

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3.11は「インフラとしてのモバイル」の認識を浮き彫りにした

 3.11以降、モバイルネットワークに対する世の中の要求がものすごく高くなってきています。たとえば、いろいろな自治体の方、官公庁の方とお話をするのですが、災害対応のときにどうやって連絡を取るのかと聞くと、「携帯電話で取ります」となります。それくらい常に電波が届くことが日本では当たり前ということです。

 また、携帯電話のネットワークを支えるために電力が必須です。電力が枯渇すると携帯電話の基地局が使えなくなるので、我々としては、「電力を先に直してください」と電力会社の方に言います。しかし、電力会社としては「自分たちが電力を直しに行くのにも、現場で携帯電話が使えないと連絡が取れない」となってしまう。これまでは、インフラといえば電力、ガス、水道、鉄道だったのですが、モバイルネットワークがそのすべてを支える存在になったということです。

 モバイルネットワークが災害で落ちたのであれば、全力で復旧に務める。これは、電波を届けることが我々の会社に求められている使命だからです。我々はライフライン事業者として、いち早く直すためのあらゆる手段を考えるしかないわけです。

──企業としては利益を追求することになりますが、災害対策と利益追求が相反することはないのでしょうか?

米原氏:基本的に通信基地局は人がいるところにしか立っていません。そのため、利益の追求という観点でも問題はないと思います。もともとサービスエリアである場合に復旧するのはマストですし、エリア外であっても、避難所など、そこに人が集まって電波が必要とされるのであれば、我々はそこに電波を届けにいく。インフラとはそういうものですから。

なぜ、知恵マルシェで「災害対策」なのか?

──今回、どうして「災害対策」をテーマに知恵マルシェを開催することになったのですか?

米原氏:ソフトバンクが取り組んでいる災害対策をあたりまえの知識として社員に広く知ってほしいし、通常「研修」のテーマにはなりえないコンテンツも知恵マルシェなら広い学びの場として活用できるからです。一番伝えたかったのは、「災害対策は誰かがやればいいというわけではなく、みんなが考えて、みんなが常に災害に対して備えるというのが大切だ」ということです。

 3.11直後、ソフトバンクはネットワークとしてみると弱い状況で、その中での復旧対応を行うのは大変でした。そこから5年経って、ソフトバンクとしてもさまざまな災害対策に取り組んできました。そうして、いろいろな自治体、企業と災害対策について意見交換、情報交換する中で、いままで我々がやってきたこと、いまの世の中の災害対策に対する考え方を、広く認識していただく場を設けたい、裾野を広げて理解を得たいと考えたのです。

 かといって、業務の紹介をするだけではどうしてもハード的、技術的なところだけになってしまいます。しかし、実際、災害対策はそれだけではありません。3.11のとき、国が強靭な堤防を作ったり、避難所を作ったりしましたが、自然災害に対してはまったく機能しなかったわけです。そういうハードの部分だけが災害対策ではないのだという、基本的な災害対策の考え方を知恵マルシェでは紹介しました。

【次ページ】災害対策におけるソフトバンクらしさ
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