基幹産業では何よりもミッションクリティカル性が求められる
SoftBank World 2015に登壇したウィリアム氏は、この10年を「インダストリアル・インターネット」による創造的破壊の時代であるとし、コンシューマー領域のインターネットよりも大きなインパクトを持っていると話した。
「IoTにより、センサーが取り付けられたさまざまな産業機器から得られた大量のデータの収集、解析が簡単に、低コストで可能になる時代が到来する。これにより、現場の作業員への情報提供など、顧客に新たな価値を提供することが可能になる」
GEの提唱する「インダストリアル・インターネット」は、先進的な産業機器と予測分析ソフトウェアが意思決定者をサポートするという考え方だ。この結果、エネルギー、ヘルスケア、製造業、公共、運輸などの分野において、医療技術の向上、鉄道や航空機における輸送プロセスの変革、発送電における効率的なシステムの登場などの生産性向上を実現する。
「コンシューマー分野のインターネットとの違いは、ミッションクリティカルなIT能力だ。たとえば、発電所でネットワークダウンが起きたら、利用者はストレスを感じるだけでは済まない。基幹産業ではミッションクリティカル性が何よりも求められる」
その点で、“成熟された”コンシューマー・インターネット市場とは違い、インダストリアル・インターネット分野の技術的成長は緒に就いたばかりであり、「発電所や油田、船舶といったものがソフトウェアによって連携する時代が始まったばかり」といえる。
「航空産業では、1回の飛行で航空機から100テラバイトのデータが生成するといわれる。1日に何千、何万フライトと繰り返される飛行から生み出されるすべてのデータを分析するのは、今のところはまだ難しいといわざるを得ない」
インダストリアル・インターネットを構成する基本要素は、高度なセンサーやコントロール、アプリケーションで接続された産業機器、施設、車両といった「インテリジェント機器」、ビッグデータを可視化する予測アルゴリズムや最先端のソフトウェアなどによる「高度なデータ分析」、より高度な機器の設計、操作、保守を担う「人」がある。
この中でインダストリアル・インターネット実現のために重要なカギを握るのが「アプリケーション」だ。コンシューマー領域では、目的に応じてさまざまなデバイスを使い分けるが、インダストリアル領域では、インフラ効率化のためのアプリの存在が欠かせない。
「機器だけでなく、何かの機器が破損しそうなときにそれを知らせる、綺麗な水を提供するために何が必要か、より多くの患者を処置するために何が必要かを知らせるといった、遠隔モニタリング、メンテナンス最適化、状態、安全性に関するレポートなどの分野で、重要な成果をもたらすためのアプリの存在が欠かせない」
「Predix」がインダストリアル・インターネットを加速させる
ウィリアム氏は、インダストリアル領域でのイノベーションを考えたとき、GEは以下の3つの領域を重要と考えていると述べた。
「1つ目は『機器の最適化』だ。これは、ダウンタイムを最小化し、壊れない機械のため最適な性能を実現したい。2つ目は、『オペレーション』で、GE製機器にかかわらずシステムと人の効率を向上することが重要だ。そして3つ目は、『プロセス』で、素材、生産サイクルの最適化により、環境に優しい産業へと進化する必要がある」
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