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- 2016/03/30 掲載
CEO・社長の世界ランキング:なぜブラック企業は「世界でも通用しない」のか
企業の評価は経営者で決まる
しかし、企業の目的は営利の追求であるから、いくら売上高が大きくても、赤字会社では仕方がない。そこで、利益高や利益率(売上高に対していくらの利益を出しているかという収益性)が問われることもよくある。
上場企業の場合は、時価総額(発行株×株価)で評価されることもある。もともとM&A(企業合併・買収)の値決め(デューデリジェンス)などに用いられていたのだが、業種に関係なく企業の市場価値が手っ取り早くわかる指標として重宝されている。このように、企業の実力の尺度はさまざまなのである。
投資家や就活学生の人気企業ランキングでは、現在の売上高や利益率だけでなく、将来性(売上高伸び率など)、財務の健全性(バランスシートなど)、国際競争力、社風といった複数の基準から、企業を総合評価するケースが多い。
彼らは企業の選択に、慎重にならざるを得ないからだ。そうした評価基準の一つとして、必ずと言っていいほど取り入れられているのが、“経営者の資質”である。経営者の手腕によって、企業の業績や市場価値が大きく左右されることは、今さら言うまでもないだろう。
米国ハーバード・ビジネス・スクールの機関誌であり、世界最古の経営情報誌と言われる『ハーバード・ビジネス・レビュー』(HBR)は先ごろ、世界30カ国の大企業896社のCEO907人(一部企業に共同経営者がいた)を対象に調査した結果、「世界のCEOベスト100」を選出した。すなわち、経営者の資質に基づいた企業のグローバルランキングである。
同ランキングの調査対象は、2014年末時点で「S&Pグローバル1200指数」に入っている企業。同指数はS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが公表しており、世界の株式時価総額の約70%をカバーしているという。それらの企業のCEOのうち、15年4月末時点で就任から2年以上経過しており、有罪判決を受けたことや逮捕歴がない人は907人だった。
CEO907人の評価基準は、就任初日から15年4月末までの企業の財務指標と「ESG評価」。財務指標は、国別調整済みTSR(株主総利回り)、業種別調整済みTSR、時価総額の変化の三つ。ESG評価とは、環境(Environment)、社会(Society)、ガバナンス(Governance)に対するパフォーマンスのことだ。財務指標を80%、ESG評価を20%の割合で算定し、総合評価した。
デンマークの製薬会社のCEOが世界第1位
以下が世界のCEOベスト100の上位15人だが、名だたるグローバル企業だけでなく、世界的にはあまり知られていないような企業のCEOも、多数ランクインしている。第1位に輝いたのは、ノボノルディスクのラース・レビアン・ソレンセン氏(2000年就任)。ノボノルディスクと言っても、知らないかもしれないが、デンマークを代表する医薬品メーカー(1923年創業)であり、世界で初めてインスリンを開発した歴史を持つ。潜在市場が巨大な糖尿病領域に注力し、急成長を遂げている(日本法人もある)。
ただし、本連載の医薬品業界の世界ランキングでは、17位に過ぎない。それでも、ソレンセン氏が評価されたのは、同社が社会問題や環境問題に熱心に取り組んできたからだ。
発展途上国でのインスリンの大幅値引き、ロビー活動の透明化、動物実験に対する責任の明確化といった取り組みによって、ESG評価でのポイントが跳ね上がり、首位獲得に寄与した。
第2位には、シスコシステムズのジョン・チェンバース氏(95年就任、2015年にCEOを退任)が選ばれた。同社は米国の通信機器メーカー(84年設立)で、インターネット技術のリーダー的存在。セキュリティシステムに力を入れている。日本法人も、外資系のIT企業としてよく知られている。
第3位に入ったのはインディテックス(スペイン)のパブロ・イスラ氏(05年就任)だ。同社は85年に設立され、世界80カ国以上でファッションショップを展開するSPA(製造小売業)。同社のブランド「ZARA(ザラ)」は、すでに日本でもお馴染みだろう。ちなみに、本連載では世界第2位となっている。
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